2010年01月07日14時07分掲載  無料記事
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イスラエル/パレスチナ

ガザ住民虐殺につながるエジプトの壁建設を止めさせよう  各地で抗議の動きが広がる

  ガザの地下トンネルにおける密輸の防止と国境の管理権を口実に、エジプトがガザとの境界に遮断壁の建設を開始、内外のさまざまなグループから批判と抗議が出ている。日本では「ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉」が駐日エジプト大使に対し要請書を準備、日本の市民に賛同を呼びかけている。(日刊ベリタ編集部) 
 
  ミーダーンは、「イスラエルによるガザ侵攻から一年を迎えた2009年12月、新たなガザ民衆虐殺作戦とも呼ぶべき動きが、今度はエジプトの側から進められていることを知り、私たちは大きな衝撃を受けています」とこの動きをとらえている。そして、「在英アラブ人権組織(Arab Organisation for Human Rights in UK)」が2009年12月21日に発表したレポートをもとに、エジプトが建設に入っている壁について、次のように報じている。 
 
「壁は厚さ50センチ、高さ18メートルの鋼鉄の板で出来ており、ガザ地区とシナイ半島の軍事境界線となっている「フィラデルフィア・ロード(アラビア語の呼称はサラーフ=ッディーン)」に沿って、地下20〜30mの深さまで埋め込まれます。全長10キロに及ぶ計画のうち、5.4キロの区間について、すでに工事が着工されました。同報告によれば、この壁はアメリカ製であり、建設工事は米軍とフランス軍将兵の完全な監視のもとで進められているとのことです」 
 
  この壁が完成すれば、これまでトンネルを経由した物資の搬入により、かろうじて生き延びてきたガザの人びとの状況は、絶望的なものとなる。ガザではこの壁の建設に対する連日の抗議デモが行われている。同時に12月23日付「アル=ジャジーラ」によると、人びとはなけなしの現金をかき集め、今のうちに何とか生活必要物資を手に入れておこうとしている。 
 
  アラブ系の人権組織やイスラーム団体などからこの壁建設に対する抗議の声明が出され、各国のエジプト大使館前で抗議や請願の運動が始まっている。イスラエルによる占領に反対し、パレスチナに正義と公正を求める立場から活動を続けてきた私たち「ミーダーン<パレスチナ・対話のための広場>」は、駐日エジプト大使に対する以下の要請書の送付を準備しています。 
 
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駐日エジプト大使 
ワリード・マフムード・アブドゥンナーセル様 
 
  私たち日本の市民は、このたびのエジプトによるガザ境界上での遮断壁建設のニュースにたいへん驚き、衝撃を受けています。この壁が完成すれば、二年半の完全封鎖のあいだ、地下トンネルによる物資の搬入によってかろうじて生き延びてきたガザ住民の生活が、決定的に危機的な状況に陥ることは明らかです。 
 
  壁の建設について当初否定していた貴国政府はついにそれを認め、それが国民に対する安全保障上の義務行使であり、トンネルを通じた麻薬や武器の密輸を防ぐ目的をもっていると述べています。しかしそのために貴国政府は、150万人のガザ住民を絶滅の危機にさらすことが正当であるというのでしょうか? 
 
  しかも、貴国が口実にしている地下トンネルは、ハマース政権の誕生後、貴国がガザとの境界を封鎖するという不法行為を続けてきた結果として、ガザ住民にとってはほかに選択の余地がないなかで生まれた手段でした。 
 
  確かに国際法は、国境の内側にある領土に対していかなる改変を行なっても、それは主権国家の権利であるとしています。しかしそれは、隣接する国家や地域に対する不法行為の行使が伴ってはならないという条件においてです。イスラエルに占領され、南と東をイスラエルに囲まれ、北側は地中海に面しているという地理的条件にあるガザにとって、唯一の出口である貴国との境界に鋼鉄の遮断壁を埋め込まれることが不法行為でなくて何でしょうか。仮にトンネルの問題を抜きにしても、長年の占領に苦しめられ、一年前のイスラエルによる侵攻によって荒廃した生活を送るガザ住民を、政治的にも精神的にも完全に追い込んでしまう犯罪行為です。すでにガザ住民が壁建設に抗議し、即時中止を求めるデモを連日行っていることは、ご存じのとおりです。 
 
  貴国はこれまでにもガザを封鎖し、ガザ住民の生活を困難の極みに陥らせることにおいて、イスラエルと共犯関係にありました。それでもこれまで国際社会の非難がさほど貴国に向かわなかったのは、占領を行なっているのはイスラエルであり、イスラエルの占領こそが貴国の誤った政策を導いていると考えたからです。しかし、貴国が壁建設を継続し、イスラエルとともに新たなガザ住民虐殺に手を貸すのなら、貴国はイスラエルと同じ罪を犯すことになります。 
 
  私たちは強く訴えます。エジプト政府は、ガザとの境界上での遮断壁の工事をただちに中止して下さい。そしてガザにおけるハマース政権誕生以来続けているガザの封鎖を一日でも早く解き、ガザ住民がエジプト国内と自由に往来ができるようにして下さい。イスラエルによるパレスチナ占領に加担しないでください。 
 
2010年1月5日 ミーダーン<パレスチナ・対話のための広場> 
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◎ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉の連絡先 
[メールアドレス]midan.filastine@gmail.com 
[URL]http://midan.exblog.jp/ 


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