2010年09月04日00時02分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
遺伝子組み換えパパイヤがまもなく食卓へ アレルギーを引き起こす恐れも 天笠啓祐
ハワイで作られている遺伝子組み換え。パパイヤが、まもなく日本の市場に登場しそうです。すでに食品安全姿員数が「安全」と評価しており、まもなく食品表示の方法が確定することからです。もし出回ると、日本では初めて生で食べる遺伝子組み換え食品の登場となります。
◆生で食べる組み換え食品
この組み換えパパイヤは「レインボー」という名前で、アメリカ・ハワイ州で1998年より栽培が始まりました。これまで、日本では組み換えパパイヤが承認されていなかったため、非組み換えの「カポホソロ」が輸入されていました。しかし、ハワイでは圧倒的にレインボーが作られており、輸入が始まると瞬く問にレインボーに席巻される可能性があります。
これまで組み換え作物は、トウモロコシ・ナタネ・大豆・綿の4作物だけしか日本には入って来ていませんでした。ここに新たにパパイヤが加わることになります。
また、遺伝子組み換えがもたらす性質も、これまでは除草剤耐性と殺虫性の2種類でしたが、この組み換えパパイヤにより、新たにウイルス抵抗性が加わります。
表示はどうなるでしょうか。主に重量で取り引きされてきたこれまでの組み換え作物と違って、パパイヤはIつひとつの個体で売り買いされるものですから、組み換えパパイヤか非組み換えパパイヤしか存在しません。「不分別」といった曖昧表示も、5%未満は「非組み換え」と表示できる5%条項もあり得ないことになります。また、組み換え表示は義務ですから、組み換えパパイヤは必ず「遺伝子組み換え」と表示しなければなりませんが、非組み換えパパイヤは任意表示となるため、「遺伝子組み換えでない」と表示されるか「表示なし」となります。
◆アレルギーを引き起こす疑い
この組み換えパパイヤは、パパイヤ・リングスポット病を引き起こすウイルスの遺伝子を導入し、それへの抵抗性を強めたものです。
ウイルスの遺伝子は、主に自己増殖する部分と、遺伝子を包む殼を作る部分から成り立っています。この組み換え作物では、周りの殼を作る遺伝子の部分を導入しました。そうするとパパイヤの中で殼ができ、ウイルスに感染したのと同じ状態になります。この遺伝子の部分は増殖能力がありませんから、ウイルスが持つ毒性を発揮することがありません。感染されたと錯覚した植物は、そのウイルスに対する抵抗力を持ちます。その抵抗力が本物のウイルスに感染したときにも発揮できるというのが、その原理です。
この組み換え。パパイヤは99年には輸入申請が出され、安全審査が始まりましたが、なかなか進展しませんでした。その最大の理由が、安全性への疑いです。特にアレルギーを引き起こす可能性が指摘されていました。
オランダの研究者G・A・クレーターらが分析したところ、ウイルスの殼となるタンパク質に回虫のアレルゲンと同じアミノ酸配列があることがわかりました。タンパク質はアミノ酸がつながったものですが、そのアミノ酸の配列を見て、既知のアレルゲンと同一あるいは類似の配列があるか否かで安全性が評価されてきましたが、その配列に問題があることがわかったのです。しかし、食品安全委員会は、問題なしとして承認しました。
このパパイヤは、病気に強いということで、ハワイではあたかも救世主のように喧伝され、現在世界中に売込みが図られています。しかし、ハワイの農民は、パパイヤ・リングスポット病にはなり難くなったが、新たにブラックスポット・カビに冒されやすくなったと報告しています。
(筆者は市民バイオテクノジー情報室代表)
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