2009年02月14日00時25分掲載
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社会
「日本から叩き出す」と気勢 「在日特権許さない市民の会」ら入管前でカルデロン一家を狙い抗議行動
日本からの強制退去を命ぜられているカルデロン一家の出頭日は2月13日の金曜日だった。この日の朝、森法相が会見をし、一家の在留を認めないという判断を下した。同日、カルデロン一家が出頭する品川の東京入国管理局前に、一家を「犯罪者」として「日本から叩き出す」ことを目的とする団体が集まっていた。一家と支援者と待ち伏せ、直接抗議を行おうというのだ(村上力)
●彼らの主張は
「在日特権を許さない市民の会」「NPO外国人犯罪追放運動」「外国人参政権に反対する会」「主権回復を目指す会」「日本を守る市民の会」などは、このカルデロン一家の件に関して幾度も行動を起こしている。
11月ごろ、カルデロン一家を支援する市民らが在留許可を求める署名活動を始め、メディアによる報道が開始された。その同じ時期に「叩き出す」ことを要求するいくつかの団体が行動を開始する。彼らは11月の25日に法務省に対して、「期日通りカルデロン一家の国外退去を行うよう強く求める」申し入れを行った。ここで言う期日とは、この申し入れ行動の2日後の11月27日である。行動には30人ほどが参加したという。
これらの団体はこのほか2回にわたり法務省に対し、即座に一家を「叩き出す」ことを要求している。「座り込み」には60人が参加したようだ。また2月3日には、フィリピン大使館に対して、一家に退去を促すよう、要請行動を行っている。
行動の際、彼らは「フィリピンの恥さらし 他人名義の旅券で不法入国の犯罪人 カルデロン一家を叩き出せ」などのショッキングな内容のプラカード、横断幕を掲げている。また国旗と旭日旗も持ち出し、「日本国民」として抗議を行っているということだ。
なぜ、彼らはカルデロン一家に日本から退去してもらいたいのか。曰く、「外国人犯罪者は追放」しなければならず、「不法滞在のフィリピン人、カルデロン一家は犯罪者」であり、「即時強制送還」しなければ「法治国家日本は崩壊する」。その主張は大方そのようなものである。
上記のような活動をこれらの団体は行っていたが、カルデロン一家の仮放免は更新され、「叩き出」されることはなかった。彼らは、その自分たちの要求(それも、直接的な利害関係の無い、実質的に人を不幸に貶めるのもの)が果たされないことに業を煮やしたのだろうか。ついに入管前にて待ち伏せをし、一家とその支援者に対して直接抗議を行おうとした。彼らの活動が過激さを増していることを示している。
●13日の出頭日、入管前での待ち伏せ
通例ではカルデロン一家と弁護士らは10時半に、入管前で待ち合わせをする。しかし、この日の入管前には10時前から抗議に来たと思しき団体メンバーら20〜30名がバス停前にたむろしていた。
10時ごろから、「在日特権を許さない市民の会」会長桜井誠氏が抗議演説を開始する。拡声器を使い、半径200メートルに響き渡る大声であった。そして「市民」らとともに「犯罪フィリピン人を日本から叩きだせ!」「うそつきカルデロン一家を許さないぞ!」などとのシュプレヒコールをあげていた。なおこの抗議行動は、インターネットで「生中継」も行っているという。
幸いにもこの日、一家とその支援者は予定を前倒しし、この抗議行動には遭遇することは無かった。一般的な市民団体の行動には、警察車両が配備されている。しかしこの日、入管周辺では警察車両の姿を一台も見ることは無かった。危険な状況が予想されるのにも関わらず。
おそらく、入管前で抗議行動を行った彼ら団体のメンバーは、一家とその支援者に対して、上記のような罵倒を浴びせかけるつもりだったのであろう。30〜50代と思しき彼・彼女らが寄って集り、まだ中学生であるノリコさんに対してそのような蛮行をするつもりであったならば、それは鬼畜といわざるをえない。またそれを「生中継」するとは、不気味である。
●残された時間は少ない
森法相が下した判断は、カルデロン一家に対して2週間の期限を与えるものであった。つまり2月27日までに荷物をまとめ、帰国の日程を定めなければならないということである。もう残された時間は少ない。
今回、このフィリピン人一家に対して、我々日本の市民社会からは、一家の在留許可を求める多くの署名が集まった。だが、直接行動としては「叩き出す」趣旨のものしか行われていない。かつて日本はフィリピンに対し、侵略をし、独裁政権を支援していた。現在に至っても組合潰しに手を貸すなど、多様な形でフィリピン現地の人々に敵対してきたことを記しておかなければならない。また昨今の不況の中で、日本社会から「叩き出」された一家がフィリピン現地で生活基盤を作れるのだろうか。
まだ、2週間ある。署名も受け付けているという。
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