2009年02月21日10時08分掲載
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ロシアン・カクテル
(2)“尻尾”がつきませんように 学期末試験に学生はあの手この手 タチヤーナ・スニトコ
人気のある学生の歌には“学期末試験から学期末試験まで学生たちは愉快に生活する;学期末試験は1年に2回しかないから”というレフレーン(繰り返しのことば)がある。冬とともに「ザチョト」と試験を受ける時期が来る。
試験は筆記試験と口頭試問という二つからなっている。
口頭試問では、学生は試験問題カードを引いて、40分間準備をしてから、またその後40分間で試験の問題に対して答弁しながら先生の質問にも答える。成績は成績表だけではなく、「ザチョト帳」に記入されている。「ザチョト帳」というのは、学生は「カ」という接尾語をつけて「ザチョトカ」とも呼んでいる。
「ザチョト」では「合格」と「不合格」という点があるが、試験では点をつける。5点は満点で、4点は「良」、3点は「可」という意味をする。2点は「不可」で、落第という意味をする。
「不合格」となった試験やザチョトは「尻尾」という名前で呼ぶ。なぜなら、その「尻尾」となった試験は、学期が終わってから再試験を受けなければならないからである。私立大学では再試験は有料である。大学によっては、3本の「尻尾」がある学生は退学させられる。 不勉強な学生はいつも学期末試験では、何本も尻尾を作って、何回も再試験を受けなければならない。不勉強な学生について、諺で言う通り「学生は尻尾が切れても、次の学期末試験では新しい尻尾が生えてくる」のである。
「尻尾」という言葉を聞いて、学生はぞっとする。多くの学生たちは、来る日も来る日も朝から晩まで勉強している。そして、日増しに青ざめて痩せてゆく。
一方、運を天に任せている学生たちも沢山いる。一つ又は幾つかだけ問題カードの質問に対して勉強しておいて、知っている問題カードに出会えばそれは運命の女神の贈り物であると思うのである。また、“ずる”をやる学生もいる。ある学生たちは教科書を枕の下に置いて寝る。また別の学生たちは教科書を頭の上に乗せて、知識が自然に教科書から頭の中に流れ入るというやり方をする。
又別のお勧めは教科書の上に座る方法である;知識の頭までの流れ込みの道“距離”は若干長くなるけれど、しっかりした知識となる。又、ある女子学生は試験の前の夜には自分の足の下にチョコレートを置くことを勧めた。“学生が寝るとき、知識はから流れ出る。チョコレートを下に置くと知識はチョコレートに集まる。朝起きたとき、そのチョコレートを食べてください”と勧めてくれた。
大勢の学生はカンニング用メモ「シュパルガールカ;シュポーラ」を作る。優等生はメモを書くが試験の時にはそれを使わない。不勉強な学生は試験の時思いがけないところから「シュポーラ」(カンニング・ペーパ]を出して人目を盗んで見る。自分で作った「シュポーラ」や友達から借りた「シュポーラ」を使う。先生は「シュポーラ」を見つけ出そうと奮闘するが失敗する。何の効果もなく、成功しないのである。それぞれの学生の世代は、新たな「シュポーラ」の種類を考え出すのである。
(つづく)
<タチヤーヤ・スニトコさん>
ロシア連邦クラスノダール市生まれ。ロストフ・ナ・ドヌー教育大学外国語学部、ピャチゴルスク言語大学大学院、モスクワ大学付属アジア・アフリカ諸国大学特別学部(日本文化研究専攻)などで学ぶ。ロストフ・ナ・ドヌー教育大学教授を経て、2006年に国際交流基金の助成金で来日。東大、昭和女子大、早大で研究と教育をつづける。理論言語学博士。
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