2009年11月04日21時12分掲載  無料記事
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7日からアジア連帯経済フォーラム2009開催  足元から人びとのつながりを取り戻し、自立の経済を作る

  連帯経済という新しい経済が世界で広がっています。連帯経済とは何か?それを知るのに絶好の機会が11月7日から東京の国連大学、青山学院大学、東京ウィメンズプラザを会場に開かれる「アジア連帯経済フォーラム2009」です。およそ15カ国から約50人の著名な活動家と研究者が集まり、20世紀型社会主義と資本主義に替わる新しい経済を展望します。(村上良太) 
 
  「アジア連帯経済フォーラム」、1回目は2007年にフィリピンで開かれ、今回が2回目。2011年にはインドで開催します。今回、事務局はアジア太平洋資料センター内にあります。 
  国際問題評論家・北沢洋子氏によると、「連帯経済」の始まりは80年代のラテンアメリカでした。債務危機を口実にIMFが構造調整を求めた結果、貧困層が増大し、農村や漁村では地域が崩壊します。そこで始まった相互扶助の営みが「連帯経済」でした。協同組合や共同食堂運動、地域通貨の創設など様々な試みが行われ、多くの貧困者を救いました。90年代にはフランス、イタリア、スペインでも始まり、そして、今、アジアでもその機運が高まっています。 
 
  来日する連帯経済の活動家は個性的な人々がそろっています。 
 
★「貧民連合」のバムラン・カヨータ氏 
 
  タイから訪れる「貧民連合」のバムラン・カヨータ(Bamrung Kayotha)氏はまた「防弾チョッキの男」としても知られています。カヨータ氏と20年来の交流がある「アジア農民交流センター」の大野和興氏によると、カヨータ氏はタイ民主化運動にかかわり73年の民主化を勝ち取ります。しかし76年のクーデターで労組などの活動家が次々と逮捕・殺害されます。 
  当時、カヨータ氏は難を逃れるべくタイ東北部にある郷里の農村に帰り、ここで養豚と米作りを中心とする循環型農業を始めます。飼料を自ら作り、農業技術と経営を村人に教え、数十戸の小規模農家で地産地消を柱にした地域経済の自立を試みます。 
また農産物価格低下やダム・道路などの開発などで生存の危機に見舞われ、ことに立ち上がっていた農民の運動を結集して首都バンコクに向けてのデモ行進を繰り返し、政府への抗議と要求の運動を作り上げるなどの活動を行い、タイにおける農民運動のリーダーになりました。当時、暗殺者に狙われ、防弾チョッキを常用していたときもあります。 
 
  現在、カヨータ氏が相談役をつとめる「貧民連合」は農家ばかりでなく、都市労働者らも加わり、タイ全土で100以上の組織を束ねています。カヨータ氏は体を張ってタイの貧民とともに生きてきた団塊世代の人間です。 
 
★「エコ・フェミニズム」のヴァンダナ・シヴァさん 
 
  インドから来日するヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva 1952- )さんはカナダの大学でクオンタム理論を研究し、博士号を取った女性物理学者です。森林保全に取り組み、自然の大切さと豊かさを教えてくれた両親の影響で、帰国後、森林伐採に抵抗するChipko 運動に参加します。伐採される木々を両手で抱き人垣を作って守るのです。担い手の多くは女性でした。 
 
  82年には独自の研究施設を作り、自然保全と農村コミュニティを発展させるため地域も巻き込んだ総合的な研究を行います。また自ら有機農業や産直も実践しました。 
 
  しかし、シヴァさんはグローバル経済で生まれた農村の不幸を目にします。農薬、化学肥料、遺伝子組み換え作物の投入で生態系が壊れ、生物多様性が失われていました。病害虫が広がり、また収益を上回る過剰な農業投資で借金漬けになった農民の自殺も増えていました。特に「緑の革命」の中心となったパンジャブ地方で疲弊が著しかったと言います。 
  そこでシヴァさんはNavdanya運動を始めます。生物多様性の保全と農民の権利の保護に焦点を当てました。Navdanyaとはインドを象徴する9種の作物です。シヴァさんは多くの種子を貯蔵し、種子が絶滅しないよう保全管理体制を作ります。農民への教育も行いました。 
 
  シヴァさんはグローバル化した農業で一番被害を受けたのは女性だと言います。胎児が女性の場合は堕胎されるケースが増え、女性の比率も年々低下していました。 
 
「地球や女性を重視する農業に替えればもっと生産性が上がります。工業化した農業では300単位の投入に対して、生産は100単位ですが、女性が参加する循環型農業なら5単位の投入で100単位の生産が可能です」 
 
  今、日本の食品産業は工業化した農業を大々的にPRしていますが、一方、こうしたシヴァさんの考え方のベースをもっと知りたいと考える人も少なくないと思います。 
(★シヴァさんの紹介は国連とBBCワールドサービス基金のサイトを参照しました) 
 
  そのほか、マイクロクレジットで活躍する「韓国社会連帯銀行」のパク・ムンボン本部長、イタリアからはフェアトレードのパイオニア、ルディ・ダルバイ氏(CTM Altromercato)、連帯経済の生まれたブラジルからはダニエル・テイゲル氏(ブラジル連帯経済フォーラム事務局長)らが来日します。日本からも多くの実践者と研究者が参加します。 
 
プログラムやスケジュールなど、詳しくはアジア連帯経済フォーラムのサイト 
 
http://solidarityeconomy.web.fc2.com/ 
 
を見てください。有機農業を行っている霜里農場などを訪ねるオプショナルツアーもあります。 


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