2010年01月27日14時33分掲載
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留学生らの部屋探しを支援 門前払い阻止へ、FOLISが家賃の滞納保証
在日外国人の生活をサポートしているNPO法人「在日外国人情報センター」(東京都新宿区)と、在日中国人向けの新聞「東方時報」を発刊している東方インターナショナル(東京都豊島区)は昨年11月、合弁で「一般社団法人外国人生活サポート機構(FOLIS)」(東京都豊島区)を設立した。今年1月からは、外国人留学生や就学生向けに、家賃滞納保証事業をスタートさせている。“外国人”というだけで門前払いされることが多い外国人に対して、FOLISが家賃の滞納保証を行うことで、日本での部屋探しをサポートしようという取り組みだ。こうした取り組みを始めたキッカケや、最近の留学生の動向について、FOLISの理事である齋藤英樹さんと上原雅登さんにお話をうかがった。(和田秀子)
▽母語による生活サポートを行い、居住トラブルを防ぐ
「外国人の場合、入居先が決まるまでに一人当たり15件ほどの不動産会社をたらい回しにされます。だから彼らだって、やっと入居できた家を追い出されたくないんです。しかし、ゴミ出しの方法や生活習慣など、基本的な生活ルールを教えてくれる人がいないからトラブルになってしまう。事前にきちんとレクチャーすれば、ある程度防ぐことができるはず」
と語るのは、FOLISの理事の齋藤さんだ。
外国人を入居させる際に、不動産会社がもっとも心配するのは「家賃滞納・居住トラブル・生活マナー」の3点。
こうしたトラブルを回避するためFOLISでは、徹底した入居審査はもちろん、多言語による生活マナーの指導まで行う。
まず入居審査に際しては、ビザやパスポート、外国人登録証、在学証明書等による確認はもちろんのこと、本人と何度も面接を重ね、ときには出身国の両親や親族にまで連絡を取って調査するという徹底ぶりだ。
長年、外国人をサポートしてきた齋藤さんは、「ここ4〜5年で、来日する外国人の質にも変化が見られている」という。
以前は、留学と見せかけてデカセギにやってくる中国人が多かったが、ここ数年は中国人富裕層の子弟がメイン。いわゆる一人っ子政策のなかで大切に育てられた“お坊ちゃま、お嬢ちゃま”が多いため、以前のような家賃滞納のリスクも軽減されてきているそうだ。
審査に通った留学生らは、あらかじめ家賃1ヶ月分の40〜60%を初回保証委託料としてFOLISに支払い、入居の運びとなる。
入居前には、母語による生活マナーのレクチャーを実施し、入居後も継続してメールによる生活サポートを行う。入居者は、1年ごとに追加委託料としてFOLISに支払い、万が一家賃を滞納した場合には、一年間に限り保証を受けられるという流れだ。
本格的な始動はこれからだが、すでに不動産会社1社との提携が決まっており、「留学生に家を貸したい」という大家さんや管理会社からの問いあわせも一日4〜5件ほど寄せられているという。
「東京都内の賃貸アパートは、3割ほど空きがある状態。滞納保証と生活マナーの指導をしてくれるなら『外国人を入居させてもいい』と考える家主が増えてきているのでは」と齋藤さんは分析する。
▽急増するアジアからの留学生、しかし…
ここ数年、日本への留学生は急増している。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調べによると、平成20年度の留学生受け入れ状況は123、829人で、平成10年度の51,298人と比べると2倍以上の増加率となった。
内訳としては、1位:中国(58.8%)2位:韓国(14.6%)3位:台湾(4.1%)と、近隣のアジア諸国だけで全体の78.1%を占めており、とくに中国からの留学生がグンを抜いて多い。
こうしたデータを見る限り、アジア圏の学生たちにとって、日本はまだまだ“憧れの国”なのだろうと推測される。
しかし、FOLISの理事で不動産部門の責任者を務める上原さんは、このところ中国や韓国の留学生から「日本の大学はレベルが低い」という話しを耳にする、と懸念を示す。
授業中におしゃべりばかりした挙げ句、教授に注意されると『うるさい!』と逆ギレする学生がいたり、英語の資料を配付されてもまったく読めない学生がほとんどだったり…。そんな日本人学生の現状を見て、留学生たちは少なからずショックを受けているのだ。
以前、上原氏から住宅の紹介を受けた韓国人留学生のユン君(多摩美術大学2年生)は、次のように話す。
「日本のトップクラスの大学に留学している学生たちは、教育レベルの高さと学生たちの勤勉さに大変刺激を受けています。しかし、中堅クラス以下の大学に進学した留学生たちからは、失望の声を聞くことが多い。なかには耐えられなくなって、アメリカやイギリスの大学へ移る学生もいるようですから」
▽優秀な人材を集めるために必要なこととは?
さらに、「日本の住宅事情の悪さも、留学生を失望させる要因のひとつだ」とユン君は続ける。すでに述べたように、外国人の入居を拒む不動産会社が多いため、結果的に外国人が居住できるエリアは限られてしまう。そのため、窓もない3畳一間のアパートで暮らしている留学生も多いのだという。それでも都心だと、家賃3万円をくだらない。
本国からエージェントを通して入居先を決めてきた学生のなかには、実物を見るなり「こんな家には住めない!」と言って、泣きながら上原さんに助けを求めてくる者もいるという。
「先進諸国は優秀な学生を自国に呼び込もうと必死になっています。しかし日本は、教育の中身はもちろん、学生寮などのハード面での整備もまだまだ…。このままでは、あと数年も経たないうちに、日本は留学生から見向きもされない国になってしまうのではないか」と上原さんは不安を述べる。
福田政権時に「留学生30万人計画」を掲げたものの、その後政権が代わり、宙に浮いたまま。留学生たちの就職支援も進んでいない。
「世界的不況なのだから仕方がない」といった声も聞かれるが、優れた人材が集まらない国に将来はない。
「外国人は入ってくるな!」と拳を振り上げるまでもなく、誰も寄りつかない国になるのは時間の問題ではないか。
本当に、それでいいのか──。自問自答させられる取材となった。
*一般社団法人外国人生活サポート機構 http://gaikokujin.or.jp
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