2010年01月31日12時26分掲載
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ロシアン・カクテル
(17)“スヴャーテキ”の年占い<下> 夢、薪、鏡、ロウ、ゴキブリ…多彩な方法で タチヤーナ・スニトコ
占いの方法は沢山ありました。多いのは「夢占い」でした。いろいろな音や言葉が占いの対象になりました。例えば、田舎に住んでいる若い女性は犬の吠え声により占いました。夜中に家から出て包丁で雪を切りながら呪文を唱えるのでした。「鬼よ、鬼よ、私の将来の夫はどんな人でしょう?私は喜ぶでしょうかそれとも泣くのでしょうか?」
その後で、犬の吠え声を耳をすまして聞きました。うす気味の悪い断続的な犬の吠え声は厳しくてむっつりした夫を意味しました。犬の吠える声が明るく陽気なものであれば、将来の夫はやさしい人という意味でした。一番良くないのは唸り声を聞くことでした。それは結婚生活は長く続かなくて未亡人になってしまうという意味でした。
別の占い方法として、田舎でよくなされていた占い方法は、パイを作って、そのパイを持って他人の家へ行き、その家の中の会話を聞くことでした。最初に聞いた名前が自分の将来の夫の名前でした。「行く」という言葉を聞けば、それはその年に結婚することになる。「座る」という言葉を聞けばそれはその年に結婚することはない。「横になる」という言葉を聞くことは病気になるということを意味しました。
さて、一番人気がある占いは旧正月の前夜にみる「夢占い」でした。その夜にみる夢は正夢になると言われていました。その占いの方法は様々でした。一番よく知られている占いは「橋」と「井戸」という占いでした。寝る前に枕の下にマッチ棒で「橋」か「井戸」を作って置き、寝る前に将来の婚約者にお願いし唱えるのです。「私が橋を渡るのを手伝ってください!」とか「私に水を下さい!」と。そうすると、夢の中で将来の夫となる人を見ることができるのです。
又、夢占いの別の方法の一つは、寝る前に少し塩分のある食べ物を食べて将来の夫となる人に水をお願いしますと頼んでから寝るのです。
また、これは夢占いではないのですが、別のユニークな方法は「薪一本占い」といわれる方法です。真っ暗な薪小屋に入って行き、手探りで無差別に薪一本を手に取るのです。それから、外へ出てその一本の薪を注意して観察するのです。
<「薪占い」の結果>
平らで皮は薄い …将来夫となる人は 若くてイケメン
厚くてざらざらしている …将来夫となる人は 変人
皮がはがれているか皮がない …将来夫となる人はお金がない
薪が割れている …将来夫となる人は 老人
薪が大きい …将来夫となる人は 健康で意志堅固
又、別のユニークな占いにはとてもエキゾチックなものもありました。例えば、若い女性が将来の自分の夫となる人を占うために、真夜中に「バーニャ」(ロシア式蒸風呂)へ行くのでした。「バーニャ」には「«банник»バーンニク」(バーニャの神)が住むと信じられているのです。通常は、夜中に「バーニャ」に入ることはありませんでした。夜中には「バーンニク」か「鬼」が「バーニャ」を使うと信じられていました。
そのために、「バーンニク」と「鬼」のためにいつも少量の水と小さな石鹸を用意してありました。しかし、「バーンニク」と「鬼」が住むところなので占いをするのは良いところだと考えられていました。
まず、「バーニャ」の戸を開けます。スカートをたくし上げて、裸のお尻を「バーニャ」に入れます。もし、「バーンニク」がお尻をそっと触ったと感じると将来の夫は心の優しい人でお金持ちの人であるということになるのです。もし、「バーンニク」の手ガ触ってお尻がその手を冷たく感じ又「バーンニク」の爪を感じると将来の夫は厳しい人かまたは結婚しないということになるのです。
一番信頼性のある(その実、これが一番“危険”なのですが)占いの方法は「鏡占い」と信じられていました。鏡は人間世界と霊魂の世界の境界だと信じられていました。その占いの目的は、将来の夫となる人を占うことや遠く離なれたところにいる人や死者の消息について知ることでした。昔は「鏡占い」は「バーニャ」で行いました。
「バーニャ」の中で、真夜中の12時に、一人髪をたらして洋服の結び目をほどき靴を脱ぐのでした。テーブルの上には二人分の食事のセット (皿2枚、スプーン2本、カップ2本)を置きました。それから、テーブルの上に鏡を置きました。その鏡の前に座り、鏡の左右の両側に2本のロウソクを置きました。それから、自分の後ろにも鏡を置きました。二つの鏡により多層の反射効果が作りだされるのでした。この多層反射の「回廊」は「死の回廊」と呼ばれました。
そして、この鏡に向かって呼びかけるのでした。「私の将来のダンナさま!来てください。一緒に夕食を食べましょう!」と。そう言いながら、鏡の中の「回廊」を覗き込むのです。鏡が正しい位置に置かれていれば、その人は鏡の奥からやってくるのです。この「鏡占い」をやって意識を失ってしまった人は少なくありませんでした。
