2010年02月17日14時38分掲載
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検証・メディア
GoogleがついにNSAと情報共有へーー多国籍資本は世界中の諜報機関と手を握るようになるのか? 小倉利丸
今月初めにワシントンポストが報じたことで発覚したのだが、中国googleがハッカー攻撃を受けたことをきっかけに、google側が米国の国家安全保障局(NSA)にたいしてネットワークのセキュリティ協力を働きかけ、googleが保有する情報を共有することについて両者の間で話し合いが進んでいる。google側は、ユーザのプライバシー規則や米国の法に触れない範囲で、重要な情報を共有することを目指していると報じられているが、プライバシー情報の収集を目的としている諜報機関に対して、このような態度は言い訳のようにしか聞こえない。
世界最大の情報検索とウエッブベースでのメール、オフィススウィート、ウエッブ分析まで多様なサービスを提供するgoogleと世界最大の諜報機関が手を結ぶという今回の決定は、ネットの国家監視を世界規模で大きく促す重大な危険性がある。このため、米国内からも危惧の声が上がっており、米国自由人権協会は、googleの経営者に対して、NSAとの情報共有をやめるようにキャンペーンを開始し、電子プライバシー情報センター(EPIC)も議会の外交委員会への働きかけ
を開始した。
きっかけは、中国googleへのネットでも攻撃にあるようだが、NSAは米国企業のネット安全保障を国家安全保障問題として、「テロとの戦争」の当初から強い関心を抱いてきた。米国は、経済問題を国家安全保障の枠組みで位置づけるから、当然の発想ではある。しかし、googleは世界規模でアカウントユーザを持ち、膨大なメールを蓄積し、さらに世界中のウエッブサイトを監視し解析できるだけの技術力を持つ。
いいかえれば、NSAが持ち得ない個人レベルのユーザ情報を大量に保有しており、これがNSAにとっては大きな魅力なのではないか。他方で、googleはNSAが保有する「サイバーテロ」関連の情報が欲しいにちがいない。これらの情報の共有を非公式にではなく、公然と表明したのは、この協力関係がかなり大掛かりなものとなる可能性を示唆しているのではないだろうか。
いうまでもなく、このNSAとの協定は米国内だけの問題ではない。なぜなら、そもそもNSAが活動対象としているのが米国外での諜報活動、情報収集活動だからだ(愛国法など911以降の法改正で米国内での諜報活動が大幅に認められた)。中国政府による検索サイトへの検閲に googleは大きく反発したが、そのgoogleが米国政府の諜報機関に対しては重要な個人情報を提供する協力関係を結ぶわけで、結果として、ネット監視の動きは中国から米国へと拡がったことになる。
さきにブログに書いたように(監視社会の二つのモデル)、市民的自由は中国モデルでも米国モデルでも危機にあるのだ。こうした傾向は今後他の諸国に拡がる可能性があるのではないか。googleは、多国籍企業であり日本にも子会社があるのだが、googleがNSAにたいして行ったような協力関係を他の諸国の諜報機関と結ぶ可能性を否定できるだろうか?また、現在では、メールなどのプライバシー情報を提供しないとしているようだが、米国の国内法でテロ対策の必要があれば、こうした情報を提供している例がFBIですでに発覚している(FBIが違法に通信記録を取得)ように、今後さらに踏み込んだ情報の共有が起こる素地を作り出すのではないか。技術的にNSAとgoogleとの間で情報共有のプラットフォームが構築されるようなことになれば尚更こうした危惧は大きくなる。(no more capitalism より)
(ピープルズプラン研究所)
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