2011年08月03日23時57分掲載
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核・原子力
原子力損害賠償支援機構法は現在の原発推進政策・電力供給体制を温存する 市民団体が抗議の声明
参議院本会議で「原子力損害賠償支援機構法」が可決、成立した。これを受け、脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)、国際環境NGO FoE Japan、グリーン・アクション、ハイロアクション福島原発40年実行委員会、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)など脱原発を進める市民団体が連名で共同声明を出した。共同声明は、同法は実質的に東京電力の安易な救済をはかるものであり、事故被害者の犠牲の下に依然として現在の原発推進政策・電力供給体制を温存するものであるとして、強く抗議している。(日刊ベリタ編集部)
共同声明は、今回成立した仕組みは、原子力賠償法がうたう「無限責任」を骨抜きにするのではないか、と懸念を表明、あまりにも拙速すぎると批判している。また、東電役員、東電株主や金融機関等の大口債権者の責任について言及していない一方で、負担を国民に押し付けているとしている。
さらに、この法律は現在の電力の地域独占を固定化し、発電・送配電の一体経営を温存、その結果、電気料金は高く据え置かれ、自然エネルギーへの新規投資を停滞させる、とも述べている。
そのうえで、今後の方向として、次の3点を挙げている。
(1)東電の債務超過を認め、破綻処理を行うこと。
(2)東電は100%減資し一時国有化し、金融機関等の債権者には債権放棄を求めること。
(3)発電事業及び送配電事業を個別に売却し、賠償原資に充てると同時に、発電事業と送配電事業の分離を実現すること。
共同声明全文を紹介する。
2011年8月3日
【共同声明】
「原子力損害賠償支援機構法」は公正な賠償スキームを阻害する
原子力損害賠償法による賠償の「無限責任」を守れ
私たち市民団体は、本日成立した「原子力損害賠償支援機構法」の内容は、実質的に東京電力の安易な救済をはかるものであり、事故被害者の犠牲の下に依然として現在の原発推進政策・電力供給体制を温存するものとして、強く抗議します。
また、附則や附帯決議に盛り込まれた原子力賠償法第3条の見直しが、現行の賠償の「無限責任」を有限にし、賠償に上限を設けるものにならないか懸念しており、「無限責任」原則が今後も継続されることが確保されるべきであると考えます。
原発事故被害者への賠償の迅速な支払いが必要なことは言うまでもないことですが、これについては仮払い法によって確保できるはずです。今回の支援機構法は、下記のようにさまざまな問題を抱えているのにもかかわらず、あまりに拙速に成立しました。
(1) 法律は、東電役員、東電株主や金融機関等の大口債権者の責任について言及していない一方、税金投入と他の電力会社(原子力事業者)からの負担金、すなわち国民による負担が想定されており、公正な負担順序ではない。
(2) 電力市場は実質的に既存の10電力会社による地域独占体制が継続している。法律はこの地域独占を固定化し、現在の発電・送配電の一体経営を温存する。結果、電気料金は高く据え置かれ、自然エネルギーへの新規投資を停滞させる。
(3) 第1条(目的)に、「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図り」とあり、依然として原発政策の維持推進を前提としている。
(4) 現在原子力損害賠償法において、原発事故で生じた損害に対する賠償に限度はないが、付帯決議として、この無限責任の見直しができる余地を残している。
私たちは同時に、迅速・公正な賠償の実現と責任所在の明確化、電力供給体制の抜本的改革と持続可能なエネルギー構造実現に向けて、以下引き続き強く要請します。
(1) 東電の債務超過を認め、破綻処理を行うこと。東電は100%減資し一時国有化し、金融機関等の債権者には債権放棄を求めること。その上で発電事業及び送配電事業を個別に売却し、賠償原資に充てると同時に、発電事業と送配電事業の分離を実現すること。
(2) 賠償負担による財政支出の削減は、原子力発電所を運営する企業が掛けている損害賠償責任保険金額(現在1200億円)の抜本的な値上げで対処すること。また再処理等積立金(2兆円以上)等を賠償原資とすること。
以上
脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)
国際環境NGO FoE Japan
グリーン・アクション
ハイロアクション福島原発40年実行委員会
福島老朽原発を考える会
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