2011年06月23日22時59分掲載
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核・原子力
レベル6〜「ウラルの核惨事」〜はなぜ触れられないのか?
福島第一原発事故の深刻度を表す1つの評価としてINES(原子力事故の国際評価尺度)がある。今回、福島第一原発の評価がレベル7に引き上げられチェルノブイリと並んだことでショックを受けた人が多いだろう。
だが、この評価尺度の説明で不可解なことがあった。原子力安全・保安院が福島第一原発の評価をレベル7に引き上げたことを報じた朝日新聞(4月13日付け)の記事である。ここではレベル6に相当する事故のところが空欄になっている。これを見るとレベル6の事故はなかったのか、と思ってしまう。
しかし、ニューヨークタイムズでは1957年にソ連で起きた「キシュチュム核事故」がレベル6の事例として取り上げられていた。これは「ウラルの核惨事」とも呼ばれているが、放射性廃棄物のタンクが爆発した事故だと言われている。ソ連当局が長年秘密にしてきたため、実態がなかなか公表されなかった。ウィキペディアでキシュチュム核事故を検索したところ、そこでもレベル6であると説明されている。
もしそれが本当であれば福島第一原発がレベル7に引き上げられるまでは、チェルノブイリに次ぐ世界で2番目の核惨事だった。そんな大事故を省略できるものだろうか。
ところで、文部科学省のサイトにINESの説明をしたページがある。6月23日現在だが、INESの説明で、福島第一原発事故は触れられていないし、キシュチュム核事故も触れられていない。
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/ines/kokusaihyoukasyakudo.htm
ただ、興味深いのはサイトを作った文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課はそこで挙げられている事例の中に「参考事例(INES公式評価を受けていないものも含む)」とただし書きをしていることだ。もしかすると、キシュチュム核事故はINESの公式評価を受けていないのかもしれない。だからオミットされてしまったのだろうか?
INESがIAEAで生まれたのが1989年であって、1957年に起きた核惨事をさかのぼって評価することが公式にはできなかったのだろうか?
いずれにしても、朝日新聞によるこの評価尺度の説明を見ると、ウラルの核惨事自体が幻だったかのように思われてくる。
■キシュチュム核事故
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