2010年08月12日20時51分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201008122051114

人権/反差別/司法

女性自衛官人権裁判  敗訴した防衛省は控訴を断念

  女性自衛官が隊内でのセクハラで国を訴えた女性自衛官人権裁判で、7月29日に敗訴した防衛庁は、控訴を断念、控訴期限が切れる12日に司法記者クラブに「控訴を見送る」と通知した。原告と「女性自衛官の人権裁判を支援する会」は6日、防衛省に対し「控訴するな」と申し入れを行っていた。(日刊ベリタ編集部) 
 
  2007年5月8日、北海道の女性自衛官が、男性自衛官からわいせつ行為を受け、加えて退職を強要されたなどとして、国に対し、1100万円余りの賠償を請求する訴訟を提起した。原告の女性自衛官は提訴後、数々の嫌がらせの上に任用を拒否され、解雇に追い込まれるなど、性暴力の被害に加え、パワーハラスメントにもあっておいた。 
 
  7月29日に札幌地裁の判決は、被告の国に対し、580万円の慰謝料に支払いを命じると同時に、原告側の主張を全面的に認めた全面勝利であった。 
 
  12日の国の控訴断念を受け「女性自衛官の人権裁判を支援する会」は以下のような声明を発表した。 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
 
7月29日札幌地裁判決の確定にあたって 
 
  勝訴判決が確定しました。 
  原告、そして、今日までこの裁判と原告を支援し続けてくださった皆様とともに、この喜びを分かち合いたいと思います。支援し続けて下さった皆様、本当にありがとうございました。 
提訴から3年3ヶ月、事件が起こってから3年11ヵ月、原告にとっては本当に長い時間でした。辛抱強く、原告に寄り添い、真実を明らかにしていった弁護団の努力には、心からの敬意を表します。 
 
  そもそもあってはならない事件が起こった上に、自衛隊は、被害者である原告に対して保護・援助を怠ったばかりか、退職を強要するなど、二次被害及びパワーハラスメントまで生じさせました。被害者が裁判に訴える以外に、性の尊厳、人権の回復を求める方法は残されていませんでした。 
  現職のまま提訴した原告に対し、自衛隊はいじめや嫌がらせを繰り返し、ついには任用を拒否(解雇)し、自衛隊から追い出しました。 
 
  数々の困難に直面し、幾度もめげそうになりながら、今日まで自分の足で立ち続けた原告の勇気と頑張りに、私たちは心からの拍手を送ります。そして、原告(被害者)の言葉に、きちんと耳を傾けて下さった判決が今日、確定し、本当に報われたという思いで一杯です。 
  提訴後、原告や支援する会には、たくさんのメッセージが寄せられました。その中には、自分も同様の被害にあったというものも多く、自衛官や元自衛官という方々からも多くのメッセージが寄せられました。原告の事件が、氷山の一角であることは、そうした事実からも明らかです。 
  精神的にも深く傷つけられる性暴力の被害者にとって、自ら声を上げ、立ち上がることは、途方もない勇気とエネルギーを必要とします。被害者にそのような過大な負担を強いることが決して繰り返されぬよう、そして何より、二度とこのような事件を起こさぬよう、国と自衛隊には、今回の判決を真摯に受け止め、実効ある措置をとることを強く求めます。 
 
  事件当時20歳だった原告は、今年24歳になりました。彼女の二十代は、事件と裁判に翻弄され続けてきましたが、今日の勝訴判決の確定で、ようやく若者らしい時間を過ごし、新たな未来へ歩み始める条件が出来ました。 
  ご支援いただいた皆様には、今後とも、原告を温かく見守り、支えていただければ幸いです。今日、確定した判決が、同様の被害に苦しむ方々にも、どうか力となりますよう 
に。 
 
2010年8月12日 
 
女性自衛官の人権裁判を支援する会 
共同代表 竹村泰子・清水和恵・影山あさ子 
http://jinken07.dtiblog.com/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。