2009年02月12日23時31分掲載
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欧州移民新世紀
オランダの極右議員、英国への入国阻止事件 コーランを否定する映画を巡り
オランダの極右国会議員で反イスラム教姿勢を打ち出すヘルムート・ウイルダース氏に対し、英政府が入国を拒否していたことが、11日、分かった。入国で「公共の安全を脅かす危険がある」というのが英内務省の理由だ。ウイルダース議員は極右英国独立党(UKIP)の上院議員の招きで訪英し、自身が制作した反イスラム短編映画「フィトナ」が12日午後、英上院議員向けに上映される予定となっていた。イスラム教徒の英上院議員アーメド卿は内務省の決定を「歓迎」した。ウイルダース議員は同日午後2時頃英ヒースロー空港に到着したが、入国が可能となるかオランダに帰国させられるか、予測がつかない状態となっている。(ロンドン=小林恭子)
▽「表現の自由を議論するために招いた」
ウイルダース議員の「フィトナ」は昨年公開時から大きな波紋を広げた作品だ。映画はコーランの表紙が左手に映る場面で始まる。右手には「警告:この書物には衝撃的な映像が入っている」という文字が出る。この後、シャリア法が使われているイラクで人の首がはねられる様子、イランでの石打ちによる死刑、サウジアラビアでの処刑の様子が続く。ユダヤ人に対する憎しみを教える場面もある。欧州でイスラム教徒が増えて行き、オランダのテオ・ファン・ゴッホ映画監督がイスラム教徒の男性に殺されたこと、同性愛者が攻撃される場面なども続く。
最初と最後に、デンマークのムハンマド風刺画(ターバンに爆弾がついている)をほうふつとされる(が別の)風刺画が映し出される。幻想的な音楽を使い、イスラム教やイスラム教徒への恐怖感を植えつけるようなメッセージが繰り返される。最後はコーランを破いたかのような音が出る(実際は電話帳を破って作った音と言われる)。
ウイルダース氏を招いたUKIPのピアソン議員によれば、「私はウイルダース議員の強い反イスラム姿勢に同意しない。オランダでコーランが追放されるべきとも考えていない」。しかし、映画を上映し、この問題に関して議論を深めることが大切と思った、とラジオ・ネザーランドなどの報道陣に語っている。「表現の自由を守ることが重要だ」。
ウイルダース議員は「表現の自由」が映画制作の目的の一つと述べている。
一方、英上院議員でイスラム教徒のアーメド卿は政府の決定を歓迎し、上院での「フィトナ」上映には、「一万人のイスラム教徒を動員してでも阻止したい」と述べている。
▽「フィトナ」上映までの経緯
ウイルダース議員はコーランを「ファシストの本」と呼ぶなど強硬な反イスラムの姿勢で知られる。現在、過激イスラム主義者の攻撃から身を守るため、二十四時間、厳重警備下で暮らしている。
もともと、議員は「フィトナ」をオランダのテレビ局で放映することを望んでいたが、引き受けるところがなく、ネット上で昨年年頭、公開した。しかし、インターネットプロバイダー側が途中で映画をサイト上から取り下げた。現在ではユーチューブ他で見られる。
映画公開直前、デンマークの風刺画事件の再来があるのではないかと危惧したオランダ政府は、各国の大使館に対し、映画公開後の緊急事態に備えた避難策を指南する一幕もあった。オランダのバルケネンデ首相は、映画は「(イスラム教徒を)侮辱する以外の何の目的もない」と評した。
▽オランダ議員の反応
PVV党の党首でもあるウイルダース議員は、オランダ議会内で決して誰にでも好まれる人物ではない。しかし、議員が英国への入国を拒否される手紙を英内務省からもらったことが分かると、野党側は、「欧州連合(EU)諸国の議員が他のEU諸国への入国を拒否されるべきではない」と抗議を表明した。与党は入国拒否は「望ましくない」と述べている。
「私は50万人以上の選挙民の投票で議員になった。入国拒否は受け入れられない」とウイルダース議員はオランダの報道陣に語っている。ウェブサイト上では「英国は言論の自由を犠牲にしている。サウジアラビアならともかく、英国でこんなことが起きるなんて。これほどの臆病な行動は恥だ」。
英内務省によると、入国拒否の理由は「私たちのコミュニティーの中で、過激主義、憎悪、暴力的メッセージを広げようとする者には入国が認められない」からである。
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