2010年09月13日21時33分掲載
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テレビ制作者シリーズ1の2 谷津賢二さんのアフガニスタンからの報告
テレビ制作者シリーズで最初に紹介した谷津賢二さんはその後もアフガニスタン東部、ニングラハル州で活動する中村哲医師の取材を続けている。中村医師が設計し、工事を監督してきた用水路は去年の8月に完成した。用水路は全長およそ26キロにおよぶ。クナール川から取水する用水路は一帯を潤し、ガンベリ砂漠につながる。この用水路によって砂漠化の進んでいたアフガニスタンの土地で小麦のほか、にんじん、大根、ほうれん草、蕪なども収穫できるようになった。そしてなんと米も収穫できるようになった。谷津さんは言う。
「米はジャポニカですよ。アフガン人は米が好きなんです」
中村医師はさらに「死の砂漠」と呼ばれる、ガンベリ砂漠一帯までも緑の地にしたいと考えている。谷津さんが取材したその映像は2009年9月のテレビ朝日「報道ステーション」で「アフガン支援の今 伊藤さん殺害と医師の挑戦」と題して放送された。砂漠化が顕著になっていた2000年頃の現地の映像に比べると信じられないような風景が現れていた。
さらに驚いたことに中村医師は自らモスクを設計し、実際に建てた。モスクの隣にはマドラサ(学校)も開校させた。中村医師は人びとが「これで自由になった」という声を耳にしたという。外国軍の侵略で戦闘にさらされた日々からようやく解放され、自由に落ち着いて勉強ができるようになった、というのである。
「マドラサは昼と夜の二部性になっていて、40代の大人までが夜間勉強に来るんです。彼らは若い頃は戦乱でとても勉強どころじゃなかったんですよ。」
去年8月の開校時、生徒数は280人だったが、今では600人が通う。ここで教えられているのは国語、算数、理科などの9科目とイスラム教関係の9科目だ。さらに700人を収容できる寄宿舎もこれから建てる予定である。生徒には孤児が少なくない。この様子は今年3月の「報道ステーション」で「戦火広がるアフガン・「学校を作る」医師の挑戦」と題して放送された。
「アフガン人は精神性が高い人びとです。モスクは祈りの場だけでなく、諍いの調停の場でもあるんですよ。またマドラサは日本で言えば寺子屋です。読み書きそろばんを教えてくれる場です。」
こうした祈りの場や教育の場が生まれたのもひいては食糧と水が確保できたからに他ならない。それこそが平和への道だというのが中村医師の信念だ。そして用水路を作るための支援金の99%は日本から寄せられたお金だった。
だが、クナール川に取水口を持つこの用水路に危機が忍び寄っていた。この夏、パキスタン一帯を襲った洪水はアフガニスタン側にも影響を与えたからだ。洪水で取水口近辺が崩れ、さらに水の流れをうまく調整するのに大切な役割を果たしていた中州も激しい雨で流されてしまった。取水口は川から用水路へ水を誘導する、いわば用水路の要である。これから復旧作業が必要になる。
オバマ政権はアフガニスタンでのテロとの戦いを強化しようとしている。そうしたあり方とは違った道を実践してきた中村医師たちの活動にはこの先も目が離せない。
■谷津賢二さん
1994年、日本電波ニュース社に入社。アフガニスタンの取材を中心にカメラマン・プロデューサーとして数々の番組制作に携わる。
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村上良太
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