2011年08月07日13時37分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201108071337510
みる・よむ・きく
語学に再挑戦 3 村上良太
去年の8月半ば、「語学に再挑戦2」と題する文章でスペイン語の勉強を始めた経緯を書きました。2年間でスペイン語の新聞が読めるようになろうというのがわが目標。勉強を始めたのが一昨年ですから、丁度2年がたちました。さて、その成果は?
辞書をひきまくらなければなりませんが、何とかスペイン語の新聞が読めるようになりました。スペインのエル・パイス紙やメキシコのエクセルシオール紙などです。とはいえ、まだ道半ば、もっと経験を積まなくてはならないこともわかっています。ただ、語学は若くしてやるもの、というのが一般の常識になっていますが、世間の常識がなんであろうと決してあきらめないでやろうと思っています。
■基本文法
集めたスペイン語の参考書は20冊を超えました。非常にベーシックな文法のところで特に役に立ったのは3冊。「はじめてのスペイン語」(東谷穎人著 講談社現代新書)、「文法から学べるスペイン語」(井戸光子・石村あつ著 ナツメ社)、「やさしいスペイン語」(大岩功著 三修社)でした。
スペイン語の学習を始めて丸二年と書きましたが、最初の1年は東谷氏の「はじめてのスペイン語」の1冊のみでした。最初の1年間はそれほどスペイン語に時間を割いたわけでもありません。時折、忘れたころにこの新書を読み直すという程度です。東谷氏のこの本は、易しく書かれており、しかも基本文法と動詞の基本活用例が1通り収まっているので、電車の中で反復するには手ごろです。最初はこの1冊だけ暗記するまで繰り返しました。
一方、大岩功氏の「やさしいスペイン語」は普通のサイズの本で、文例や動詞の活用例ももっと多く収録され、しかも語学のコツが絶妙のタイミングで解説してあります。無理せず、すんなり頭に入ってくるという点でイチオシの本です。東谷氏も大岩氏もNHKの語学講座の講師をつとめた経験があり、易しく教えるすべを心得た先生がたです。
■単語
単語の参考書は4冊集めていました。「聴いて話すためのスペイン語基本単語2000」(Norma C.Sumomo著 ツディブックス)、「スペイン語はじめの単語帳」(NOVA編著)、「暮らしのスペイン語単語8000」(佐藤正透著 語研)、「スペイン語基本単語速習術」(菊田和佳子著 語研)です。
一定の数の単語は初期に集中的に覚えないと新聞を読むことができません。記事を前にしていちいち辞書を引くにも限度があります。ですから2000くらいの単語はまず覚えておかなくてはならないでしょう。NOVAの「スペイン語はじめの単語帳」には1700語が収録されています。
一方、「スペイン語基本単語速習術」は単語だけではなく、文例に単語を組み込んでセットで有機的にマスターするようにデザインされています。100の基本動詞が動詞別に見開きで構成されており、その動詞については現在形、未来形、点過去、線過去、過去未来、接続法・・・など9つの文例が出ています。これはとても面白いメソッドです。動詞別にまとめられているということはスペイン語で作文する時に役に立つことを意味します。実際、本書もスペイン語で日本から発信する場合に役立つように単語をセレクトしたと書かれています。
ところで世間一般では年を取るにつれ、記憶力が衰えると言われていますが本当なのでしょうか?そういう思い込みがありますが、スペイン語学習に限ると、実感としては学生時代に比べて記憶力が落ちたという感じはさほどありません。一般に学生時代は繰り返し反復するトレーニングを積む機会に恵まれています。漢字の習得もそうです。何年もかけて繰り返しノートに漢字の書き取りをした経験を思い出します。逆上がりや九九もそうです。年を取るにつれ、そうした単純な反復トレーニングをしなくなります。そういうことは小僧のやることという風に思いがちです。それがむしろ、年を取ると「記憶力が衰える」原因になっているのではないでしょうか。
逆に言えば一定の年齢の人でも時間の自由が比較的きく生活を送っている人なら、反復トレーニングにはもってこいです。ですから、年を取ったら語学をやろう、と言えるのではないでしょうか。語学はパズルのような趣味にもなりえると思います。外国の新聞を読むのはパズルを解くのと同じ作業なのですから。
■基本は動詞の活用
寿里順平著「スペイン語とつきあう本」(東洋書店)はスペイン語学習とは何かについて触れた興味深い1冊です。早大教授の寿里氏がスペイン語を大学で教えた経験が辛口で書かれています。英語以外の言語でこうした本はあまりないので貴重です。印象に残ったのは、寿里氏が基本は動詞の活用につきる、と言っていることです。動詞の活用というとても単純で無味乾燥なことでも、繰り返しやることが基本である。これが世界標準なのだ、と。これには大学も中学もないというのです。
「動詞活用はラテン語学習に始まり、欧米人のAprender un idioma es aprender a coujugar verbos. 「語学を習うことは動詞の活用を覚えることだ」という学習態度が確立していることです。」(寿里順平著「スペイン語とつきあう本」より)
動詞の活用が比較的に簡単で規則的な英語に比べると、フランス語でもスペイン語でもラテン系言語の動詞活用は少々やっかいだ、というのが僕の実感です。語学の専門家ではない自分には完全にこなすことはもとより不可能と思っています。必要に応じて辞書でたびたび活用表をチェックする必要があります。
動詞の活用がまとまった「スペイン語動詞変化表」(大学書林)はその意味でも貴重な参考書です。前言を翻すようですが、語学は若いうちにせよ、というのはこうした活用表を繰り返し体に染み込ませる時間が学生の頃はたっぷりあることでしょう。たとえそれが苦行であっても、その先に広がる長い人生の中で、覚えた知識を活用して果実を得る時間もまた潤沢にあることを意味します。
■サプリメント
「接続法を使って話そうスペイン語」(吉川恵美子著 NHK出版)は接続法だけに絞った文法書で、接続法を使った文例がたくさん出てきます。フランス語やスペイン語では現実の出来事を表現する直説法と、頭の中で考えた想像上の事を表現する接続法という語法に大別されますが、日本人には最初は少し理解しづらいところがあります。そこでこうした本はとても役に立ちます。
■昨年8月の記事「語学に再挑戦2」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201008170804022
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。