2010年08月03日23時47分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201008032347022

検証・メディア

内部告発サイト「ウィキリークス」が機密書類公開 ー創始者「戦争全体を現すのが目的」だった

 アフガニスタンでの軍事作戦に関する米国防総省の機密文書約9万2000点を、内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」が、先月26日、暴露した。米政府、アフガン政府ともにウィキリークスによる情報流布を強く非難している。情報が出た日、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ 氏がロンドンで会見に応じている。その時の模様から、ウィキリークス側の真意を探ってみたい。(ロンドン=小林恭子) 
 
 米ニューヨークタイムズ、英ガーディアン、独シュピーゲルが一斉に公開した情報とは、2004〜10年に米国防総省が作成した文書で、これまで明らかにされていなかったアフガニスタン戦争に関する情報が含まれている。情報源は明らかにされていない。 
 
 ゲーツ米国防長官は今月1日、ウィキリークスには「道義的責任がある。道義的な評決では『有罪』だ」と強く批判した。国防総省はすでに、連邦捜査局(FBI)に捜査協力を依頼している。アフガニスタンのカルザイ大統領も、先に「実に無責任で衝撃的な事態だ」と述べている。以下はウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏がロンドンで行った報道陣との一問一答からの抜粋である。 
 
―公開した情報の信憑性は? 
 
 これまでやってきたように、情報源や内容の信憑性を確認している(ので大丈夫)。 
 
―低レベルの情報だったのではないか?最高機密は含まれない内容だが? 
 
 今回の情報に含まれていないものは、最高機密=トップシークレット、特殊部隊に関わる情報、CIA情報などだ。通常の米軍の活動を公表した。 
 
―あえて出さなかった情報があるか? 
 
 ある。少なくとも1万5000の情報がある。 
 
―米政府があなたに関わる情報を出身国であるオーストラリア政府から得ようとした動きはあるか? 
 
 ある。オーストラリア政府は常に拒否している。 
 
―今回の情報で、特にこれだ!という情報は何になるか? 
 
 一つのこれだ!というのは、ない。しかし、戦争全体を現している。小さな出来事の積み重ねによる戦争の全体像だ。例えば、181人のアフガンの民間人が米軍による攻撃で亡くなった事件など。 
 
―新聞社との協力体制を教えて欲しい。 
 
 米ニューヨークタイムズ、ウィキリークス、英ガーディアン、独シュピーゲルと協力し合い、いつ情報を公開するかを決めた。ガーディアンで糸口になったのは、調査報道記者のニック・デービス氏だ。そして、各紙の編集長と話を進めた。 
 
―英国はウィキリークスにとってどんな意味合いを持つか? 
 
 英国はご存知の通り、監視社会だ。しかし、その一方では、活発な政治ジャーナリズムとこれを支える人たちがいる。西欧社会、そして英国で、自分がウィキリークスの活動のために逮捕される可能性はないと思う。 
 
―米国防省は機密を公開したことで、国防に悪影響が出る、と言っているが。 
 
 米政府が軍に関する情報を出したがらないのは、2つの理由があると思う。1つは、関係者が軍法裁判にかけられること、もう1つは不正を隠すため だ。日々の軍事行動に関わる機密情報は、消え行く存在(=古くなる)だと思う。今回の公表は2004年から2009年末までに関わる情報だから、悪影響は ないと思う。 
 
 私が今着ているTシャツには、ノルウェー語の文句が入っている。ノルウェーで雪が積もり、不正を隠そうと思ってその深い雪の中に入っていても、(いつか雪は消えて)真実が明るみに出る、と意味をあらわしている。 
 
 今回の情報は、かつての「ペンタゴン文書」(ベトナム戦争に関する極秘文書、1970年代に公表され、物議をかもす)に匹敵すると思う。しかし、 こちらのほうが情報量がはるかに大きい上に、(米国とベトナムのみではなく)はるかに大きな読者層を相手にしている。また、インターネットで公開している ので、人々はコメントを残せる。 
 
―ウイキリークスと政治圧力との関係は? 
 
 個人から集めた資金で運営されているので、政治勢力からは独立している。しかし、同時に、大衆にその活動の説明責任が生じると思う。 
 
―情報の価値とメディアについて 
 
 今回の情報はアフガン戦争の6年間の軌跡だ。例えば、米国の部隊ごとにアフガン人何人を殺害したのかの数字を作成し、これを政府発表の数字とを比較する手がある。大きな、戦略図を壁に描くことができるーやってみてはどうだろうか。 
 
―米軍関係者からのリークが多いようだ。英軍関係者からはないのか? 
 
 たくさんある。ちなみに、英国防省はリークを防ぐために、BTに頼み、同省内からウィキリークスへアクセスできないようにした。 
 
 また、独の情報機関から、コソボでの汚職疑惑の情報を出すなと言われたことがある。裁判に訴えるぞ、と。「どうぞ訴えてください。どんな法律に違反したことになるのでしょうか?」と聞いたら、訴追は起きなかった。 
 
―実際に、今回の情報公開のために、米軍などで犠牲者が出たらどうするのか? 
 
 何故そうなったのかを見て、問題があったら、これを直したい。必要に応じてポリシーを変える。 
 
―何故今回、紙媒体だけに限って情報を公開しようとしたのか?何故放送業者に声をかけなかったのか? 
 
 私はもともと、紙媒体のジャーナリストなのでー。今まで番組放送をしたことがないので。今後は考慮する。 
 
―どれぐらいの人数で作業を行っているか? 
 
 「非常に小さい数」といっておきたい。これに、800人のボランティアがいる。支援者は数万人規模だ。(「英国メディア・ウオッチ」より、若干編集) 
 
*** 
 
ガーディアンの特集記事 Afghanistan the war logs  http://www.guardian.co.uk/world/series/afghanistan-the-war-logs 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。