2009年10月04日14時31分掲載
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文化
第4回 UNHCR難民映画祭-東京 人間が超えがたい状況に翻弄され、そこで悩み苦しむ時、人の心を動かす物語が生まれる 李憲彦
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)難民映画祭この映画祭で上映されている世界中の難民を描いた20の映画 は、政治的なメッセージを訴える以前に、映画としての感動にあふれるものが多い。はじめの三日間で5作品を見たが、正統派の ドキュメンタリーばかりでなく、アニメやフィクションの作品もあり、多彩なラインナップになっている。その中から、最も衝撃的だった作品を紹介しよう。
2007年ミャンマー(ビルマ)で、日本人ジャーナリストの長井健司さんが、軍隊に殺害された事件はまだ記憶に新しい。銃 で撃たれて倒れるショッキングな映像は世界中に配信された。この 映像を撮影したのは、ビルマ民主の声(Democratic Voice of Burma)というグループで、小型のビデオカメラを持った30人ほどのビデオジャーナリスト達が、軍事政府の監視から逃れながら命がけで撮影をし、インターネットなどによって海外に発信を続けている。彼らの活動を描いた作品が、今回上映された「ビルマVJ」だ。
当局にマークされているVJ(ビデオジャーナリスト)は ほとんど顔を出さない。彼らの撮った映像は、けっして見やすい物ではない。時に逃走しながらカメラを回し続け、時には、カメラを隠すためにビニールや布をかぶせられ、音声だけになる。あるドキュメンタリストから、映像の良い悪いではなくカメラがそこにいるかどうかが全てだと聞いたことがあるが、まさに民主化を求めデモをする僧侶や学生達の中に入って撮られた映像には、どんな映像も及ばない力強さがある。軍隊が発砲する中、僧侶や学生達の声からは、死をも恐れない決意があった。それを撮影したVJにも、そうした覚悟があったのだろうと思うと、彼らの活動はジャーナリズムを超えた何ものかになっている。それがこの作品を、比類ないものにしている。
上映が終わって、舞台に立った原案・脚本・助監督のヤン・クログスガード氏は、「いまだに軍事政府は植民地時代のような時代意識にあり、現在の時代が見えていない」と語ったのが印象に残った。
映像に映っていた僧侶や学生、そして撮影をしていたVJの何人かは現在も政治犯として収監されているだろう。
今年の10月3日、岡田外相はミャンマー外相との会談で、アウン・サン・スー・チーさんを含むすべての政治犯を釈放するよう求めた。
(映像作家)
第4回 UNHCR難民映画祭-東京 (10月1日から8日)
http://unhcr.refugeefilm.org/
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