2008年10月12日00時06分掲載
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社会
三浦元社長が自殺 移送直後に首つり 共謀罪の怖さ、マザマザと
「疑惑の銃弾事件」として有名になった1981年のロサンゼルス銃撃事件で、今年2月に米自治領サイパンで逮捕、拘置され、ロサンゼルスに移送されたばかりだった三浦和義・元会社社長(61)が10日午後10時(日本時間11日午後2時)ごろ自殺、日本中に驚きの声が流れた。三浦元社長は事件に関連して共謀罪で裁かれる可能性が高まっていたことから、日本における共謀罪制定に反対してきた日本の市民団体からは、その怖さを指摘する声が上がっている。(ベリタ編集部大野和興)
三浦元社長は収容先のロス市警本部の留置場独房でTシャツを使って首つりを図り、搬送先の病院で死亡が確認された。
この事件は、日本で無罪が確定した元社長が、米当局に逮捕され、発生から27年を経て米国であらためて訴追の手続きが進むという異例の展開をたどったが、彼の死亡で真相究明は極めて難しくなった。三浦元社長は一貫して無罪を主張、14日に罪状認否のためロス郡地裁に出廷する予定だった。
一方ロサンゼルス郡地裁は殺人ついては日本で無罪が確定していることから「一事不再理」で殺人容疑の逮捕状は無効としながら、殺人の共謀罪での訴追続行を認めた。
三浦事件と共謀罪について、日本の市民団体「盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会」は去る9月30日、衆議院議員第二議員会館で開いた「共謀罪に反対する市民と議員の院内集会」で討議、ロス郡地裁の決定に批判が出された。
同市民連絡会発行のメルマガ「共謀罪を廃案に!」38号(10月11日発行)は、この集会での問題提起を次のように伝えている。
ロス郡地裁の決定は三浦さんの殺人容疑については日本の無罪判決が適用されたが、殺人の共謀については、日本に共謀罪がないことを理由に米国で起訴、処罰できるというものであった。これに対して新倉修さん(青山学院大学教員)は、次の2点を指摘、疑問を呈した。
第1に、日本には共謀罪は無いが共謀共同正犯という形で「殺人の共謀」も犯罪として問われ、実際に日本の捜査も「殺人の共謀」に関して実施され、その上で最高裁の無罪判決が出されており、実質的に「殺人の共謀」に関する判断もされていると理解すべきであること。第2に、日本には(殺人に関する)共謀罪に相当する法律が無いという結論を日本の刑法の非専門家による証言を根拠にしていること。
また、弁護士の山下幸夫さんも米国の共謀罪は日本以上の無期懲役を含む重罪となり、今回の「三浦事件」はロス市警を中心とした米国当局の復讐とそれに協力する日本の法務省の連携が見られるとし、共謀罪の怖さをあらためて市民に広く知らしめて、日本では二度と法案が提出されることができない状況を作るべきと訴えた。
そのためには、山下さんは共謀罪の制定根拠になっている組織犯罪防止条約自体に反対し、共謀罪の禁止だけでなく、条約の批准を認めないという国会決議が必要という見解を示した。この条約については新倉さんも批准に反対であり、現在では存在意義の無いものとしている。
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