2010年09月23日23時05分掲載  無料記事
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政治

露呈する検察問題と全体の構造  三上 治

  郵便制度悪用の文書偽造事件(虚偽有印公文書作成・同行使)に問われていた厚生労働省の元局長・村木厚子被告に対して大阪地裁は無罪を言い渡した。この裁判に関しては検察側のずさんな捜査が以前から指摘されており、無罪判決は予想されていたが、今度は検察による証拠の改ざんという恐るべき事態も露呈した。これは検察というシステムの持つ問題である。 
 
  この事件は障害者団体向けの低料金第3種郵便物制度を悪用し発送料を不正に免れたとして障害者団体(凛の会)が摘発されたことに絡んで発生した。「凛の会」は実体がないにも関わらず、障害者団体と認める証明書の発行を厚労省局長の村木厚子が指示したとして起訴されたのである。その際に、「凛の会」側からは民主党参議院議員の石井一の働きかがあったとされた。会側は参議議員を通して村木の上司に依頼し、村木が発行を指示したとされたのである。 
 
  事件の核心は証明書の発行であるが、そこには二つの構図が存在した。その一つは政治家を通じて依頼(口利き)があったこと、もう一つは偽証明書発行指示である。この政治家を対象とするストーリは早い段階で消え、結局のところ事件は村木局長の証明書発行指示に絞られることになったが、ここでは検察の捜査はずさんであったが証拠となるデータの改ざんも行われたのである。 
 
  ここでしばしば語られるのはストーリ(構図)という言葉である。刑法ではある行為が犯罪として該当(該当要件)を満たす事実かどうかが前提としてある。この事実が捏造されたり、事実として告白(自白)したものが誘導されたものであったりすれば、これは検察[権力側]のフレームアップといわれる。これはストーリの基礎にある事実関係の崩壊ということになる。 
  検察が描くストーリというのはこれだけではない。犯罪に該当する行為を訴追するか、どうかに検察の判断が働く。特に特捜部で扱う事件では政治的、社会的影響も強いからこの判断が重要になる。このとき検察の判断はもう一つのストーリである。 
 
  検察は国民にある役割を委託された存在(公僕)であれば、国家規範(憲法を最高法規とする諸法)によってその判断をすべきであり、特定の政党や機関(官僚)の意向や利害でそれをなしてはならない。国家規範という時、国家権力の担当者の意向ではなく、国民の意向(国民の国家権力への命令としての憲法)に沿ってということになる。これは検察(権力)の恣意的な判断(権力行使)を否定する。国策捜査や検察の暴走はこの検察のストーリ批判の言葉である。 


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