2011年02月09日09時15分掲載
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医療/健康
検査・検診が病気をつくる 近藤誠『成人病の真実』のお薦めーこれは絶対です! 崔 勝久
先に、近藤誠の癌に関する新書の紹介をしました(「近藤誠は生きていた!−「がんもどき」理論の最終見解について」)。私自身の体調がよくなく(何故か、血圧が高くなった)、2週間、降圧剤を呑むなかで、改めて近藤誠の成人病に関する本を読みました。癌と合わせ、成人病の本は是非、みなさんにお薦めします。この休みの間にお読みください。これほど 私自身の体調がよくなく(何故か、血圧が高くなった)2週間、降圧剤を呑むなかで、改めて近藤誠の成人病に関する本を読みました。癌と合わせ、成人病の本は是非、みなさんにお薦めします。この休みの間にお読みください。これほど「役に立つ」本はありません!
近藤誠の主張は明確で揺るぎがありません。私たちがもたされていた「病」についての誤った情報、それに基づく考え、行動に警鐘を鳴らします。彼の思いとか、主張でなく、大変実証的で、実際の内外の学術論文の分析から始まり、その誤謬を指摘し、データの正しい読み方を説明する論理的(科学的)なものです。ちなみに、医師は薬品会社のパンフは読んでも、臨床に忙しく不勉強なのです。ですから医者だからといって出す薬をそのまま信用して呑んではいけません。
もう一度、癌について。癌細胞とは、3−4万個の遺伝子をもつ細胞が、複数の遺伝子の突然変異によって癌化されたものをいいます。癌病巣には、直径1ミリでも100万個、1センチなら10億個の癌細胞があるのです。自己細胞ですから、免疫に効くとかいう食品などは相手にしないでおきましょう。そんあことはありえないのです。
遺伝子の変異の理由は様々で、まだ完全には突き止められていません。従って、癌は発見された時既に転移しているかどうかの見極めが重要です。また手術後の抗がん剤治療は実際、転移とは関係がなく、患者が苦しむだけです。
近藤誠は癌だけでなく、高血圧、コレステロール、糖尿など、「生活習慣病」と言い直された「成人病」についてもこれまでの私たちの知っていることがいかに間違っているのかを記します。彼によると、無症状で発見された「病」は基本的に治療を受けるべきではないというのです。従って、集団検診、人間ドックによって発見された「病」は、「本物の病気」ではなく、医師や日本の医療システムが作り出した「観念の病」ということになります。
例えば、私は高血圧(200近かった)でしたが、一体「基準値」とは何かから説明します。「基準」とは統計的な処置ですから、原理的に全体の5%の「患者」予備軍を作り出すものなのです。
いくつもの検査が実施されれば、何もなくてもどこか「問題」がある人が出てくるしかけです。1998年に厚生省が発表した基準値は、(160/95mm HG)以上でしたが、2000年には(140/90)に引き下げられたのです。
これによって2100万人の人が高血圧と診断され、合計、3700万人の人が高血圧になってしまいました。高血圧の原因は9割以上不明です(これを「本態性」と言うらしい)。しかし血圧を下げることによって死亡率が下がったり、心血管病が減るという実証的なデータは一切ないとのことです。これはコレステロールや糖尿も同じで、数値を下げることと、インシュリンを打つことで延命は実証されず、総死亡数が減ることはないのです。
もっと衝撃的なのは、フィンランドの追跡調査によると、40−55歳の会社管理職をふたつのグループに分け(「くじ引き」試験といい、これがないと実証的に証明されたことにならないそうです)、約600名づつ、何もアドバイスもせず本人の自由にさせとく「放置群」と、医師が徹底的にライフスタイルに介入し定期的に食事内容、運動量、投薬などをする「介入群」に分け、試験期間の5年とその後の10年の追跡調査の結果、心臓死と総数においては統計学的に意味のある差はでなかったらしいのです。ただし癌死には差があり、喫煙などのライフスタイルの変更による意味があるとの解釈です。
近藤さんによると、絶えざる「介入」によるストレスが問題ということです。絶えず、自分の数値を気にして(私なども日に何回、血圧計を使い出したかわかりません)、それが総死数が同じという結果につながるらしいのです。なんということでしょうか、癌にしても基本的には「老化」と受けとめ、どこか悪くなったら検査を受ける、しかしやたらに手術や投薬に応じないで様子を見るのが一番いいらしいのです。
ポリープは放置しても大部分は大きくならないし、検査で発見された、無症状の癌は大部分、転移しない「がんもどき」であり、「成人病」(「生活習慣病)という言い方は、訂正すべきらしいですね」もまた同じく、「健診をすれば病気が早く発見できて、役に立つ」という「先入観」によるもので、それらは、医者と一般人のあいだの医療に対する「過度の期待」と、思考と行動面における「非科学性」と医師たちの「営利主義」が生み出したものだと断定します。健康診断と人間ドックは健康な人でも5%が「基準値外」になるように「基準値」を前提にしているのです。そのために人間ドックで8割もの人が「病気」や「異常」のレッテルをはられます。
「検診」には近寄らないこと、もし会社などの集団検診で「異常」が見つかったら、「延命率」と「治癒率」のデータを求めましょう。
何もせず、普段通りの生活をして(ただし、タバコはやめましょう)、
どこか悪いところがあれば検査を受けるようにしましょう。
いかがですか、みなさん、是非この本は読んでください。多くの本を紹介してきましたが、間違いなくこんな「役に立つ」本はないと思いますよ。
(文春文庫、600円)
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