2010年04月17日10時39分掲載  無料記事
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エネルギー・物質多消費型の高度成長社会モデルの転換を  ODA見直しで国際協力NGOが政府に提言

  人道支援や持続的な社会づくりで活動している国際協力NGOのグループが外務省に、ODA(政府開発援助)のあり方のついて提言を行った。NGOと外務省の会談は13日に行われ、岡が外務大臣も出席、NGO側からは国際協力NGOセンター(JANIC)の大橋正明理事長やODA改革ネットワークの高橋清貴さんらが出席、経済成長モデルの限界を認識し、「 ODAは経済成長を前提としない社会を実現するために行う国際協力であることを明確にする」、など4項目にわたる提案を行った。(日刊ベリタ編集部)。 
 
  外務省はこれまで「ODAのあり方に関する検討」作業を省内で行ってきている。13日のNGOとの会談は、その中間報告を初めてNGO側に行い、意見交換として用意された。会談を終え、岡田大臣は「さらにNGOと議論を重ねたい」という意向を示した。外務省の最終報告今年6月に出される予定で、その中にNGOの提案がどれほど盛り込まれるか、NGO側は注目している。 
 
  ODA改革に関する国際協力NGOグループに提言は以下の通り。 
 
【ODA見直しに際する提案】 
ー意味ある「選択と集中」を具現化する改革に向けてー 
 
  「持続可能な世界」という国際社会共通の理念を実現するために、日本が果たす責任と役割の観点から、以下のような ODAの「目的の見直し」および「実施体制の改革」を提案する。 
 
1.ODAの目的の見直し 
従来の ODAが依拠するエネルギー・物質多消費型の高度成長社会モデルは、環境、水、土地、資源の制約から限界が明らかである。また、経済成長型開発は様々な副産物(貧富の格差、農村経済の破壊、公害の発生など)を生み出し、回復に高いコストが必要となっている。 
 
【提案】経済成長モデルの限界を認識し、 ODAは経済成長を前提としない社会を実現するために行う国際協力であることを明確にする。 
 
2.実施体制の改革 
国際協力省の設立を視野に入れ、透明性を確保し、国際協力に専心して取り組むことのできる体制を確立する。ODAの効果とプロセスを適宜、批判的観点から検証し、教訓の蓄積と普及を行い、効果的案件を選択し、実施できるようにする。そのために、以下の喫緊の課題への取り組みを含め、実施体制を抜本的に改革する。 
 
①独立した評価と公正な検証ができる体制の強化 
現在の審査/事前評価、事後評価は、批判的観点からの省察が不十分で、問題点が看過され、実質的に案件選択にフィードバックされていない。外部評価の機能強化が必要である。 
 
【提案】ODAに関する独立評価機関を設置する。 
 
②「教訓」と「原則」に基づいた効果的な案件の選択 
効果的な案件とは、現地住民のニーズに合ったものであることは当然として、環境や人権上のリスクが高く配慮が困難な案件や軍の関与がある案件は、日本および相手国住民双方にとって、財政的・社会的なコストとなる。貧困削減・環境・平和構築という ODAの重点課題はいずれも、事後的対応として行うのではなく、問題を未然に防ぐ予防原則の観点から取り組まれるべきである。 
 
【提案】事前に除外すべき ODA事業のカテゴリーを設定、運用する(例えば、軍事費が極端に多い国での事業、軍の関与がなければ実施困難な事業、熱帯モンスーンでの大貯水池事業等)。 
 
③開かれた ODAへの体質改善 
ODAを“市民”統制(シビリアン・コントロール)できる体制・環境を整える。厳しい経済状況下でも、地域の人々によるボランティア活動は活発で、協働・共助への意欲も高い。ODAへの厳しい世論は、ODAの意思決定や実施過程が不透明で、政府・政治への信頼感が低下しているためである。「失敗」や「負の側面」も踏まえた実績を正直に公開し、市民と共に ODAのあり方を考えていくことで 
ODAに対する理解と信頼を高める。ODAの「資源」とは資金や専門的技術だけではない。地域の人々の知恵と実践という「民主主義の資本」を活かすことが真に「公共」のための ODAとなる。 
 
【提案】市民参加の下での過去 ODAの検証、開かれた討議の場の確保、地域の取り組みの支援と事例からの学び、開発教育の拡充などを進める。 
 
 
 


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