2010年05月03日21時03分掲載
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ロシアン・カクテル
(23)ロシアに桜は?<下> 春の訪れは「香り」と「音」から タチヤーナ・スニトコ
第三のステップは4月7日(生神女福音祭)です。この日までには春は冬に対して勝利を確実なものにしています。灰色の冬空は明るい青空に取って代わっています。太陽の「冷たい」光線は暖かな光となっています。雪は溶け、結氷していた河にはもはや氷はありません。
ロシアの春の訪れは「春の香り」と「春の音」です。それは、「融雪の香り」・「白樺の芽の香り」・「雪ノ下の花の香り」・「雪解けの音」・「小川のせせらぎ」・「鳥の鳴き声」などです。もう一つの春の楽しみはネコヤナギやライラックの小枝を家に持ってきて芽がほころび始めるのは眺めることです。
街では「雪ノ下」の車が現れます。人々は小さな流れに紙の舟を流して遊びます。
ロシアの春の訪れは映画に喩えると白黒映画からカラー映画に変わるようなものです。暗い木々と白い雪の白と黒の世界から徐々に多彩な色彩の世界へと変化していくのです。
五月には果樹は花を咲かせます。ロシア南部の町々では果樹は通りに沿って植えられています。それで果樹の花の季節には、日本の桜並木のようになります。春は多くに人たちにとって「ダーチャ(дача)」(菜園付きロシア風郊外別宅)の季節の始まりです。毎週末、人々は、彼らの言う「新鮮な空気を吸いに行く」ために郊外のダーチャへ行きます。果樹の花の咲き誇る様はとても美しくて人々はそれを見て楽しみます。しかし一方、果樹が実をつけた時の収穫を期待して庭師の目つきでも眺めているのです。
半年も続く冬の長い田舎では人々は新しい生活の始まる春の訪れを首を長くして待っています。お祝いを首を長くして待つ時の気持ちは往々にしてお祝いそのものより強いものがあります。それで、ロシアではずっと春を待ち続ける長い期間のその気持ちそのものが春の祝いなのです。その感情は日本の花見の時期の日本人の感情に幾分似ているような気がします。
(つづく)
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