2011年01月10日11時50分掲載
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反貧困
「ここがなかったら、今頃は自殺していたかも」と30代男性 「年越しSOS電話相談」結果がまとまる
反貧困ネットの事務局長で2008年の年越し派遣村村長を務めた湯浅誠さんら有志が行った「年越しSOS電話相談」の結果がまとまった。相談者数は105名、男性が95名と圧倒的に多く、また路上を含む居住場所のない人が66名にのぼった。また90名が所持金500円未満、「ここにたどり着けなかったら、今頃は自殺していたかも」と話す30代男性など、深刻な状況にある人がほとんどだった。「食費・宿泊費を渡す」などの対応をした。経費は関わった有志の寄付でまかなった。(日刊ベリタ編集部)
「年越しSOS電話相談」結果報告(確定版)
1)相談者数
合計:105名(12/31:15名、1/1:31名、1/2:30名、1/3:29名)
2)内 訳
・性別: 男95名、女10名
・平均年齢: 50.1歳(男:49.4歳、女:57.3歳)
・年代:20代:4名 30代:16名 40代:25名 50代:24名 60代:24名 70代:4名 80以上:0名 不明:8名
3)居住環境
◆居宅: 38名(自宅・アパート・会社寮)
◆居宅外: 66名(簡易旅館3、友人宅7、路上39、ネットカフェ9、車上生活1、マック5、ビジネスホテル2)
◆不明: 1名
4)電話してきた場所
・東京都: 70名(23区: 59名、市部: 11名)
・東京都外: 33名(内訳:神奈川県6名、埼玉県4名、北海道・千葉県・大阪府・宮城県など2名、他)
・不明: 2名
◆固定も携帯も電話なし: 40名
5)対応内容
・四ツ谷で、食費・宿泊費手渡し: 33名
・現場で、食費・宿泊費手渡し: 16名
・地方のネットワークを紹介など: 22名
・電話相談、ノイエ本送付のみ、など: 34名
6)ボランティア(延べ人数)(電話:電話対応・事務サポート、面接:外部対応・自宅待機)
◆合計:87名(電話:42名、面接:45名)…実数:45名
・12/31:14名(電話:5名、面接:9名)
・1/1:27名(電話:15名、面接:12名)
・1/2:25名(電話:13名、面接:12名)
・1/3:21名(電話:9名、面接:12名)
7)その他:特記事項
◆所持金 なし:10名…全体10%(判明中12%)
100円以下:32名(+22名)…30%(判明中40%)
500円以下:48名(+16名)…46%(判明中59%)
1000円以下:54名(+6名)…51%(判明中67%)
2000円以下:63名(+9名)…60%(判明中78%)
5000円以下:68名(+5名)…65%(判明中84%)
1万円以下:71名(+3名)…68%(判明中88%)
1万円超:10名…10%(判明中12%)
不明:24名…23%
8)事例紹介
《典型事例の抜粋。ただし、個人情報の問題があり、これ以上詳しくは紹介できない。》
◆30代男性@ネットカフェ
2009年始めまで正社員。10月に雇用保険が切れ、その後、日雇い・短期バイトでつなぐが、2010年秋にアパートを失う。その後、ネットカフェやマクドナルドで過ごす。所持金が数百円となった元旦未明に1時間だけネットカフェに入り、「年末年始 緊急生活相談」でネット検索し、「年越しSOS電話相談」に連絡してくる。
本人曰く「何も支援が見つからず、電話もつながらなかったら、あきらめて今の時間には自殺していたと思います。雇用保険が切れたとき福祉事務所に相談に行っていたが、“まだ若くて健康だから”と追い返され、もうどこも助けてくれないのだろうと思っていた。いままでで一番辛かったのは、寒さでも空腹でも疲れでも寝場所がないことでもなく、3ヶ月間誰ともまともに会話をすることができなかったこと」だと。
その日の晩、直接支援につながった後、行政の窓口が再開する4日に生活保護申請。生活立て直しに向けた一歩を踏み出す。
◆北陸地方に暮らす30代男性から、「6か月ごとの更新で続けてきた契約の仕事が2011年3月末に切れる(日給月給の8時間勤務で手取り8〜10万円)。いまは家族と同居中なので、すぐに生活困窮する状態ではないが、これからの生活が不安」との相談があり、不当解雇の場合などに相談できる労働組合を紹介。
◆派遣切りにあったという20代男性から「年末に派遣切り(中途解約)に遭い、1月6日に寮を出るように言われている。仕事中に交通事故を起こした際の賠償金を自己負担させられて、お金もなくなった。3日間何も食べていない」との相談があり、寮を出ないようにアドバイスすると同時に、会社との交渉と生活保護申請について支援。雇用保険の受給手続きも同時に始める。
◆夫からのDV被害に悩む40代女性から、「夫のDVで別居中だったが、居所を探り当てられて辞職せざるを得なくなった。昨年家を出て、現在逃避中。貯金を取り崩しているので、残りが不安になっている。過呼吸で、よく発作を起こして死にたくなる
」との相談があり、DV問題に詳しい弁護士を紹介。
◆「高齢刑余者の70代男性がホームレス状態になっている」と地域住民から相談の電話。12月28日に刑務所から出所したが移動してお金がなくなり、都内の駅でホームレスになっているとのこと。しかし、認知症気味で記憶が混濁しているため、年金受給の件など確たる情報を得られず。1月4日に、生活保護申請とともに入所施設探しを支援。年金受給資格の確認を行った。
9)所感
インターネット中心の告知でしたが、たくさんの方たちのご協力で105名の方から相談を受けることができました。相談事例は深刻なものが多く、所持金1万円以下が71名でした。また失業状態の長期化による生活困窮事例が散見され、居宅にいながらの生活困窮も38名に上りました。生活再建の支援は貧困対策であると同時に、自殺対策でもあります。日本社会が、こうした人たちを迎え入れられる包摂型の社会により一層成長していくことを期待します。(湯浅誠)
年越しSOS電話相談 会計報告
(支出)
【クオカード】
・12/31(5,000円× 9セット=45枚)45,000円
・ 1/ 1(4,000円×14セット=56枚)56,000円
・ 1/ 2(3,000円×13セット=39枚)39,000円
・ 1/ 3(2,000円×11セット=22枚)22,000円
・居宅ある相談者へ送付(1000円分×21枚)21,000円
・現場対応者立て替え(1000円分×15枚)15,000円
小計 198,000円
【現金】
・12/31(8,000円× 9セット)72,000円
・12/31(高齢、認知症傾向ありの相談者へ特別対応)22,000円
・ 1/ 1(6,000円×14セット)84,000円
・ 1/ 1(体調不良の相談者への特別対応)10,200円
・ 1/ 2(4,000円×12セット)48,000円
※1名はクオカードのみ支援のため12セット
・ 1/ 3(2,000円×11セット)22,000円
小計 258,200円
【その他経費】
・コピー代(相談票、宿泊先情報など)2,750円
・宅配便代(ガイドブック、食料など)4,030円
・交通費(ボランティア用)660円
・文房具代(資料送付用封筒、紙袋など)3,824円
・飲料代(コーヒー豆、水)1,794円
・カイロ代1,672円
・タクシー代 1,530円
小計 16,260円
【合計】472,460円
※上記の金額は、関わった有志の寄付でまかないました
(まとめ・湯浅誠)
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