2009年05月23日13時56分掲載  無料記事
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労働問題

台湾アップル社は納品業者WINTEKを指導せよ  争議団が企業の社会的責任を問う

  本紙既報(4月28日付け)のように、携帯電話パネルやタッチ式画面で台湾で第1位、世界でも三番以内に入る台湾の多国籍企業で台湾、中国にまたがる争議が起こっている。アップルコンピュータの納品業者でもある勝華科学技術株式会社(本社:台中県、以下WINTEK)で、金融危機を理由に、台湾で労働者を大量解雇、通動くでも労働条件の切り下げを断行、争議が発生している。争議団と闘争を支援する労働団体は発注元のアップルに対しても抗議行動を行っている。以下、台湾の「苦労網ウェブサイト」に掲載された争議の模様を紹介する。(ベリタ編集部、翻訳はATTACジャパンいながき) 
 
  5月21日午前、勝華科学技術社(以下、WINTEK社)争議団と全国自主労工連盟などの団体が、アメリカのアップルコンピューター社の台湾法人(以下、アップル社)に対して抗議行動を行った。アップル社は、著名な世界的ブランドであるにもかかわらず、納品業者であるWINTEKが、台湾および中国で大規模なリストラ、賃下げなどを行っていることに対して何ら対策を採ろうとしていない。抗議を行った団体は、アップル社が「納品業者行動規範」にのっとり、WINTEK社に待遇改善を行い、搾取をやめ、労働者代表と話し合いの席に着くことを指導すよう要求した。 
 
  昨年12月に解雇され争議団を結成したWINTEK社の労働者20数名も台中から参加した。自主工聯の朱維立・執行長は、この行動が現在も工場内で働いている労働者の待遇改善にもつながると指摘した。WINTEK社は世界不況の影響で、昨年末に600名以上の労働者を即時解雇した。労働条件も悪化し続けており、受注が若干回復した現在は、人手が足りない状態で残業が多発しているにもかかわらず、残業代が支払われていない。工場側は労働者に「残業代不受理同意書」への署名を迫っているという。 
 
  朱維立は、労働条件の引下げとアップル社の「在庫ゼロ」政策には関連があると指摘する。在庫を抱えず注文が来たときにだけ人を雇って生産を急がせるからだ。現在WINTEK社は、時給110台湾ドル(1台湾ドル約3円)で、3ケ月契約の労働者を募集し、自ら「派遣会社」化している。古くからの労働者によると、WINTEK社は一ヶ月契約の労働者を人材派遣会社の広告に掲載している。青年労働九五聯盟の胡孟■[王へんに禹]は次のように批判している。WINTEK社は、臨時的でも、短期的でも、季節的でもない雇用に対して派遣依頼をしており、これは違法である。単に有期契約によって景気循環に対応しようとしているだけである。労働委員会(労働省:訳注)はこの問題に積極的に介入しなければならない。 
 
  中国広東省の東カンにあるWINTEK社傘下の萬士達社でも4月末に劣悪な給食内容や残業手当などのカットに対して、7000人もの大規模なストライキが発生した。最後までストライキを継続した19人が解雇されている。 
 
  あるWINTEK争議団のメンバーは次のように語る。「この会社は、中国でも台湾でも、労働者をいじめている」。彼女は、中国で大規模なストライキが発生したことを知り、台湾の労働者は、まだまだ団結が足りないと感じたという。 
 
  支援に駆けつけた苦労網の蔡志傑はこう語った。メディアでは「企業の社会的責任」という言葉が流行っているが、それは単なる免罪符になっている。真剣に社会的責任を行使するのであれば、納品業者の労働者の権利を引き上げるべきだ。 
 
  同じく支援に駆けつけた緑の党の潘翰声・事務局長は、多くの企業が社会的責任を果たすために年一回、募金活動や関連イベントを数時間行っているが、それ以外の365日の間ずっと環境を破壊し、労働者を傷つけている、と批判した。 
 
労働団体や環境団体のほか、学生団体も支援に駆けつけた。東呉大学研究社、師範大学人文社、台湾大学大新社、輔仁大学黒溝社、野草苺などが駆けつけた。4月に呼びかけた「WINTEKの超搾取工場を糾弾する共同アピール」も、香港、中国、日本、韓国から賛同が集まっている。 
 
  アップル社は抗議団体の要求を無視した。現場で警備に当たっていた警察によると、アップル社は休みで誰もいない、という。朱維立は最後に、5月末までにアップル社から回答がない場合は、6月はじめに行われる国際コンピューター博覧会に対して再度動員をかけ、アップル社製品の不買運動を呼びかけることも辞さない、と発言を締めくくった。 


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