2009年11月12日12時14分掲載  無料記事
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グローバル経済を見つめる女性の視点に注目  アジア連帯経済フォーラム2009に参加して

  4日間に渡ったアジア連帯経済フォーラム2009が閉幕した。記者は国連大学と青山学院大学で行われた前半2日間の会議に出ただけだが、いくつか心に残ったことを記したい。(村上良太) 
 
  初日のセッション1でケベックから来日したビンセント・ダゲナイス(Vincent Dagenais)氏が「連帯経済とは人を排除しない経済だ」と語った。グローバル経済は排除される人々を世界中に生み出した。グローバル経済がなぜ人を排除するか、と言えば、弱い立場の人々が「グローバルな」基準を一方的に押し付けられるからに他ならない。それは「ともに参加するという人間の尊厳を奪う」。そこで多様性を生み出し、この排除の論理に対抗する。ダゲナイスさんはこう語った。現在、ケベック大学で労使関係を教えているダゲナイスさんは長い間、労働組合活動に携わったという。 
 
  記者の属するテレビ業界でも排除は年々進んでいる。個々の発想を重視する方向でなく、基準が一方的に押し付けられ、多様性は日々失われているのだ。そして基準にさからう人間は排除される。この問題は認識され始めた段階にすぎず、解決のめども立っていない。放送される番組の大半を制作している日本のプロダクション数百社の中に労働組合のある企業はほとんどない。何らかの理由で一度会社を飛び出してしまえば永久に外部の人間になってしまう。世界の出来事を報じる立場の人間自らが排除されてしまうのだ。 
 
  タイで地域主体の有機農業に取り組んでいる「貧民連合」のバムルン・カヨタ(Bamrung Kayotha)氏や、イタリアでフェアトレードに早くから取り組んできたCTM-Altromercatoのルディ・ダルバイ(Rudi Dalvai)氏らの話を聞き、これが業界や国を越える普遍的なテーマであることがよくわかった。世界中の人間が自分の足元から連帯経済を考えなくてはならないと感じさせられた。このフォーラムの意義は様々な世界の人間が共通のテーマに取り組んでいることに気付くことができることだろう。 
 
  もう1点、印象深かったことがある。それはグローバル経済を見つめる女性の視点だ。 
 
  大和総研・経営戦略研究部長の河口真理子氏は金融機関など既存の組織でも連帯経済の試みはすでに行われており、これらを活用していくことも大切だという。さらに生命保険会社などの金融機関に預けた自分のマネーがどこにどんな形で投資されているかチェックすることが大切だという。環境に悪い製品を作っているメーカーや軍需産業に自分の預けたマネーが投資されている可能性もあるからだ。株主総会など、企業と話し合いのできる場に積極的に参加して、社会の中核をになう企業を市民がコントロールする必要があるという。 
 
  フェアトレードでは珍しい、ファッション製品を製作販売しているピープル・ツリーの小野倫子氏は今日本で話題になっている格安衣料品がどこで誰によってどんな条件で作られているか、消費者にメーカー宛てに問い合わせてもらうキャンペーンを行ったという。 
 
  ある衣料メーカー向け製品を作っているバングラディシュの工場では労働者が鍵をかけられて監禁され、残業代もなく1日16時間近く働かされていた。また2005年にはやはりバングラディシュで地盤の悪い土地に建てられたビルが崩壊し、労働者約200人が生き埋めになる事件も起きたという。デフレ化で中国からさらに労賃の安い国々へ工場が移転していることが背景にある。フェアトレードはモノを作って売るだけでなく、消費者運動でもある。 
  こうした女性の視点が連帯経済の思想を生み出す核になっていることがわかった。 


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