2011年03月13日07時56分掲載
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検証・メディア
地震発生で、日本を励ます英フィナンシャル・タイムズ
英国のメディアは日本の地震と津波発生をどう報じたのか?全体のトーンとフィナンシャル・タイムズの論考を紹介する。(ロンドン=小林恭子)
英国での今回の日本の地震と津波発生の報道で、大体共通しているのが:
*非常に報道が詳しいー地理的な説明、何故地震や津波が起きたのか、何故原発が日本にとって大事なのかを、ありとあらゆるコメンテーターや情報を使って英国民に説明している。テレビのニュースは時間を目一杯とり、新聞もたくさん紙面を使っている。
*主眼になっているのは、これほど大きな自然災害であったことへの驚き、犠牲者への大きな同情、原発の事故の可能性でどれだけ被害が出るかへの高い関心など。サン紙は、1面に、大きな写真に、一言、「黙示録」とつけた。
*報道のトーンとしては、日本に対する敬意がいろいろな箇所ににじみ出ている。「地震がたくさん発生する国日本で、今回これほどの地震と津波が起きた」「地震に対しては準備万端だったろうけど、津波は防げなかったーでも仕方ないだろう」「地震対策はすごいはずだが」「私たち英国人のアドバイスなどは、あまり参考にならないだろうが(日本には相当な知識と技術があるのだから)」−という表現をよく聞いた。「敬意」というのは、もしかしたら、やや「劣等感」あるいは「気後れ感」もあるかもしれない。何せ、ちょっとしたことで電車が止まり、交通状態が麻痺してしまったり、郵便が届かなくなるのが英国だから。2012年のロンドンオリンピックも、まともに交通機関が動くと信じている人は少ない。必ず何か失策が起きそうである。
地震発生二日目に犠牲者が数百人規模で出ていることが分かったので、明日以降の新聞はまた別のトーンになると思うが、とりあえず、発生の夜に作った、本日付の各紙は6ページほどの特集がザラだった。
フィナンシャル・タイムズには、希望的観測の論考が多かった。神戸の地震(1995年)と比較して、当局が着々と救済策に力を入れていることを誉め、「日本はこれをきっと乗り越える」という結末など。例えば社説の見出しは「日本は自然災害を吸収する」である。
論説面の記事の一つが、日本在住のピーター・タスカ氏の論考、「日本は回復力が豊かな国」(Japan is rich in resilience)。自分の体験を書き、後半が日本を励ますような記事。
やや拾ってみると
http://www.ft.com/cms/s/0/c8576f88-4c19-11e0-82df-00144feab49a.html#axzz1GQWq4amq
「表面的には、日本はひどい状況だ。管首相は低下する世論調査の数字や金融スキャンダルの餌食になる、幾人もの首相の一人だ」「経済はG7の中でももっとも大きく打撃を受けている」「東証トピックスは1985年レベルで止まっている」
「日本の隠された資産は、国民からだけでなく、十分に高く評価されていない」、例えば「2007年夏から円は対ユーロ、ポンド、ドルなどで急激に上昇している。それでも、上場企業は来年には利益のピークに至るだろう。これは現状では、本当にすごい業績だし、1990年代以降、日本の経営がいかに大きく変わったかの証拠でもある」
「日本では急速に高齢化が進んでいるが、これが良いか悪いかは別として、大量の移民労働者に対し、門戸を開いていない」
「その代わり、日本の勤労者は長い年月を働きつづける。労働市場の20%以上が65歳以上なのだ。欧州では5%以下だ」
「80代の人でも警備員やレストランで働いている。しかも意気揚々としている。年金だけにたよるのは昔から軽蔑されている」「日本は電化製品ではトップの座にはないかもしれないが、リアリズムでは世界の先駆者だ」
「若者たちは、無関心や政治への関与をしないことを高齢者たちから批判されているが、神戸大地震の副産物の1つはボランティアが広まったことだ」「100万人がボランティアに従事している」「(当時は)日本のやくざでさえも、生存者たちに無料で食べ物を配った」「互いに助け合うネットワークが自然にできた」
「危機や自然災害は前向きの変化を引き起こすかもしれない」「ニーチェがいったように、あなたを殺さないものは、あなたを強くするのだ」「この災害は日本を殺さない。日本は心理的により強くなるかもしれないー地震の処理がうまくいけば」
「なまずに石を戻してくれる神がいるとは誰も思っていない(注:前の文章に、なまずと地震の話がある)」「自分たちでやらないとだめなのだ」
「日本に対して楽観的になる最大の理由は、厳しい20年間をかいくぐった、社会資産(=ソーシャル・キャピタル)があるからだ」。
*最後のソーシャル・キャピタルは、人的資源、助け合うネットワーク、80代になっても嬉々として働く人々のことを指していると思われる。
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日を追うごとに暗いニュースになるだろうし、海外のニュースを読んでいる気持ちの余裕はなくなるだろうけれど、とりあえず、紹介してみた。(「英国メディア・ウオッチ」より)
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