2011年03月26日12時46分掲載
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検証・メディア
メディアの力学 「核廃棄物最終処分場の行方」〜ゴアレーベン(ドイツ)〜 村上良太
何年か前、原発による放射性廃棄物の行方を探る番組企画をある放送局の関連会社に提出したことがあった。ドイツのゴアレーベンという場所に強固な岩盤があり、そこに核廃棄物を貯蔵すれば数万年は安全だ、と言われており、最終処分場の有力候補になっていたのだ。しかし、岩盤に亀裂があることが調査で発覚し、地元で反対運動が盛り上がった。その話を地元の農民目線で取材しようとしたのだ。ところが、放送局の関連会社は「メルケル政権が原子力の積極利用に転換したという話に変えるなら、企画は進む可能性がある」と言った。それは企画の意図ではなかったため、こちら側で没にした。
以下はその時の企画書である。
「核廃棄物最終処分場の行方〜ドイツからの報告〜」
■ねらい
核廃棄物最終処分場の選定は世界中で課題になっている。日本の原子力発電所では貯蔵キャパシティが残り5〜6年分しかない。ところが、最終処分場の安全条件は未だ十分国民的に議論されていない。ドイツでは最終処分場をめぐり熱い論争が起きているが、国民的に議論して安全を考える毅然とした姿勢がある。核廃棄物の処分についてドイツの試みを報告する。
★核廃棄物最終処分場候補の村
ドイツ北部ニーダーザクセン州の小さな村ゴアレーベン。ここに毎年11月、市民約5000人が集まりデモを行う。フランスのラ・アーグで再処理された高レベル廃棄物を載せた専用列車がやって来るからだ。デモの中心は約500人の地元農民。トラクター300台を路上に並べ、積荷の搬送を阻止しようとする。有機農業を営むティエッケ夫妻(53)もデモ参加者だ。1978年以来、最終処分場誘致に反対してきた。ゴアレーベンは、中間貯蔵施設だが、メルケル政権に変わり、最終処分場となる可能性が高まってきた。
★地元農民の闘い
ゴアレーベンに核廃棄物最終処分場を作る計画が浮上したのは1977年。低所得者の多いゴアレーベンは処分場誘致を受け入れるだろうと時の政府は考えた。しかし、農地の汚染を恐れた農民は、反対運動を始め、環境意識を高めた。ティエッケ夫妻は農薬を使わないだけでなく、堆肥のガスで自主発電に取り組んでいる。
★岩塩層に亀裂が見つかる
ゴアレーベンには長さ14km、深さ3kmの巨大な岩塩がある。地下840mには総延長7.5kmの坑道が掘られ探査が続けられてきた。ところが社会民主党と緑の党の連立政権時代、氷河期に出来た亀裂が発見され、探査を中断。地下水が埋蔵施設に染み入り、放射能汚染された水が生活圏に出てくる危険があるからだ。しかし、メルケルの新政権に変わると一転、ブルフ・ニーダーザクセン州首相(キリスト教民主同盟)はゴアレーベンの探査再開を表明。今、反対派・推進派双方が、地下水汚染の可能性や最終処分場に岩塩が適するかどうか論争している。危険性に対する双方の主張を聞き、争点を浮き上がらせる。
★最終処分場選定のための基準づくり
前政権は「最終処分場選定作業委員会」を立ち上げた。物理学者、地質学者、エコロジスト、社会学者など14人の委員が客観的な立場から最終処分場選定の指針作りを行う。100万年崩れない地層条件や住民説明会・住民投票などの手続きが指針に盛り込まれた。委員の一人、原子炉管理の専門家ミヒャエル・ザイラー氏は、ゴアレーベン以外に最終処分場に適する地層はドイツ国内に10ヶ所以上存在するという。
★アルプスの地下で最終処分場の国際共同研究が進む
ドイツで決められた選定基準がいち早くスイスで適用されることになった。スイスにはアルプスの地下に最終処分場の国際研究施設がある。日本人研究員に案内してもらい、これまでの研究成果を探る。
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