それから、「溶かしたロウによる占い」もありました。これは、昔も今もあります。ロウソクを溶かして、水か牛乳の中に垂らすのです。
<固まったロウの模様による占いの結果>
家の形 …引っ越し又は結婚をする
がれきの山(形がない) …不運・災難・失敗がある
穴・洞窟・岩屋の形 …つらい病気・葬式がある
枝が上に向く木の形 …喜びがある
枝が下に向く木の形 …退屈、憂鬱である
指輪・ロウソクの形 …結婚する
沈んだパンケーキの形 …長い独身状態が続く
十字の形 …病気か不愉快なことがある
開いた花の形 …結婚する
動物の形 …悪意ある人が近くにいる
小さい星が沢山ある形 …出世する
線の形 …出張・引っ越し・旅行がある
人の姿の形 …新しい友達ができる
又、ある占いは人気のある遊びです。「胡桃の舟占い」です。胡桃の半分の殻を使います。この半分の殻を舟に見立てます。たらいのような水の容器に水を入れます。くるみの舟に小さなロウソクを乗せます。水の容器の縁に占いの紙(紙に“宝くじがあたります”とか“新しい出会いがよい結果を生みます”とか“上流の生活ができます”とか“服を新調することができます”などが紙に書いてあります)を貼り付けます。そして占いをする人の順番を決めます。それから、くるみの舟の中のロウソクに火をつけて、水の容器の中心にそっと置きます。すると、舟は容器の縁の方へ動いていき紙に近づいていきます。どれかの紙に火をつくと、その紙に書いてあることがその人に将来本当のことになるという占いなのです。
「影占い」というのもあります。旧正月の夜(1月13日)は「影占い」をします。紙(新聞でもよい)をしわくちゃにして皿の中に置きます。その隣にロウソクを置きます。紙に火を付けて、壁に映った影を見て占います。
田舎には「鶏占い」というのもあります。真夜中の12時に鶏を家に持ってきて、床の上に米を撒(ま)きます。鶏は一生懸命米をつっついて食べるとラッキーな一年になると信じられています。
また、同じように田舎では「“おんどり”と“めんどり”による占い」というのもあります。まず、“めんどり”を家に持ってきます。それから、部屋の床の上に米、カップ入れた水、鏡を置きます。そして次に、“おんどり”を家に持って来きます。もし“おんどり”が米をつっついて食べるならば将来の夫となる人は働き者です。もし“おんどり”が鏡の方へ行くならば将来の夫となる人は夫自身だけが好きな人だということです。もし“めんどり”の方へ行くならば将来の夫となる人は妻を良く愛し世話をしてくれる人です。夫と妻のどっちが家族の中のリーダーになるのか知るためには、“おんどり”と“めんどり”の尻尾をひもで結び、引っ張りっこをさせます。勝った方が家のリーダーになるという占いです。
ソビエトの時代に新しい占いが生まれました。「シャンパン占い」です。新暦正月にも、旧正月にもシャンパンを飲みます。真夜中の12時前に小さい紙片に自分の望みを書きます。時計が新しい年を打ち始めたら、紙片に火をつけます。燃えて残った灰をシャンパンに入れて飲みます。もし紙が全部燃えてなければ、全ての望みは実現しないということになります。それから、紙ではなくてチョコレートで占う方法もあります。グラスに入ったシャンパンにチョコレートを入れます。チョコレートが沈まなければ良い年になります。
「モミの木占い」も新しいものです。夜中にモミの木のまわりに12枚の紙を置きます。一枚の紙は一ヶ月を表し12枚で1年ということになります。朝になって、一番多くモミの木の葉っぱ(針)が落ちていた紙が一番ラッキーな月ということになります。この占いを旧正月(1月13日)にすると、良い年になることは間違いありません。
占いを信じている人たちはよく占いをすると思われています。それ故、ロシアでは占いを信じている人たちの間で占いが人気があります。変な話なのですが、占いを信じない人たちは、新しい占い方法を創り出すのです。一つの例を挙げましょう。
ゴキブリを捕まえてよく観察してみてください。ゴキブリが足を動かしていれば忙しい年になります。触角を動かしていれば生活に変化があります。触角が動いていなければ安定した生活が続きます。足をすぼめていれば旅行にでると問題が発生します。又、ゴキブリを解放してみて下さい。左に向かって逃げれば恋愛は成就します。右に向かって逃げればあなたには損が発生します。(お金を損するという意味です)ゴキブリが逃げないならばあなたには敵がいません。
あなたは占いを信じますか信じませんか? 占いについてのこのテキストをあなたが読み終われば、今年はあなたにとってとてもラッキーな年になると占いには出ていますよ。
(つづく)
*写真:
ロウ占い
http://www.tula.rodgor.ru/news/t_gorod_oblast/13842/
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