2008年10月22日13時22分掲載
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二極化社会を問う
人間らしいくらしを! 反貧困運動のうねりを示した10・19反貧困世直しイッキ
10月19日、東京・新宿区の明治公園で「反貧困世直しイッキ!大集会」が開かれた。この集会は、広がる一方の貧困に抗して、人びとが垣根を超えてつながり、世直しに立ち上がろうとおこなわれたもので、非正規労働者が結集するユニオンの運動、野宿者運動、多重債務問題や住宅困窮者、シングルマザーの運動など現代の貧困の只中にいる人や運動者2000人が集まり、人間として尊厳をもって生きることを求めて声を上げた。この集会はこれまで消費者運動、労働運動、社会保障運動の枠を超えた連帯を目指し全国を巡ってきた「反貧困キャラバン」のゴール到着を告げるものでもあった。(村上力)
主催の「反貧困ネットワーク」は、人間らしい生活と労働の保障を実現するため、市民運動、労働運動、法律家、学者など個人が集うネットワークである。「反貧困キャラバン」はこの反貧困ネットを全国に広げるため、西ルートと東ルートに分かれ、7月から全国各地をリレー行進し、「人間らしい生活と労働の補償を求めて、つながろう!」というスローガンをもとに、449団体の協力、33回の集会、参加者数は6077名、役所等に要請を241件行ってきた。
その結果、平成の世直し運動たる「反貧困」の旗印は、確実に広がりつつあることが、集会で報告された。すでに長野、岐阜、富山、滋賀では現実に立ち上がり、活動を開始している。その他13県では立ち上げ準備中、又は予定であるという。開式では、これらの地域の代表らが、各地域で抱える複雑な事情などを報告し、今後の活動への意気込みを述べていた。いずれの地域でも、保障を無き労働、不当解雇、生活保護切り詰めが行われているという。
集会では、開式の後、様々な貧困の問題を掲げる12の分科会、住まい、労働、食の危機、死刑廃止、多重債務・消費者問題、コトバの貧困、社会保障、後期高齢者医療制度、女性と貧困、子供、フェアトレード、語り合いの場、が催された。そのなかから労働と食を取り上げた分科会の模様を報告する。
▼現代における「蟹工船」的奴隷労働、労働者使い捨て
労働分科会では、テーマを「使い捨て、過労死か?−これって蟹工船(カニコー)じゃん!?今こそ、つながろう」とし、現代における「蟹工船」的奴隷労働、労働者使い捨ての具体的な事例が話された。
全国一般東京南部のキャサリン・キャンベルさんは、立場の弱い外国人英会話講師の事例をあげた。一般的に豊かなイメージのある外国人英会話講師だが、実際は非常に立場が弱く不安定であるという。それには3つの理由があり、まず有期雇用のため、正当な理由なく更新がされない危険があり、非常に不安定であるということ、出来高制のため、収入が保障されないこと、有期雇用のため立場が弱く、経営者に文句をいえないので改善が難しいことである。
外国人労働者の問題は、NOVAの倒産の際にマスコミにも報道されているが、他にも中国人研修生の奴隷労働、強制送還や、最近では介護の現場で外国人労働者を使おうという動きがある。無論、前述した問題は外国人労働者に限った事ではない。しかし人の移動がグローバル化する中で、日本社会に存在する「蟹工」状況を温存するためにも、低賃金・過重労働のあえぐ外国人出稼ぎ労働者の存在は、今や欠かせないものとなっていることがうかがわれた。
この分科会では、計6名の労働問題に取り組む人からの発言があった。様々な立場からの声があり、たとえば野宿者の労働問題では労働運動でだけではなく、住まいの問題とのつながりが必要であるととが指摘された。
女性と労働の問題では、女性労働の差別的扱いが今も続いているkとが問題として指摘された。たとえば派遣労働の適用業務の殆どが一般的に「女性職」といわれるファイリングや受付や秘書など二拡大されてきた。これは女性労働者の正社員への道を閉ざし、女性労働を派遣に固定化させる役割をはたすことにつながる。
これらの声が示すように、労働問題も幅広く単純なものではない。貧困の本当の解決には、連帯し、だれも見逃さないことが必要だ。
▼「食わせろ!」−消費者と生産者の分断に生じる矛盾
食の危機分科会では、農民、マグロ船の漁業労働者、都市における消費者としての労働者が集い、「食」に見る貧困について話し合いが行われた。そこで問題にされたのは、生産者と消費者が流通の段階において分断されることで矛盾が生じているということである。
この分科会のスピーカー、コンビニチェーン「SHOP99」元店長清水文美さんは、コンビニ、スーパー等の本社は生産者から原価を1円でも原価を安く仕入れることによって、多額の利益があがるため、コンビニ・スーパー等が消費の中心に君臨するかぎり、生産者や食の流通や加工、販売、接客の現場で働く労働者は、より過酷な収奪を強いられると述べた。参加者からは、「コンビニ弁当って、安くてうまいんですよね。私の地元でも商店街はどんどん寂れていくけど、毎月のように新しいコンビニが増えてる。申し訳ないけど、便利なんで結構使っちゃいます」という率直な意見も出た。
たしかに、コンビニは安くてうまい商品を消費者に提供している。しかしその過程で生産者を収奪したり、コンビニ労働者を酷使することによって価格を安くしているのである。都市における消費者の貧困が生産者、労働者をより追い詰めるという構図だ。
会場ではこれらの問題に対する試みが論じられたが、解決は難しいようだ。コンビニは多くの機能を備え便利だ、理想のビジネスモデルだともてはやされ、安い商品を提供することで顧客として貧しい者たちを獲得している。しかし生産者側で安定した収入を得るために無農薬野菜の生産を始めたとしても、都市における貧困がある以上ただの金持ち向けのビジネスにしかならないということが指摘された。さらに「毒入りギョーザ事件」に見るように、海外でより安い原料を買い叩く動きがあることも報告された。
▼集会宣言、そしてパレードへ
報告会の後、自立生活支援センター「もやい」代表、湯浅誠氏から、集会宣言文が読み上げられた。
「反貧困世直しイッキ大集会−垣根を越えてつながろう」は、今後も「貧困」をどうやって無くすのか、その一点に絞って立場、団体、国籍、性別、すべてを越えてつながっていくことを再確認し、宮下公園までのパレードに出発した。
集会宣言全文はこちらのサイトに記載されている。
http://d.hatena.ne.jp/hinky/20081019/p1
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