2010年09月15日14時38分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201009151438083
政治
現在に対する見識と構想を(5) 重要なのは戦後日米関係の見直しなのだが 三上治
民主党の代表選は菅の勝利で終わった。これはある程度予測できたことだが党員やサポータの票がこれだけ開くとは予想外であった。現職の総理大臣であることやマスメディアの有形無形の支援が功を奏したのだと思う。結果は雨降って地固まるになるか、政界再編の始まりになるかは予測できない。この代表選を通じて僕が期待していたのは菅と小沢の両氏が政治的見識と構想を明確にした論争を展開してくれることだった。
新聞やテレビでの発言を見る限り、それが深い水準で披歴されたとは言い難い。今まであまり公的な場に出ずに憶測だけで測られてきた感のする小沢一郎がその見識や構想を披歴したのはよかった。僕は沖縄の辺野古新基地建設の動向に関心があり、日本の外交―安全保障政策に注目してきたが、この点での菅と小沢の見解が十二分に示されなかったことは不満だった。菅には独自の考えらしいものがないことはよくわかっていたが、小沢の日米同盟の修正と国連中心主義についてはもっと知りたかった。菅支持派の政治家に大きな国家デザインを描ける政治家が不在なのは今後に不満を残すが、それはまた小沢支持派にも見当たらず民主党の中身が透けてみえたようだった。民主党も含めた政党への失望が深まるのは必然で避けがたい。
政治的にも経済的にも戦後の日米関係を見直し、その関係の改変に手をつけるというのは今後の日本にとって重要なことである。それを担う政治家や政党が要請されていることは疑いないし、小沢一郎への期待もこの点にあったといえる。政治・経済の両面での中国の動向を考えるとこの点は一層明瞭なことではないか。
冷戦を勝利したアメリカがその軍事力と政治力で世界秩序(システム)の維持者(護衛官)として振舞うことは不可能であり、また経済的な衰えが回復することはありえない。こういう事態だからこそアメリカの対日要求は厳しさを増すが、日米同盟の名のもとにそれに応じることは様々の矛盾を抱えみ深めるだけである。この間の普天間基地移設問題でのアメリカの態度と日本政府の対応はそれを示している。
アメリカとの関係に波風の立つことを覚悟した外交交渉をやり抜かなければ事態は悪化するだけのことだ。対中国関係についても言えることだ。アメリカとの関係の見直しとアジア関係重視ということは政権交代を目指していた民主党でも語られたし、流行語であった。これは現実にはあまり進展せず、いつの間にかより一層の対米従属への傾斜が見られるほどだ。これには日本思想の回帰でなく、西欧思想制度を模倣し移植してきた段階を段階として乗り越えていく哲学や思想が必要であることを示唆している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。