2010年04月13日07時21分掲載
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文化
パリの散歩道6 モンマルトルの丘に立ち 村上良太
何年か前からパリを訪れるとモンマルトルの同じホテルに投宿する習慣が続いています。同じフロントマン(ウーマンでもある)が立っており、掃除のおばさんにも見覚えがあります。
隣のカフェの主や近くの焼き栗屋台の夫婦にも見覚えがあります。
そんな風にパリは懐かしい町になりつつあります。
親しい知人も一人また一人と増え、彼らと食事などをする機会も生まれます。滞在期間には固定されたスケジュールやノルマはありません。
しかし、パリを訪れる観光客の多くは2〜3日滞在すると、次の目的地に向います。それはしばしばスペインであり、アムステルダムやロンドンでもあります。そのためエッフェル塔や美術館などの観光スポットを駆け足で回ることになります。そうした横移動型の旅もあれば、何もせずゆっくり滞在する保養地的な滞在もあります。
旅のスタイルが違えば同じ都市に滞在しても、見えるものはまったく違った世界です。
パリを旅した人は二手に分かれます。パリが好きになり是非もう一度行きたいという人たちと、あんな所は二度と行きたくないという人たちです。両方とも真実を語っているように思えます。
どんな町にも愉快なことはあり、同時に不愉快なこともあります。
そこに住む人々に対する思い出に関しても同様です。バブル時代に来日した外国人の友達の半分ほどは日本にはもう二度と来たくないという思いを持って帰って行きました。しかし、残りの半分は楽しい思い出を胸に刻んで帰って行きました。
町の普通の人々について知る事が増えるにつれ、彼らの持つ不安や苦しみも見えてきます。単なる花の都ではありません。パリを発つ前日、散歩道にあるモンマルトルの丘に上り、サクレクール寺院から見下ろすパリの写真を写しました。どんよりと暗鬱な雲が垂れ込めています。それは日本とも重なる何かを思わせます。
地球はキャパシティの限界に近づきつつあり、過去の大量消費型の文明も終焉を迎えつつあります。しかし、その次に何が来るのか、未だ見えていません。そうではあっても、今の時代をともに生きていく決意があれば何とかなると思っています。
心に少し余裕を持って散歩を続けたいと思っています。
村上良太
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