2009年08月12日08時49分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200908120849013
ビルマ民主化
スーチーさんの軟禁継続 市民団体が「日本政府はビルマ民主化へ国際社会との連携を」
ビルマ(ミャンマー)の民主化運動指導者アウンサンスーチーさんに対して、軍事政権が11日、さらに1年半の自宅軟禁を命じたことに国際的な批判が高まっている。日本では、在日ビルマ人ら約300人が東京都品川区のミャンマー大使館前で、スーチーさんの写真を掲げて不当判決に抗議し、スーチーさんら2100人の政治犯の即時解放を求めるシュプレヒコールを繰り返した。またビルマ市民フォーラムとビルマ情報ネットワークの両市民団体は、判決は不当とし、「ビルマの民主化にむけて日本政府は国際社会と連携して実質的な行動を起こすべきだ」とするプレスリリースを発表した。(ベリタ編集部)
アウンサンスーチー氏有罪判決は不当 日本政府は国際社会と 連携して実質的な行動を
ビルマ市民フォーラム、ビルマ情報ネットワーク
本日、ビルマ(ミャンマー)の民主化指導者でノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー氏に禁固3年の有罪判決が宣告された(直後に1年半の自宅軟禁に減刑)。アウンサンスーチー氏は、過去19年間のうち13年間を自宅軟禁下に置かれてきた。今回の有罪判決は、この状態をさらに長引かせ、アウンサンスーチー氏の自由を奪い続けるまったく不当なものだ。アウンサンスーチー氏はこの困難な状況に、品位を失うことなく立ち向かっている。わたしたちはこうした氏の闘いに深い敬意を表明すると同時に、日本政府に毅然とした対応を求める。
今回の判決は、米国人男性がアウンサンスーチー氏宅に侵入したことを口実としてビルマの軍事政権(国家平和発展評議会=SPDC)がアウンサンスーチー氏を起訴したことによる。軍政は来年2010年に、一方的に起草した新憲法に基づいた総選挙の実施を計画している。この点についてビルマ市民フォーラム代表の永井浩は「総選挙での『勝利』を確実にするため、国民の支持を集めるアウンサンスーチー氏の拘束を続けたいという思惑が働いたのは明らかだ。アウンサンスーチー氏を始めとした政治囚が自由の身になり、民主化改革のプロセスに参加できない限り、ビルマの国民和解は進まない」と述べた。
今回の訴追を通じて改めて露呈したのは、ビルマ軍政には真の民主化に向けた歩みを進める意欲が完全に欠如しているという事実にほかならない。世界中の支援団体が呼びかけているように、今こそ国際社会がひとつになり、実質的な行動によってビルマ軍政に応じるべきだ。具体的には、国際的な武器禁輸措置や、軍政が犯しているとされる人道に対する罪についての国際調査委員会の設置などが必要だ。
日本は民主主義国家として、またビルマへの主要な支援国として、同国の現状に重い責任を負う。しかし政府の対応は不十分だ。中曽根弘文外相はたしかに懸念を表明しているが、その表現はきわめて穏やかだ。驚くべきことに「〔訴追は〕国内の司法プロセスの問題ではある」「(アウンサンスーチー氏への)医師・弁護士の提供や外交団による(裁判の)傍聴などの努力は評価する」といった発言まで存在する。判決の一週間前には3.5億円の無償資金協力の供与も約束した。
こうした日本政府の姿勢について、根本敬・上智大学外国語学部教授は「あまりに間接的で穏健にすぎる表明だ。これでは軍政に対する抗議とはいえず、日本の姿勢を逆に誤解させることになりかねない」と語る。
ビルマ情報ネットワークのディレクターで米国弁護士の秋元由紀は「ビルマ軍政は天然ガスの輸出により多額の収入を得ているのに、国民の福祉を充実させず、予算の多くを武器の輸入や国軍の増強に充てている。その武力はもっぱらビルマ国民、特に少数民族住民に対して使用される。日本は軍政のこうした行動を正視し、軍政が自国民をこれ以上傷つけるのを防ぐためにも、人道に対する罪についての調査委員会の設置や、武器禁輸措置の採択に向けて、国連安保理内でリーダーシップを発揮してほしい」と述べる。
アウンサンスーチー氏はかつて「皆さんの自由を、私たちが自由になれるように行使してください」と言った。わたしたちは、日本政府がビルマの人びとの側に立つ、本当の意味での支援国になることを求める。
*ビルマ市民フォーラムは1996年12月に結成された市民団体で、
ビルマ(ミャンマー)における人権の確立と民主化の推進を目標に、国内在住のビルマ人(難民および難民申請者を数多く含む)、ならびにこの問題に関心を有する多くの日本人と共に、さまざまな活動を続けている。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。