2009年12月19日21時28分掲載  無料記事
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ロシアン・カクテル

(13)サンタクロースはロシアに来ない?<下> タチヤーナ・スニトコ

  “霜お爺さんモローズ”と孫娘である“雪娘”は、正月に新年の祝いに来ます。その祝いは「新年のモミの木の祝い」と言います。霜お爺さんと雪娘は子供たちに謎をかけ、モミの木の周りで輪踊りを踊ります。子供たちは森の動物に扮した仮想舞踏会やロシアの昔話の主人公の衣装を着て歌を歌ったり踊りを踊ったりします。その中でも「雪片の踊り」はとても人気があります。大概のロシアの女性は子供の頃「雪片の踊り」を踊ったことを思い出すことができます。 
 
 “霜お爺さんモローズ”はプレゼントをモミの木の下に置きます。ブーツやストッキングはだめです!靴かソックスでなければいけません!“霜お爺さんモローズ”は体が大き過ぎて煙突から入れないのです。それに、ロシアでは暖炉は使わないのです。 
 
 ところで、モミの木はゲルマン民族やスラブ民族では火の象徴であり、火は時の流れを表わしていました。昔の意味は、英語の「fir-tree」です。「fire-tree」というのは、「火の木」を意味します。モミの木の飾りにも意味があるのです。それは「火の木」に住んでいる魂に贈り物をするという意味なのです。 
 
 冬休みには、子供たちはいくつかの「新年のモミの木の祝い」に参加します。その場所は、幼稚園や学校や両親が働く会社や知り合いの家などです。学校に行くと、子供たちはみんないくつ「モミの木の祝い」に参加したか、プレゼントはどこが一番良かったか、どこの雪娘が一番きれいだったかなどお互いに話し合います。 
 
 「新年のモミの木の祝い」は娯楽産業になりました。「“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”の学校」があります。そこでは、二ヶ月ほど“霜お爺さんたち”や“雪娘たち”は、俳優の技術や子供心理学や踊りや子供たちからの難しい質問に対する答え方などを学びます。 
 
 たいていの場合、“霜お爺さんモローズ”や“雪娘”はアルバイトの学生たちです。そのアルバイトはとても楽しいので、「“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”の学校」に入るのにも、時々採用試験があります! 
 
 新年の夜には、多くの両親は子供たちを喜ばせるために“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”を家に招待します。(「“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”の学校」に予約します)。しばしば、“霜お爺さん”と“雪娘”は10軒もの家庭を訪問しなければなりません。訪問したどの家庭でも両親が“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”と一緒に新年のお祝いの乾杯をすることを望むので、往々にしてシャンペーンを飲み過ぎないようにしたり、詩や歌を忘れないようにすることがとても難しくなることがあります。この時期には、“霜お爺さんモローズ”と“雪娘”が家々を回るために市内中を急いで回っている姿をよく見かけます。 
 
 しかし、”霜お爺さんモローズ”の側にはひとつ問題が残されているのです。現代のロシア人から見て、”霜お爺さんモローズ”に対する見方というのは一様ではないのです。“霜お爺さんモローズ”というのは偶像崇拝の宗教神なのです。これには一神教のキリスト教徒の観点からは、相容れないことになってしまうのです。 
 しかし、一方では、“霜お爺さんモローズ”というのは昔からのロシアの大切な伝統文化に属するものなのです。それで、“霜お爺さんモローズ”の官邸のあるヴェリキイ・ウスチェグ市の所在するボログダ地方の主教は良い解決策を思いつきました。我らが“霜お爺さんモローズ”がキリスト教の洗礼をうけるならば、大いに歓迎しましょうというわけなのです。 
 
 それでは、皆様、一足早く、「もうすぐ新年、おめでとうございます!」 
(つづく) 


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