2010年06月24日11時48分掲載
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ロシアン・カクテル
(24)鳥文化の国<上> 白鳥は「ロシア美女」のシンボル タチヤーナ・スニトコ
ロシアの芸術について話す時は必ず白鳥がテーマとして話題に上ります。白鳥というと先ず最初に、バレーの白鳥「チャイコフスキーの“白鳥の湖”」や、名バレリーナ、アンナ・パヴロワが舞っていた「サンサーンスの“瀕死の白鳥”」が頭に浮かんできます。
スラブ文化というのは「鳥の文化」であると言えるのかもしれません。考古学者たちは黒海からバルト海にいたる広大な地域のいたるところで、白鳥の馬車を発掘しています。一例として、ポルタヴァ市の近くでは、大きさ2メートルの15羽の白鳥の絵が描かれた紀元前6世紀の儀式用焚火台が発掘されています。
スラブ民族は「空」・「土地」・「水」の三つの世界に住む水鳥を最も好みました。そして、神話的思考により音楽・詩・絵・おとぎ話などをつけ加えたのでした。ロシア芸術には「鳥のテーマ」が沢山あります。おとぎ話には、「鴈・白鳥」(гуси-лебеди)といった象徴的シンボルがよく登場します。「鴈・白鳥」は冬になると、「雪」になって登場し、春が来ると「雪」は「鴈・白鳥」に変わるのです。別の人気のある主題は白鳥になる美女「白鳥の王女」です。
白鳥は「ロシア美女」のシンボルです。田舎の人々の話す会話の中では、「白鳥」という言葉は「白い」とか「明るい」ということを意味します。昔は、色白の顔で頬の赤い、セーベル(黒貂、クロテン)のような黒い三日月形の眉毛の女性が美女だと考えられていました。そのため、女性たちは皆顔に白粉をつけ、頬に赤いビーツの根(ボルシチでお馴染みの西洋野菜)の液をつけて眉毛を炭で描いていたのです。
ロシア美女たちはバービー人形のようなほっそり瘠形ではなく、背が高くて長い髪の毛をお下げに結っていました。未婚の若い女性たちはお下げを一本、既婚の田舎女性たちはお下げを二本を結って頭の上にのせていました。
一番重要なのは歩き方です。女性たちは白鳥が泳ぐようにすべるようにしとやかに歩いていました。そのような歩き方を「白鳥の歩み」と言います。面白いのは、そのすべるようなしとやかな歩き方は生来の雅な歩きではなく、ロシアの伝統的な服に原因があったのです。女性たちは服に綿毛か毛皮(北国では!)の裏張りをしたとても重い服を着ていました。足の動きは長い服で隠れていました。頭のかぶりものは締めて止まってはいなかったので、頭から落ちないように女性たちは仕方なく体を真っすぐにしてしとやかに歩かざるをえなかったのです。
*アンナ・パヴロワ(1881-1931)による「瀕死の白鳥」は、ロシアのミハイル・フォーキンが1905年に彼女のために振り付けたといわれています。
(つづく)
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