2009年01月08日10時21分掲載  無料記事
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イスラエル/パレスチナ

世界の世論を結集してシオニストと米国に抗議の声を イスラエルのガザ攻撃の多面的背景

  ガザからの悲痛な叫びがベリタの紙面から聞こえて来ます。この問題の種々な面を少し考えてみましょう。(バンクーバー・落合栄一郎) 
 
 なぜ今、イスラエルは攻勢に出ているのか。パレスチナ側のハマスという原理主義勢力の小規模なロケット弾攻撃への報復、イスラエルはどの国とも同様に自衛する権利を有する、というのが公式の正当化である。 
 
 (1)先ず、問題の根本はさておき、なぜ今なのだろうか。おそらく、イスラエル側では、世界中の経済恐慌という混乱で、パレスチナ問題への関心が薄れているだろうと考えているのではないだろうか。ブッシュ政権というイスラエルにとっては大変好都合な政権の終末を迎え、ブッシュ政権が存続しているうちにパレスチナの反対勢力を出来るだけ破壊しておきたいとも考えているだろう。事実、国連の安全保障理事会は、アメリカの反対で、イスラエルに停戦を迫る決議を出せない。 
 オバマ次期大統領もイスラエル擁護を表明しているが、実際にイスラエルをどう扱うかはまだ不明。もう一つは、イスラエルは数ヶ月後に総選挙を控え、国民の支持を得て政権を保持、獲得しようという政治的意図もあるようである。 
 
 (2)歴史的に問題の根を探ってみる。古代ユダヤは一神エホバを信仰する国家であったが、ローマ時代に国家は崩壊し、ユダヤの人々は世界中(地中海世界、ヨーロッパ、ロシア)へ移住を強いられた。そしてその後2000年の長きにわたって、その移住地で生きて来た。2000年の昔、ユダヤ教の中から、変革者として現れたイエス(とされる)は、当時の統治者ローマに捕まり死刑にされた。この時、ユダヤ人民はイエスを弾劾し、ローマ政権に引き渡した(とされる)。 
 イエスの教えは後、キリスト教として西欧諸国に広まり、西欧人を虜にした。そして、イエスに対するあの時点でのユダヤ人の裏切りが許せないなど(その他にもいろいろな理由があるが)の理由で、西欧人(=キリスト教信者)はユダヤ人を差別するようになった。やがては、宗教上の理由よりも、ユダヤ人というものに対する人種差別的な色(反セミ族)を濃くした。一方、ユダヤ人がいなくなった土地(カナーン=パレスチナ)には周辺民族が住み着いた。勿論、ユダヤ人が完全にいなくなったわけではないが、彼らはパレスチナに住み着いた人々と融和して暮らしてきた。 
 7世紀にアラビア半島でイスラム教が出来、西方向にはパレスチナからイベリア半島へと、東にはインドネシアまでその影響圏を拡大した。ユダヤ教、キリスト教の聖地であったエルサレムはこの時、イスラム教の1聖地にもなった。キリスト教狂信者は、十字軍を結成し、ムスラムからエルサレムの奪回を試みたが、最終的には失敗に帰した。そして20世紀半ば(1948)まで、パレスチナには、イスラム教徒パレスチナ人(+少数のユダヤ系)が暮らしていた。 
 
 西欧諸国でのユダヤ人差別は、ナチスによるユダヤ民族抹殺(ホロコースト)政策で頂点に達した。これより前から、西欧諸国の中で抑圧されていたユダヤ人の一部は、我々はカナーンの地を奪還すべしという「シオニズム」運動を始めた。ホロコーストに衝撃を受けた西欧人は、シオニズムのこういう動きを支援せざるをえなくなり(一部のユダヤ系大富豪の援助もあったが)、イギリス主導で、パレスチナの地にイスラエル国家を建設することになった。 
 1948年にユダヤ人のテロ的侵攻により、多くのパレスチナ人は住処を奪われ、難民になった。国際的な調停で、現在よりもかなり小さなイスラエル国家が成立。パレスチナ人は、東部エルサレムを含む、ヨルダン川西岸/ガザに収まることにされた。この強引なやり方は、イギリス・フランスがかつて、北米大陸で先住民を虐殺して土地を取り上げたことと類似している。 
 
 (3)シオニスト達は、建国後海外からの入植者を受け入れるとともに、イスラエルの拡張を画策した。その根拠は、聖書(旧約)に、エホバの神がエジプトからイスラエルの民を救い出して、このカナーンの地を与えてくれたとあるからである。したがって、この地は我々のもの、我らは神に選ばれた人民であるが、パレスチナ人は、我らの神に拒否されたもので、この地に住む権利はない。我らの生存を脅かすものは、取り除いてしかるべし。 新興イスラエルでは、こうした考えを子供の教育から植え付けた。このために現イスラエル人のほとんどは、政府のガザ侵攻やヨルダン川西岸への領土拡張を擁護している。反対者は少数にすぎない。これは洗脳の良い例である。 
 
 (4)一方、パレスチナ人は2000年にわたって住んできた土地から武力で追い払われたのである。パレスチナ人がそれに抵抗するのは当然である。その抵抗をイスラエル側は、テロと断罪し、テロ撲滅は当然というアメリカ式政策を実行している─イスラエル市民の多数も政府のガザ進撃の正当化に同意している。アメリカは、ハマスをテロ組織と決めつけ、今回のガザ侵攻を、それに対するイスラエルの報復として容認している。 
 
 (5)イスラエルがあの地に建国したのが不幸の始まりであった。彼らがシオニスト的狂信を放棄して、パレスチナ人に謝罪し、共存の意思を表明するまで、この紛争は継続するであろう。共存が唯一の選択肢である。 
 
 (6)一方、一部のイスラム原理主義者達は、ユダヤ(イスラエル)の存在そのものを認めようとしない。ユダヤ教原理主義シオニズムの対極である。イスラエルが共存の道を模索せず、パレスチナ人のジェノサイドを続けるならば、イスラエルを包囲するイスラム諸国が結束、イスラエルの消滅もありうる。双方のこうした自己の正当化という狂信を放棄しなければ、根本的解決はない。 
 
 (7)残念ながら、イスラエル人民自身が、今の自国のやり方に抗議し、それを止めさせることが出来る可能性はほとんどゼロである。今は世界の世論を結集して、アメリカを凌駕するぐらいの抗議の声をあげるしかないのであろう。 


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