2011年04月30日18時14分掲載
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アジア
原発反対を維持、日本にLNG、中国には太陽エネルギー技術の提供を約束 存在感増す豪州
オーストラリアのギラード首相は4月下旬の日本、韓国、中国歴訪で、エネルギー面での豪州の存在感を強く印象づけた。福島第一原発事故の対応に追われる日本では、同首相は自国の今後のエネルギー政策について「現在と同様、今後も原子力発電は選択肢にない」と述べ、再生可能エネルギーへの取り組みを続ける姿勢を強調し、注目を集めた。また日本や中国へのエネルギー燃料や技術の提供を約束した。(クアラルンプール・和田等)
ギラード首相は「わが国には太陽光、地熱、風力など潤沢なエネルギー源がある」として、日本と再生可能エネルギー構想で協調していく姿勢も示した。広大な領土に活用可能な自然資源を擁し、比較的少ない人口という条件を持つ豪州だからこそ、原発にはっきりと「NO」の姿勢を打ち出せたともいえる。日本からすればうらやましい限りだが、原発に頼らないエネルギー政策を追求していこうというその姿勢は日本も大いに見習うべきだろう。
また、菅首相との会談でギラード首相は、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)について、市場価格での安定供給を確約。オーストラリアは日本にとって最も重要なLNG供給国になるだろうとの見方を表明した。レアアース(希土類)についても「輸出にあたって常に日本を念頭に置いている」と伝えた。 さらに同首相は、大震災からの復興に向けて不可欠となる石炭や鉄鉱石、麺類の原料となる小麦、ビールの原料の大麦、そば麦、牛肉といった物資も日本に安定的に供給していくとの姿勢を示した。
中国では太陽エネルギーに関して、豪州のファーガソン資源・エネルギー相が自国の太陽エネルギー活用に向けた革新的技術の中国での実用化をめざし300万豪ドル(約2億7000万円)の拠出を約束、この分野で中国との提携を進めていく姿勢を打ち出した。主な太陽エネルギー利用法には、太陽光発電と太陽熱温水器がある。
オーストラリア国立大学の研究者らによれば、同大学の研究により太陽エネルギーの効率を10%高める一方で、消費者の負担を最大10%引き下げる方法を見出したが、同大学の研究者は中国最大級のエネルギー会社、トリナ・ソラーと提携し、この技術を3年以内に実用化する方針だ。
同相は「太陽光エネルギーの活用のペースは世界的に加速しているが、オーストラリアにはこの分野での指導的な立場を維持していく義務がある」と指摘、「ハイテク技術の革新に専心するとともに、オーストラリアのリーチの長さと幅広さを通じて能力を構築し、この好機を活用していく中でさらに雇用を創出していくつもりだ」との抱負を語った。
オーストラリアが極東での影響力浸透を図ろうとしている背景には、かつてハワード政権の下、ハワード−ブッシュ米大統領ラインによる「タカ派」路線に基づいて豪州がアジア太平洋地域における「保安官」役としてアフガニスタンやイラクに派兵したのに倣い、ギラード−オバマ米大統領ラインによる「ハト派」路線に基づいてソフトパワー活用によってアジアにおける親米勢力の存在感の維持を狙おうとの意図がありそうだ。
米国が「トモダイ作戦」と称して大規模な東日本大震災支援にあたったこととも軌を一にする動きともいえ、そこには台頭する中国をいたずらに敵視するのではなく、日中を上手に取り込むことでアジア戦略を展開していこうとの米・豪両国の深慮遠謀が見え隠れしているとの指摘もある。
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