2010年11月15日14時51分掲載
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スポーツ
オーストラリアでプロ野球が再開 米国メジャーリーグからの出資も、プロ野球定着には長い道のり
【豪アデレード14日=木村哲郎ティーグ】99年に経営難で中止に追い込まれたオーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)が10年の歳月を超えて再開された。南半球が暖かくなる北半球のシーズンオフに、“ウインターリーグ”の形で選手を受け入れ。日本からも読売ジャイアンツとソフトバンク・ホークスが選手を派遣している。経営権を各球団に持たせるのではなく、米国メジャーリーグ出資を受けながらオーストラリア野球連盟が各地に点在する6球団を総括運営することで経営の安定化を図っているが、オーストラリアでプロ野球の定着は難しそうだ。
11日から13日までアデレード・バイト対メルボルン・エーセズの4連戦(13日の試合はダブルヘッダー)がアデレード東部のノーウッド・オーバルで行われた。オーバルとは楕円形のクリケット場であり、夏はクリケットに利用されるほか、冬の間はオーストラリアン・ルールズ・フットボールに利用される。野球熱が比較的盛んとされるアデレードにおいても野球専用の競技場はなく、観客動員は週末土曜日にあった13日の試合でも1546人であった。
シアトル・マリナーズの東アジア担当スカウトでもあるアデレード・バイトのパトリック・ケリーGM(ゼネラルマネージャー)は、「いつかはアデレードに野球場を作りたい」と話すものも、まずは野球を市民に定着させることが目標だという。アデレードやメルボルンのあるオーストラリア南部では「フッティー」と呼ばれるオーストラリアン・ルールズ・フットボールがナンバー1スポーツ。伝統的なスポーツであるクリケットにも注目が集まる。また、サッカー、バスケットボール、モータースポーツ、アイアンマン(トライアスロンに類似)などのプロスポーツもあり、野球の入り込む隙間は狭い。ケリーGMによると、「20ドルで家族が全員が3時間楽しめる“エンターテインメント”」として売り込んでいる段階だという。
選手のサラリーは公表されていないが、地元選手のサラリーはの米国のマイナーリーグと同じ基準の模様。中にはキャリアのある昼間の仕事をしている者もおり、2005年に日本ウェルネススポーツ専門学校(新潟県)の野球チームに所属していたアデレード・バイトのダニエル・ウイルソン外野手の本職は医者だ。「プロ1本で行かないか?」との質問に対して、「医者の仕事も気に入っており一つを選ぶことはできない」と話したものの、「米国や日本のような野球国に生まれたらプロを目指していたかもしれない」と本音を漏らした。
ウイルソンはまた、ルールが複雑な野球を理解できないオーストラリア人が多い点について、「野球と類似しているクリケットとリンクさせることで、市民の関心を取り込めるのでは」と話した。地元紙アドバタイザーで野球記事を執筆しているロバート・レイドロー記者も「ボークなど分かりにくい時は、説明のアナウンスをするべきだ」と述べ、野球に疎いオーストラリア人向けに、ルールの説明が必要だとの意見を示した。
11日から14日に行われた4連戦では、メルボルン・エーセズに所属する読売ジャイアンツの金刃憲人投手、星野真澄投手、伊集院峰弘内野手、橋本到外野手の各選手も出場した。11日は星野がリリーフで1回を2失点。12日に先発した金刃はエラーが絡んで3回3分の2を5失点で降板した。両投手ともオーストラリア人選手を「パワーがある」と形容。星野は自らのコントロールの乱れを課題にあげ、また見方の守備に足を引っ張られた金刃は、オーストラリアの野球が向上するには「守備の向上が必要」と話した。
また13日のダブルヘッダー第1試合では橋本、伊集院が揃ってスタメン出場したが両選手共ノーヒットで終わった。橋本は4打席連続レフトフライであり、投手と同じようにパワー負けしたようにも見えたが、当の本人は「逆方向を狙うバッティングを心がけており、レフトフライが続いたのは左肩が下がったことが原因」と分析をしていた。
なお、ABLは40試合制で今シーズンは来年1月22日まで行われ、上位4チームによるプレーオフが2月に開催。読売ジャイアンツの各選手は、12月23日までの参加が予定されている。
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