2009年04月21日21時34分掲載
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世界経済
目立つ金融機関救済、貧困対策は名目だけ 金融サミットで金融危機は回避できるか? 山浦康明
日本時間の4月2日、ロンドンで開催された第2回金融サミット(G20、20ヵ国・地域首脳会合)は国際通貨基金(IMF)の強化、成長と雇用の回復、金融規制の強化、貿易・投資の促進などを盛り込んだ首脳宣言を採択、一応の成果を上げたとされている。しかし、金融危機で苦しむ弱者にとって、こられ一連の金融対策は貿易と投資の自由化による生存基盤の弱体化、借金や重税の押し付けをもたらし、格差のいっそうの拡大を図るもものだと日本消費者連盟事務局長の山浦康明氏は警告する。共同通信によって配信され、信濃毎日新聞など数多くの地方紙に掲載された同氏の論考を紹介する。(ベリタ編集部)
06年夏、米国で住宅バブルがはじけて以降、マネーゲームのつけが世界の金融システムを破壊した。世界同時不況が進行する中、ロンドンでの20カ国・地域(G20)首脳会合は金融危機、経済危機を回避できるのだろうか?
08年11月のワシントンでの第1回金融サミットでは、景気下支えのために各国が財政出動などで協調するとし、日本も2兆円の定額給付金を含め27兆円を支出することを公表した。
金融市場の規制改革では透明性の確保が言われたが規制強化の弊害も強調され規制は中途半端なままである。新興・途上国向け緊急支援拡大については、日本は10兆円の資金を国際通貨基金(IMF)に拠出し、中国や中東産油国にも呼びかける、とした。
今回の金融サミットで予想される合意事項として、「景気回復対策」では金融機関の救済が名実ともに重視され貧困対策は名目だけにとどまるおそれがある。
「開かれたグローバル経済」として世界貿易機関(WTO)交渉の促進がうたわれるが、WTOや自由貿易協定(FTA)がもたらした世界的経済格差、各国国内経済へのダメージを振り返ることはなく、米国に見られるバイアメリカン条項などの保護主義を避難する論調が続くと思われる。
「金融システムの改革」では金融規制の弱さが危機を招いたとの認識に立ち、金融安定化フォーラム(FSF)の機能を大幅に強化することになろう。
すなわち、日米欧の金融当局が、銀行、証券の垣根を越えて金融システム全体を規制するというのだが、危機を招いたマネーゲームの元凶である金融商品の流通の構造は見直されることなく、タックスヘイブンの問題点も解明されず、ヘッジファンドの規制もおぼつかないだろう。
「持続可能なグローバルな対策」としてセーフティネットの必要性が語られようが、その内実と実効性が問われる。また低炭素化社会のためのテクノロジーが新たな投資先として語られたり、途上国支援として投資の拡大が示されよう。
日本がアジア向けに円借款の形で農村開発、インフラ整備のために政府開発援助(ODA)を2兆円拠出するというが、これまで途上国の貧困問題の原因の一つであった債務返済問題が解決されないと、これが新たな債務問題を引き起こすおそれもある。
国有企業の私有化と構造改革路線といった新自由主義の見直しは行われようとしているが、資本主義システムにおける国内総生産(GDP)などの経済指標重視、南北格差を前提とする資源収奪の構造、資本・賃労働関係の維持などを前提としている。
このため社会的弱者の救済は常に後回しとなり、社会のセーフティネットの崩壊は深刻化する。日本の消費者も総計2兆円の定額給付金を受け取ったとしても、何十兆円もの財政出動が行われそれが将来の消費税引き上げに結びつくようであれば、引き合わない。
私たちは納税者として、G20の各国首脳や日本政府の政策決定の透明性を求め、今後の政策を見守る必要がある。
(筆者は日本消費者連盟事務局長、共同通信識者評論から)
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