2011年04月20日14時01分掲載
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文化
新世代のアボリジニ・アーティストに聞く 「エネルギーが湧く音楽を」
日本でアボリジニのロックバンド『ヨス・インディー』が紹介されてから早20年近く経とうとしている。ディジュリドゥを使い、先住民であることを全面に押し出していたアーティストたちであった。それに比べ、今日のジェネレーションYのアボリジニ・アーティストは、あまり自らの先住民としてのアイデンティティーを意識していないようだ。オーストラリアで注目を浴びているレゲエの生バンドDubmarine(ダブマリーン)にD-Kaz Man(ディー・カズ・マン)というアボリジニのボーカリスト兼ダンサーがいる。先月行われた音楽祭WOMAD(ウォームアド)のアデレード公演直前に、バンドのリーダーであるポール・ワトソンに話を伺うことができた。(豪アデレード=木村哲郎ティーグ)
−D-Kaz Manのダンスはアボリジニの伝統と関わりがあるのですか?
実は何のかかわりもありません。彼は体にペインティングをしてアボリジニの旗を掲げる。自分のアイデンティティーに誇りをもっています。ただ、彼のパフォーマンスは彼のアーティストとしてのオリジナル。西洋人によるコンテンポラリーなアートが西洋の歴史との関わりが薄いように、彼のパフォーマンスも同じです。ただもちろん、我々も彼のアイデンティティーを尊重しています。そこに政治的なメッセージがないだけです。そもそも音楽家のすべてが政治的なメッセージを運んでいるわけではありませんよね。
−それでは音楽を通じて何かを伝えていきたい、というようなことはあるのでしょうか。
皆が楽しむこと。そういうポジティブなエネルギーを送ることです。D-Kaz Manを含め、我々にそういう力があります。
−ヨーロッパの公演では大きく紹介されたようだが。
去年の6月と7月はヨーロッパにいて、特に東欧のチェコでの反響がすごかったです。幅広い人に受け入れられた。チェコの隣国のポーランドのジャーナリストは、普段は70年代のロックを聞いているような「古い人」だけれど、我々の新しいスタイルの音楽を気に入ってくれました。
ーD-Kaz Manのパフォーマンスによりアボリジニ性を前面に出しているように見えるので、特に海外ではメディアに取り上げられやすいのでは?
そうかもしれませんね。ただ、比べようがないですから。我々にしてもれば、D-Kaz Manのバックグラウンドは重要ではない。重要なのは、観客が楽しんでくれることです。
−レゲエの生バンドは珍しいですよね。
エレクトロニック音楽というカテゴリーに入るので、レコードを回すスタイルが主流でしょう。ただぼくは、楽器を使ったライブもエレクトロニックも両方が好きです。決してエレクトロニックを嫌っているわけではなく、楽器でもできることをしているのです。例えば、ベースのビートも、実際に手でドラムで叩いてもらっています。我々の作るポジティブなエネルギーを感じていただければと思います。
ありがとうございました。
写真:Dubmarine(ダブマリーン)のライブ。中央がD-Kaz Man
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