2009年12月25日13時34分掲載
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反貧困
東京都の公設派遣村で石原都知事に緊急要望 受け入れ要件を緩和し、年末年始も相談窓口を
東京都は公設の年越し派遣村を開設することを発表したが、受け入れ要件が複雑、などさまざまな難点がることから、昨年派遣村を開設した反貧困ネットなどを軸に作られている「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」は24日、石原都知事に対し、広報の徹底や受け入れ条件の緩和、年末年始も相談窓口を開いて欲しいなどの緊急要望を出した。(日刊ベリタ編集部)
東京都の対応は国の要請を受けて打ち出されたもので、渋谷区にあるオリンピック青少年総合センターの宿泊施設を開放するというもの。住まいに困り、都内のネットカフェなどで寝泊りしていて、求職活動をしている人が対象となる。
手続きは、まず都内のハローワークで求職登録をしていなければならない。その上で福祉事務所などで配布する受付票に生活実態などを記入し、電話で相談の予約をとる。受付は土日と祭日を除く28日まで。宿泊は28日から1月4日までで、食事が出る。
緊急要望は以下の通り。
2009年12月24日
東京都知事
石原 慎太郎 殿
年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会
TEL:080-3432-9023 Email:hakenmura@mail.goo.ne.jp
年末年始の生活総合相談に関する緊急要望
−情報発信と要件緩和ですべての住居喪失者が救済される制度に−
12月21日、貴職は「年末年始の生活総合相談」体制について発表され、12月22日には国から追加的な情報発表がありました。
不況が長期化し、派遣切りや解雇等にあった労働者、国民の生活はいっそう厳しさを増しており、住まいを失う生活困窮者が後を絶ちません。こうしたもとで、貴職が年末年始の生活総合相談にとりくまれることに対して、昨年末からの「年越し派遣村」にたずさわり、今また、「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」を立ちあげた我々としても、大いに歓迎するものです。
しかしながら、これまでに発表されている情報をみるに、なお不十分な点があり、「このままでは情報が行き渡らないのではないか」「救済から漏れる大量の住居喪失者が生じるのではないか」との不安がぬぐえません。
よって、「年越し派遣村を繰り返さない」という決意を具体化するという見地から、下記のとおり緊急に改善要望を提出し、その実現を求めるものです。なお、我々も本件とりくみによって一人でも多くの生活困窮者が救済されるよう、情報発信等を検討しております。ついては、本要望に対する回答を明日12月25日18時までにお願いします。派遣切り等によって住まいを失うなど苦しんでいる方々へのクリスマス・プレゼントを期待しております。
記
1.住まいを失った生活困窮者への情報発信活動を特段に強めていただくこと
情報が広範に伝わることが重要です。そのため、駅やネットカフェ、コンビニ、公園などへの大判ポスターの掲示、駅頭や炊き出し会場でのチラシ配布、巡回相談などでの周知、夜回り、住居喪失者等による特別宣伝アルバイトの緊急配置など、情報発信活動を格段に強化してください。その際、「食事・宿泊の提供」がおこなわれることを大きく明示してください。
2.年末年始(12月28日午後〜1月4日朝)を通して、東京都独自の受け入れ・相談窓口を開設していただくこと
12月28日で終わりとせず、12月29日、30日には都内5ヶ所のハローワークでも受付表(宿泊券)等を配布されるようですが、それだけでは制度的に複雑(ハローワークから都の窓口への移送、求職登録の必要など)であり、広範な生活困窮者の受け入れという点では不十分です。都内の主要駅等の公共オープンスペースでの受け入れ窓口の設置や体育館などの公共施設等における相談窓口の開設など、相談者にとってわかりやすい場所での直接受け入れを東京都として実施してください。
3.現在確保されている宿泊施設の定員枠(500名)を超えても、受け入れをストップしないこと。そのため、宿泊施設の確保を強力にすすめていただくこと
炊き出しに並ぶ人数の急増や主要駅等が毎晩「派遣村」化している状況を考えれば、500名というキャパシティでは少なすぎます。宿泊希望者が500名を超えても必ず受け入れることを宣言し、ビジネスホテル等の緊急確保をおこなってください。
また、12月27日までに手続きをおこなった人々が12月28日まで路上生活を強いられることのないよう、ビジネスホテル等を確保してください。
4.受け入れ要件を緩和し、住まいを失った生活困窮者が最大限救済されるようにしていただくこと
「求職中」との言葉で、この1年余に派遣切り・解雇等にあった労働者等への限定が懸念されますが、過去の不況時に仕事を失い、年齢や障害などによって失業状態が長期化している人々も多数います。また、現在は病気やケガ等から直ちに就職活動ができない方々もいます。所持金が底をつきつつある人々の中には、日銭稼ぎが必要なことからハローワークには登録せず、条件が悪くても日雇等で働いている人もいます。手続きの簡素化という観点からも、また、年末年始の緊急対策という点からの、「求職中」=ハローワークへの登録などの要件は削除し、排除される住居喪失者が生じないようにしてください。
5.所持金が底をつきつつある住居喪失者については、生活保護制度での救済を原則として、年明け以降、居宅(アパート)への入居を強力に援助していただくこと
要保護状態等にある場合に、第2のセーフティネットなどの貸付制度によって新たな債務を背負わせることは適切ではありません。特に不況が深刻化し、仕事に就くことが困難化しているもとでは避けるべきです。住居喪失者には生活保護制度についてよく説明し、申請を助言、援助することを明確にしてください。また、確実に生活再建をおこなえるよう、居宅保護の原則に照らし、アパート等への入居を奨励、援助してください。
6.現時点で住居はあるものの所持金が底をつきつつある生活困窮者(要保護状態にある人々者)に対しても生活保護での救済を原則とし、年末年始の間は緊急対策としてに援助金の支給・貸し付けを実施していただくこと
住居は失っていないものの、所持金が底をつきつつあり、食事にも事欠き、家賃滞納や電気、ガスも停まっているなどライフラインを失っている生活困窮者の例が多数報告されています。そうした生活困窮者(要保護状態にある人々)への年末年始の援助もあわせて実施し、住居喪失に至らない援助を実施してください。
7.年末年始の相談を利用した者に対する年明け(1月4日)以降に充実した支援をおこなうとともに、現時点の計画を明らかにしていただくこと
8.宿泊施設内においては、弁護士による法律相談や医療スタッフによる医療・精神相談の体制を整備いただくこと、あわせて、我々ワンストップの会を窓口として、住居喪失者の支援にとりくんできた民間団体の支援を受け入れていただくこと
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