2009年04月30日14時11分掲載  無料記事
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社会

「在特会」の「4・11蕨市デモ」とは何だったのか

  去る4月11日、カルデノンさん一家の日本からの退去を叫んで、本人たちが住む埼玉県蕨市で街頭行動を敢行した「在日特権を許さない市民の会」(以下在特会)主催のデモ行進は、その後も様々な波紋を呼んでいる。彼ら自身が発信した情報により、『行動する保守』らのデモの意図が次第に明らかにになってきた。それは日本への残留を許可された中学生のノリコさんをねらったものだった。この在特会のデモに対抗する形で行われた「外国人排除デモに反対する会」が当日行った「生きることは犯罪じゃないinわらび行動」の参加者のうち2名は当日に逮捕され、現在も勾留が続いている。「反対する会」の行動の意図についても、当事者に聞いた。(村上力) 
 
 ●子どもを狙う「保守運動」 
 
  『行動する保守』側からは4月11日のデモ行進に関する様々な情報が発信されている。そうした情報を検証すると、対象が明確でなかった今回のデモの意図が明らかになってきた。このデモに参加し、『行動する保守』の中心的人物である「維新政党・新風」副代表瀬戸弘幸氏は、自身のブログで以下のように述べている(※1)。 
「11日にはカルデロン一家はまだ日本の蕨市に在住していました。言ってみればカルデロンの両親に『ノリコさんを連れてフィリピンに戻りなさい』という最後のチャンスでもあったわけです」 
  上記の発言から読み取れるのは、このデモが13歳の少女をターゲットにしたものであったことである。実際に、その子どもの中学校まで来て、「追放しろ」などとマイクで叫んでいた。また、「在特会」副会長、「維新政党・新風」茨城本部青年部長の八木康洋氏は、「在特会」公式ブログにて、子供を対象としたことを「正当化」しようと試みてまでいる(※2)。 
 
  「保守」の好きな言葉に「教育再生」というのがある。その「保守」たちが、中学校と中学生を対象にデモとマイクで攻撃を仕掛けたのだ。しかしこれは驚くことでもない。例えば「教育再生・地方議員百人と市民の会」事務局長、「在特会」元関西支部長増木重夫氏は、小学校の入学式に「街宣車で来る」と脅したとして、暴力行為法違反容疑で逮捕されているという(※3)(『関西産経』2009年4月 5日「小学校入学式に街宣車」 校長脅した疑い 2人逮捕) 
  この事件に関して、「在特会」は増木氏を「業務執行能力を失った」として関西支部長を解任している(※4)。だが、幹部の逮捕という不祥事に対して、「遵法の精神」なるものを云々してきた「在特会」会長桜井誠氏からはなんら釈明も自己批判もされていない。 
 
 ●「極左集団」のレッテル張り 
 
  桜井誠氏は自身のブログで、「反対する会」は「カルデロン一家の支援を標榜していた(※5)」、「蕨市を拠点とする極左集団が呼びかけ(※6)」を行ったという意味のことを述べている。だが、「外国人排除デモに反対する会」の企画者はカルデロン一家の支援にほとんど関わりをもっていない。当日の行動の焦点も「一家の支援を標榜」していない。また企画者の中には蕨市に住んでいる人はいないという。 
 
  つまり、桜井誠氏が断定する「極左集団」とは、「外国人排除デモに反対する会」ではなく、他にいたということになる。だが、記者として現場にいた筆者は残念ながらそれを見ていない。 
 
  在特会は2008年11月に法務大臣に「カルデロン一家の国外退去処分を期日通り行うこと」を申し入れている。その際、彼らは「(一家が)遵法精神を欠く左派活動家たちと結託」していると自らの申し入れを正当化している(※7)。しかし、彼らは自分たちの述べていることを立証する具体的事実は明らかにしていない。 
 
 ●「外国人排除デモに反対する会」とは 
 
  「生きることは犯罪じゃないinわらび行動」は、「在特会」主催のデモに対抗する形で呼び掛けがされていた。企画団体の「外国人排除デモに反対する会」関係者によれば、多くが日本政府や東京都が行ってきた排外主義キャンペーン、警察と入管による外国人刈り込みなどへの問題意識を持っていたという。その問題意識を共有する個人が蕨市でのデモ行進を察知し、デモ開催日の数日前に会合を持ち、抗議行動を企画した。 
  この抗議行動の焦点としては、横断幕に「生きることは犯罪じゃない」と書かれているように、不法滞在者を「日本から叩き出す」とする「在特会」らの動きに抗議する人もいるということを示したかったという。当初は「在特会」側とはある程度距離を置いた意思表示を予定していたが、組織統制ができていなかったことを救援会のブログで自己批判するとともに、逮捕の不当性を訴え、即時釈放を求める声明を発表している(※8)。 
 
 
※1: 
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/52218564.html 
 
※2: 
http://www.zaitokukai.com/modules/wordpress/index.php?p=93 
 
※3: 
http://www.sankei-kansai.com/2009/04/05/20090405-008287.php 
 
※4: 
http://www.zaitokukai.com/modules/news/article.php?storyid=224 
 
※5: 
http://ameblo.jp/doronpa01/entry-10241690785.html#main 
 
※6: 
http://ameblo.jp/doronpa01/entry-10240960814.html#main 
 
※7: 
http://www.zaitokukai.com/modules/wordpress/index.php?p=85 
 
※8: 
http://d.hatena.ne.jp/oidashino/20090413/1239644133 


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