2009年02月25日09時52分掲載
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ビルマ民主化
「長井健司賞」受賞の女性ジャーナリストは獄中に 軍政下の「真実」伝え シュエバ
2009年が明けた。2008年、ビルマでは大きな出来事がいくつもあった。5月、サイクロン・ナルギスの来襲。14万人におよぶ死者・行方不明者が出る未曾有の大災害であった。直後、ビルマ軍事政権は被災者救援をそっちのけにして新しい憲法草案についての国民投票を強行した。軍の優位を公的に認めるこの憲法は国民の90%以上の承認を得たとし、軍事政権は自らの「民主化七段階ロードマップ」に沿って2010年には総選挙を実施すると発表した。アウンサンスーチー国民民主連盟(NLD)書記長やティンウー副議長らの自宅軟禁はまだつづいている。
NLDや原住諸民族の活動家は政府の「民主化」を妨害する者としてきびしい弾圧にさらされている。イブラヒム・ガンバリ国連事務総長ビルマ問題特別顧問は2009年1月末から2月にかけてビルマを訪問したが見るべき進展はなかった。
▽サイクロン被災地の報道で禁固2年
2008年の11月、88年民主化闘争で頭角をあらわし、2007年のいわゆるサフラン色の革命(シュエワーヤウン・トーフランイエー)でも活躍した「88世代学生グループ」のミンコウナインら活動家に65年もの禁固刑が科された。
この抗議行動を取材していて日本人ビデオジャーナリスト長井健司さんが射殺されたのは記憶に新しい。2008年11月、海外で活動するビルマ人ジャーナリストの団体BMA(Burma Media Association)の代表をつとめるマウンマウンミィン(オスロ在住)さんから連絡があった。ビルマ民衆に心を寄せ、ビルマの真実の姿を世界に伝えようとして倒れた長井さんの功績を永く世に伝え、その志を継ぐジャーナリストに与える「長井健司賞」を創設したいという。その件で長井さんが所属していたAPF通信社と連絡をとってほしいとのこと。
在日のBMAのメンバーであるテッリン(雑誌「アハーラ」編集者)さんとともに東京・赤坂にあるAPF通信社を訪れ山路徹代表にBMAの意図を伝えた。山路さんはこのプランに賛意を表し、ご遺族の了承を得たうえ賞牌や副賞の用意まで引き受けてくださった。
第一回の受賞者は24歳の女性ジャーナリスト、エインカインウー(Eint Khaing Oo)さんに決まった。ビルマの経済誌の記者である彼女はサイクロン・ナルギスに襲われた被災地の「真実」の状況を伝えた。軍事政権は「正しくないニュース」を発信したとして重労働を伴う禁固2年の刑を宣告した。いま彼女はインセイン刑務所に投獄されている。
受賞式は12月にチェンマイでと予定されていたが、タイ国の政治混乱のため2009年3月21日に延期された。獄中の彼女に代わって友人が「長井健司賞」を受け取るという。授賞式に出席できない山路さんはビデオメーセージをチェンマイへ届ける。挨拶に加えて長井さんの人柄と業績をふりかえるビデオである。2月18日、APF通信社へ行き、通訳やナレーションをしてビデオ作成を手伝った。
(なお長井健司さんの報道姿勢と仕事ぶりについては山路徹『命の対価〜独立系ニュース通信社の使命』主婦の友社2008に詳しく紹介されている)
▽総選挙めざし軍政の弾圧つづく
長期刑といえば、シャン民族の指導者クントゥンウーは93年の刑を宣告されカチン州北部プタオの刑務所につながれている。
2008年9月、イブラヒム・ガンバリ国連特使との面会を拒んで、国際社会のまともな対応を求めてアウンサンスーチーさんがハンガーストライキをしていると伝えられた。JAC(民主化行動行動委員会)に結集するビルマ人たちは「アウンサンスーチーさんの健康状態を確かめよ!」、「三者対話実現のために国連は積極的な行動を!」などのスローガンを掲げ、東京・青山の国連ハウス前でハンガーストライキを行なった。
たまたまその場を訪れた日はクントゥンウーの誕生日にあたり、シャン民族の人たちを中心にささやかな集会が開かれていた。挨拶をするようにいわれて、私は次のようなみっともない話をしたことを覚えている。
「クントゥンウーさんと私は同じ65歳。同じ時代を生きてきたことになる。しかし、その境遇には天と地ほどの違いがある。平和な日本でのうのうと暮らしている自分が恥ずかしい。これからはビルマにとって、シャン民族にとって、クントゥンウーさんにとって、少しは役に立てるような活動を心がけて行きたい」
そのクントゥンウーの姪にあたる女性が日本に住んでいる。1月21日、彼女の「難民として認めない処分の取り消し」を求める訴訟で本人尋問の通訳をしたのが、今年最初の法廷通訳であった。
このように軍事政権は2010年総選挙に向けて反対者をつぎつぎに逮捕、投獄し、準備を進めている。総選挙まであと1年しかない。在日のビルマ人は「憲法は認めない」、「2010年総選挙は阻止する」との決意を固め、運動の勢いを強めている。
(つづく)
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