2010年09月26日20時34分掲載
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英野党・労働党の新党首、決定 −ニューレーバーの今後に不透明感
25日夕方、エド・ミリバンド(元エネルギー・気候変動担当相)が英最大野党・労働党の新党首に選出された。兄のデービッド・ミリバンド(元外相)も党首候補者の一人で、兄が労働党党員や労働党議員らの間では支持率が高かったのだが、労働組合からの強い支持で兄を振り切った格好だ。最後は兄と弟の決選投票になり、兄49.35%、弟50.65%という大接戦となった。(ロンドン=小林恭子)
26日付の高級紙4紙をざっと見ると、左派系新聞インディペンデントも含め、エドの党首就任を「良かった!」と評価している人が少ない印象を持った。インディペンデントの政治記者はこれではキャメロン(現首相、保守党)に勝てない、とまで言い切っている。
次の下院選挙は2015年の予定。2007年まで首相だったトニー・ブレアが労働党党首になったのは1994年で、選挙に勝って首相になったのが1997年。保守党のキャメロンは2005年に党首になってから、今年5月、首相就任。エド・ミリバンドが今党首になったのは、時期的には悪くない。
私が党首決定の様子をテレビで見て思ったのは(私だけではないと思うが)、「これで左に寄ってしまったな」ということだ。デービッド・ミリバンドはブレア氏や他の議員のお気に入りで、いわゆるブレア派。ニューレーバー派である。
ブレア氏が最近、BBCのテレビのインタビューで言っていたが、労働党が一ミリでもニューレーバーから離れたら、選挙に負ける、と。
今どれぐらいブレア派、ブラウン派が労働党内で意味を持つのかは不明だが、エド・ミリバンドはブラウン派である(少なくてともかつては)。ブラウン前首相のスピーチライターでもあったし、総選挙のときの労働党のマニフェストを書いたのもこの人である(−と考えると、労働党が選挙に負けたのはエド・ミリバンドのせいも少しあるのかな、と思うわけである。)
党首選の選挙キャンペーンを詳しく追っていたわけではないが、エド・ミリバンドの話は国家の役割を重要視していた。労働組合からの支持で勝ったというのは、かなり重要な意味があるだろう。
実際にそうなるかどうかは分からないのだが、単純に考えて、労働組合の支持をむげにするような政策や発言はしにくくなる。つまるところ、これは象徴的な意味もあるのだが、労働組合重視、国家の役割重視=昔の労働党=左・・・というようなイメージが出る。
「象徴的意味」というのは、本当にエド・ミリバンドがこのようなイメージに沿った政策を打ち出してくるのかどうかは分からないのである。しかし、そういう印象を与える、それだけでもう、一つの政治的な動きをしたことになる。
つまるところ、ニューレーバーに衣替えした労働党が、一歩後退した、という印象さえ与えるのである。ニューレーバーに取って代わるキーワード(党を統一する役割を果たす)・スローガンがまだないので、人は「古い労働党」のイメージを抱く。エド・ミリバンドは早急に新しいスローガンを作らないといけないだろう。
エドの党首就任とは直接関係ないが、これから影の内閣の人事に入っていくだろうから、いつも気になっていることを書いておきたい。
このミリバンド兄弟は、連立政権発足(5月)以前まで、同じ内閣にいた。この内閣+政権中枢部には、党首候補者の一人でもあったエド・ボールズと妻のイベット・クーパーも入っている。
いささか居心地が悪い感じがする。兄弟で一つの内閣に?そして、夫婦でー?それは、「兄弟(または夫婦)だけれど、どっちも本当に実力があって・・・」ということで「たまたま」そうなったと思うだろうか?どうにもネポティズムのような感じもする。また、利益の対立(コンフリクト・オブ・インタレスト)がないのかな、とも思う。普通の企業や公的機関の勤務で、同様のことが起きているか、起きていないか、もし同様の事態が発生しそうなとき、どのような措置がとられているかを考えると、やっぱり、労働党の前政権の人事はおかしいなーと私は思う。どうにもすっきりしない感じがする。
何せまだ1日目だが、今後、どうなるか?である。
それにしても、エド・ミリバンド(40歳)にせよ、キャメロン首相(43歳)、副首相のニック・クレッグ氏(43歳)にしろ、さっそうとして若い。タイプが似ている感じに見える。ミリバンド氏の労働党党首就任で、ほぼ確実になったことがあると思うー首相候補の若年化である。40代前半での就任がだんだん当たり前になってきた。これは良いことのような気がしてならない。
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