2011年05月01日07時08分掲載
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東日本大震災
土は農民の命だ、原発事故が奪ったのは畑の作物だけではない、東電は「俺の夢と未来を返せ!」 東電前で農民行動
「田畑と自然を汚し、生活の糧を奪った東電は全面的に償え」…4月26日、東京都千代田区の東京電力本社前にムシロ旗や手づくりのプラカードを持った生産者が福島、茨城など各地から集まった。主催したのは農民運動全国連合会(農民連)。福島からは多くの生産者が貸し切りバスで駆け付けた。千葉の酪農家は牛をつれて参加した。(上林裕子)
モウ、どうしてくれるの…
丹精込めて作ったホウレンソウは出荷停止になった。制限か解除になってもホウレンソウは売れない、「どうしてくれるんだ」と若い生産者。
原発から25キロで酪農を営むAさんは避難所で暮らしている。牧場は地震と津波の被害を免れたのに原発事故で避難を余儀なくされた。息子夫婦や孫は秋田に疎開している。今は1日おきに家に戻り牛の世話をしている。乳牛は毎日搾乳しないと体調を崩してしまう。これまでに親牛2頭と子牛が死んだ。このままでは牛は次々と死んでしまうだろう。どうしてやることもできないのが辛いという。そして、バラバラになった家族が集まって元の暮らしに戻りたいと、願っている。
若い酪農家は手書きのプラカードを無言で頭の上に掲げていた。「俺の夢と未来を返せ!」と書かれたプラカードには「たすけて、牛たちが死んでいっています」。大切な牛たちを救ってやれない…原発事故が彼につきつけた辛い現実だ。
牛たちの気持ちが描かれたプラカード。
この日の目的は抗議と賠償請求だ。しかし、農民が本当に恐れ、怒っているのは放射能で汚された畑や田んぼで、もう作物が作れなくなるかもしれないという不安だ。このところ鎮静化しているとはいうものの、相変わらず放射性物質は漏れ続けており、田や畑に少しづつ堆積する。
地震や津波の被害だけだったら、家や田畑が流され壊滅的な被害であっても我が家に戻り、がれきを取り除き、今年はダメでも来年の作付に向けて家族そろって黙々と取り組んでいくだろう。牛たちは干し草を食み、ゆたかなミルクを出して酪農家を安堵させてくれただろう。損害だけではない、奪った未来を返してほしい。
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