2009年02月07日14時22分掲載
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社会
日本政府は人道的判断を 在日フィリピン人一家の在留特別許可を求め、嘆願書署名を呼びかけ
十三歳の少女を含むカルデロン・アラン・クルズ一家に対して、入管をはじめとする日本の司法制度が強制退去を迫っている。日本で生まれ、日本で安定した生活を送っていたカルデロン・ノリコさん(13)やその家族に対しての強制退去は、一家の生活を破綻させ、幼い少女の心に傷を負わせることになるだろう。また日本語しか話すことができない彼女が“母国”とされるフィリピンで生活することは言うまでもなく困難である。そういった諸事情を無視しての強制退去は非人道的と言わざるをえない。本稿の最後に、この一家の在留特別許可を求める嘆願書を記載した。署名はメールでも受け付けている。是非署名をお願いしたい。(村上力)
●問題の若干の背景事情
カルデロン・ノリコさんの両親は、15年前、経済的に疲弊し失業が蔓延していたフィリピンから来日した。当時は高い失業率から、出稼ぎが斡旋されていたという。―――当時のフィリピンの困難な事情には、戦中の日帝による侵略と破壊のみならず、日本政府のマルコス軍事独裁政権に対する支援、その後の「忌むべき債務」問題を想起すれば、日本も有責であるだろう。
当時は長期的に日本に在留できるのは一部のエリートや特権層に限られていた。したがってノリコさんの両親は非合法に日本に入国する。
父アランさんは、1996年から都内のある会社で解体工として勤めはじめ、現在に至るまで一家を支える安定した生活を送っていた。社内での信頼も高く、社長から「真面目で、仕事の覚えもよく、他社員とのコミュニケーションも円滑で、公私共に問題を起こす事もなく、現在では職長として現場を任せることができるほどの職人」と評されている。
ノリコさんは、日本で生まれ育ち、今年で中学2年生になる。中学では音楽部に所属し、学校の担任や友人たちから大変好かれているという。産まれてから一度もフィリピンへ行ったことはなく、もちろん“母国語”とされるタガログ語を話すことはできない。
●家族の入管拘束と強制退去令書
2006年の7月に母サラさんが職務質問を受け逮捕、その後の同年9月入管に収容されるとともに、アランさんとノリコさんは仮放免という形になる。その後一家は入管の裁決により、全員に退去強制令書が出される。サラさんは3度にわたる仮放免申請により、入管収容から1年3ヵ月後の2007年5月に仮放免を受ける。
2006年に提訴した退令取消訴訟も一審敗訴となり、控訴審でもアラン一家と法律事務所側は負けている。2008年9月に上告も却下されてしまい、現在は退去準備期間として仮放免を更新し続けているという状況にある。なお、控訴審を争っていた2008年の4月に、ノリコさんは地元中学に入学した。
●集まった署名 地元市民らによる支援も
上告却下後の11月ごろから、法務大臣と入管に対して、アラン一家への在留特別許可を求める嘆願書の署名活動が始まる。署名活動はノリさんの中学の友人、アランさんの職場、地元埼玉県蕨市の市民有志らにより街頭などで行われた。大手メディアによる報道もあり、現在1万7千名を超える署名が集まっている。
しかしまだ入管および法務省は嘆願に応じていない。アラン一家の次の出頭は今月の13日となっている。この際、最悪の場合には両親のうちどちらかが収容されることもありうる。度重なる収容は家族の生活を困難に陥れるだけでなく、幼いノリコさんの心に傷を残すことになるだろう。
このアラン一家に限らず、今後すべての在日外国人に対して、入管および日本の司法制度に人権を尊重させるためにも、何卒署名をお願いしたい。
嘆願書はメールで受け付けている。嘆願書をメールに転載し、日付、名前、住所を記入して下記のアドレスに送っていただきたい。
嘆願書送付先 いずみ橋法律事務所:izumibashilaw@live.jp
以下転載――――――――
嘆 願 書
法務大臣 森 英介 殿
東京入国管理局長殿
カルデロンのり子ちゃん(蕨市立第一中学校1年生:13歳)とその家族、父アラン、母サラに在留特別許可を与えてください。
のり子ちゃんは、日本で生まれて、日本で育ち、現在も蕨市立第一中学校で、勉強、部活動を一生懸命頑張っています。日本人の友達と仲良く楽しい学校生活を送っています。
のり子ちゃんはフィリピンに帰国しても、言葉がわかりません。そしてなにより大切な友達がいません。
のり子ちゃんは、毎日勉強、部活動を頑張っているので、どうかこのまま家族3人が安心して日本で生活できるような人道的なご配慮をお願いします。
2009(平成21)年 月 日
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一言メッセージ:(何かございましたら、お書きください)
――――――以上
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