2011年06月19日17時54分掲載  無料記事
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社会

改正刑法 コンピューターウイルスとわいせつ画像

  参院でコンピューターウイルス作成罪などを含む刑法の改正が可決された。その中にはわいせつ画像をメールで不特定多数に送信する行為も処罰の対象となっている。 
 
  多くの人にとってわいせつ画像の不特定多数への頒布は他人事だろう。しかし、自分の知らないうちにパソコンがウイルスに感染し、勝手にわいせつ画像を送ってしまう、ということが可能性としてないのだろうか。 
 
  こうした危惧を抱いたのはコンピューターウイルスの中に「ボット」と呼ばれるものがあるからだ。ボットは「ロボット」の略であり、感染したパソコンを第三者(犯罪者)が他国からでもロボットのように遠隔操作できるようになることから来ている。 
 
  大量にメール(データ)を送りつけてサイトを機能不全にしてしまう、いわゆる「DOS攻撃」に使われるのはこうしたボットに感染した世界中の多数のパソコンである。ボットは数万単位でパソコンをウイルス感染させる。最近の事件としてはウィキリークスへの送金を中止したぺイパルやマスターカードへのDOS攻撃が記憶に新しい。さらにアメリカでは民間電力会社に対して金銭を目的とした脅迫も行われたと聞く。しかし、ボットウイルスを用いた犯罪は日本でも起きている。 
 
  ボットウイルスを潜伏させてロボットとしたパソコン数万台が1時間あたり○○○ドル、という具合に闇市場でレンタルされているという。これはNHK「クローズアップ現代」で何年か前に報じられたことである。悪意を持つ人間はレンタルによって他人のパソコンを何万台も用いて、迷惑メールも多量に発信できるし、Dos攻撃も行うことができる。また、その中の特定のパソコンを選択的に選んで所有者にダメージをもたらすこともできる。 
 
  ボットが恐ろしいのはパソコンを使っている当事者がボットに感染していることに気づかないことだ。もしペイパルへの攻撃に自分のパソコンが使われていたとしてもメールの送信済みリストには表示されない。だから、気がつかぬまま、犯罪者の手先としてパソコンが使われてしまうのである。そして、犯罪者は他人のパソコンを使いたい時までウイルスをひそかに潜伏させたままにしておく。 
 
  情報セキュリティの専門家の話では、ボットウイルスは巧妙にできていて市販されている普通のウイルス対策ソフトではあまり防げない、ということだった。このあたりは専門領域になるのでども程度防げないのか定かではない。 
  サイバークリーンセンターによると、ウイルス対策ソフトでも常に最新状態に更新していないと新しいウイルスを防げない。ウイルスは日々進化を遂げており、パソコン内に侵入したウイルスも遠隔操作で進化しているからだ。 
 
  もし市販のウイルス対策ソフトでボット感染が防げないのであればパソコンが乗っ取られる可能性は誰にでもあると言える。インターネット検索しているときに、知らず知らずのうちに感染させられたりすることもある。ボットを使った犯罪者は裏口から巧妙に他人のパソコンやサイトに出入りし、侵入した足跡すら消してしまう。 
 
  ボットにパソコンが乗っ取られてしまったら、ウイルスによる被害者であると同時に加害者にもなっていまう。将来、このボットウイルスが何らかの政治的な意図や怨恨などで用いられてしまう可能性がないとはいえないのではないか。そうした危惧を法務省に問い合わせてみた。 
 
■法務省刑事局の見解 
 
  法務省に問い合わせたところ、今回刑法で改正したわいせつ画像のメールなどによる頒布については個別の事案に即して判断することにはなるが、基本的に「故意」がなければ成立しない「故意犯」であるとしている。 
  「刑法は条文に過失犯の規定が書き込まれていない限り故意がなければ成立しない。今回のわいせつ画像のサイバー上の頒布についても基本的に故意がなければ成立しない」 
  したがって、パソコンがウイルス感染して持ち主の知らないうちにわいせつ画像をメール送信していたとしても、故意がなければ処罰の対象にはならない。 
 
  また、サイバークリーンセンターではボットウイルスの傾向と対策を紹介していた。 
 
■CCC(サイバークリーンセンター)のボットへの注意勧告と対策 
https://www.ccc.go.jp/index.html 


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