2009年06月13日00時18分掲載
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イスラエル/パレスチナ
映画『オリーブの木がある限り』 オリーブは私たちの文化・歴史、生きた証なのです
あまりよく知られていないことだが、パレスチナの主要産業は農業である。輸出額の25%を農産物が占め、就業人口の14%は農業就業者が占める。主要作物はオリーブ。しかし畑や果樹園はイスラエル軍の検問所や分離壁に囲まれ、生産も輸送も常にイスラエルによって妨害され、オリーブの木は次々と引き抜かれた。そんなパレスチナの農業を守り抜こうと有機農業とフェアトレードを目指す地元NGO/民衆組織がヨーロッパや日本の市民組織・フェアトレード団体と組んで活動している。この映画は、そうした活動に取り組むパレスチナのNGO「パレスチナ農業復興委員会」(PARC)とフランスのパートナーが制作した。日本語版は、PARCの日本側パートナーである市民資本の民衆交易会社オルター・トレード・ジャパン(ATJ)とアジアの民衆組織のリンケージを掲げるNGO、APLAの協力を得て、国際有機農業映画祭実行委員会(代表:大野和興)が制作した。(大野和興)
この映画の日本での最初の上映は2008年11月に開かれた国際有機農業映画祭の第2回映画祭においてであった。そしてこの6月12日には都内で開かれた東京平和映画祭で上映された。2008年11月16日の有機農業映画祭上映当日、この映画の主人公が映画祭会場に現れた。PARCのサリーム・アブー・ガザーレさんとパレスチナ農業開発センター(UAWC)のカレッド・ヒデミさんだ。彼らのオリーーブオイルを扱うATJが招聘、日本の消費者との交流の合間の縫って駆けつけてきてくれたものだ。
サリームさんが話した。
「パレスチナには1000万本のオリーブの木がありました。この7年間に100万本がイスラエルによって引き抜かれたのです」
カレッドさんが語った。
「オリーブの木を育てること、そこからオリーブオイルを絞り、製品に仕上げることは、私たちにとってたたかいそのものなのです。土地の権利、水の権利はそのまま人間が生きていくための権利、生存権そのものです」
パレスチナはオリーブの原産地のひとつとサリームさんは指摘する。コーランでも神聖な木とされ、オリーブと人との付き合いは3000年以上に及ぶ。
「そのオリーブの木が引き抜かれるということは、私たちの文化や歴史、宗教を根こそぎにされるということなのです。同時にそこで生活の糧を得ている農民の未来を奪ってしまいます。だから私たちは引き抜かれても引きぬかれても植え続けます」
映画は見る人に深い感銘を与えた。
冒頭、ナレーションが語りかける。
「パレスチナといえば、石を投げる子ども、自爆するテロリスト、イスラエル軍と戦い青年、ステロタイプのパレスチナ。もちろんそれも事実だが、その背後にもうひとつの現実がある」
「パレスチナの人々の多くが農民であるということを、誰が知っているだろう」
映像は壁を、検問所を写し、カメラは次第にパレスチナの内部に踏み込む。乾いた土地に広がるオリーブ園、一家総出で収穫作業に従事する村人、よちよち歩きの幼児も一人前に畑でがんばっている。
突如ニュース映像が入る。イスラエルの兵士が重機を持ち込み、オリーブの木を引き抜いたり、切り倒したりしている。一人の農民が猛烈な抗議を行うが、たちまち兵士たちに押さえ込まれ、腹をけられ、連行される。
パレスチナの農民たちは協同組合を作り、加工・輸出を目指す経済活動で“もうひとつの”抵抗に乗り出す。しかし、収穫のため、家を出ようとする農民にところにイスラエル軍がやってきて、「今日は外出禁止」だと伝える。自分たちの工場で絞ったオリーブオイルを港に運び出すトラックはしばしば検問所で止められ、船積みに遅れそうになる。それでも農民は「オリーブの木がある限り」がんばる。
2007年/フランス/ 23分,日本語字幕版
映像・監督:イヴ・デュシュマン 制作:Solarium A.S.B.L
国際有機農業映画祭実行委員会は『オリーブの木のある限り』(日本語字幕版)のDVDの貸出と販売(上映権付)を行っている。
●貸出 個人 3,000円 団体 10,000円
●販売 一般 3,000円 図書館 10,000円
お問合せ:国際有機農業映画祭事務局まで info@yuki-eiga.com
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