2011年02月14日16時58分掲載
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イスラエル/パレスチナ
ムバラクなき後の中東情勢 高税・高負担のイスラエルではこれ以上の国防費の増額は無理
カイロを中心にエジプト国民によって繰り広げられている反政府デモ隊の要求が18日目にして政府を動かし、ムバラク大統領は11日辞職を受け入れた。また、その翌日エジプト軍から1979年に結ばれたイスラエルとの和平条約を今まで通り維持すると発表された。一連のエジプト国内の動向に注目していたイスラエルのネタニヤウ首相はエジプト側の発表に歓迎の意を公式に発表したが、これから再出発するエジプト政府内でイスラム原理主義者が力を持ち、反イスラエル感情が国家レベルで具現化される事をイスラエル政府は強く懸念しておりエジプトのこれから始まる動向に目が離せない状況にある。(テルアビブ=松澤聡)
イスラエル軍関係者から有事に向け防衛力の強化を望む声も上がっていると言う報道もあるが、すでにGDPの10%(*1)近くを国防費に費やしているイスラエルではこれ以上国防費を上げる予算の余裕はなく、また税金の高さに国民からの不満の声は多くこれ以上の予算の確保は難しいと言われている為、防衛力の強化と言う対策はすぐには取れない状況にある。
イスラエル市民の中では『すぐに戦争が始まると言う危機感はないがエジプトの民主化によって何らかの変化が中東全体にあると思う』と言う意見が多い中『イスラエル軍の軍事力は最強だから何が来ても大丈夫だ』と言う右派市民もおりムバラク大統領が辞職した今もイスラエル国内の関心は強い。
イスラエル政府はこれから今回のエジプトの民主化によって再構築されるであろう政府間の関係についても、パレスチナ問題についてもイニシアチブを握ると言う、今まで通りの強い姿勢をエジプトを始めアラブ周辺国に示して行くと考えられ中東に新しいスタンダードが誕生する可能性もある。
また、ガザのハマス指導者からエジプト最大野党のムスリム同胞団との交渉の結果エジプト・ガザ国境のラファ検問所のゲートが開かれると言う情報も未確認ながら流れて来ており、事実であるならばガザ市民にとって待ちに待った大きな変化となる事は間違いない。
(*1)英国国際戦略研究所の2007年時点調べによると、イスラエル国民一人が負担する国防費は$1806となっており$1835のアメリカに次いで2番目に高い数字である、$322の日本とは5倍以上の差がある。
松澤聡
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写真題名『パレスチナ西岸地区の検問所』アラブの民主化の流れがパレスチナに夢を与えてくれるだろうか?
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