2009年12月01日18時08分掲載
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文化
国際有機農業映画祭(上)農業も映像も手づくりの世界 李憲彦
国際有機農業映画祭と銘打った催しが11月27、28両日、東京都内で開かれた。この映画祭はすでに3回を数える。今回の映画祭のテーマは「大切にしたいくらし」。農、食、自然、環境、そしてそれらを壊すもの、そんな映像が一挙に十数本上映され、700人は入る会場は、若い世代を中心とする観客で埋まった。そんな映画祭の模様をドキュメンタリーディレクター、映像作家、そして主催者側から、映画祭実行委員会代表の大野和興が紹介する。(日刊べリタ編集部)
私はテレビでドキュメンタリー番組を作っているが、農業をテーマ
にした企画はなかなか通らない。それは画が単調地味。取材企画が長く労力が大きいといった理由が考えられる。国際有機農業映画祭「大切にしたいくらし」が、11月27日 (金)28日(土)の二日間東京で開催された。揃えられた作品は、時間をかけて、少人数で制作したものが多い。有機農業の多くが個人個人の汗で成り立っているように、制作者の 息づかいが感じられる様な映画祭だった。
ラオスやタイの農業状況の報告もあり、特に考えさせられたのは、 農業を自由経済にゆだねることの是非だ。『コメこそアジアのいのち』原題:"Rice; The Life of Asia"2007年/マレーシア/52分は、アジア各国の米に根付いた様々な文化を紹介して行き、後半、そのような文化がWTOのもとで危機に瀕している事を知らせるものだ。
最初、無料で収穫高の多い配布するというふれこみで種子を配り、農薬とセットにして売り込む。農民は後になって、その種子が一年限りもので、毎年新たに種子を 買わなければならない事を知る。伝統農業はこうして多国籍企業に蝕まれていった。
『キング・コーン 〜世界を作る魔法の一粒〜』原題:"King
Corn"2007年/アメリカ/90分も、農家が効率を追い求め、牛の飼料がほとんどコーンになってい る事を知らせていた。運動させずに栄養価の高いコーンで育てた食 牛は脂肪分が多くハンバーガーに適しているそうだ。ハンバーガーの肉を「われわれは肉を食べているのではなく脂肪を食べている」とコメントしていたのが印象に残った。
我々の食文化は、今や経済効率が方向付けてしまっている。関係者や一定の人には既知のこうした実情も、一般的にそれほど知られていない理由は、報道機関や国の政策が基本的に大企業よりだからだろう。食料品を扱う多国籍企業は、どこの国でも大スポンサーなのだ。
それ故、農業というテーマは、こうした映画祭という形で取り上げ られることになる。来年も開催される国際有機農業映画祭が、よい作品が集まり、さら に盛大に開催されることを願うと同時に、マスコミは、もっと活発にこの問題を取り上げなけれ ばならないと、自戒を込めて感じた。
(ドキュメンタリーディレクター)
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