2011年08月12日00時09分掲載
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環境
【AIニュース】シェルの原油汚染で、ナイジェリア・ナイジャーデルタの水や農漁業に深刻な打撃 国連調査で明らかに
石油会社シェル社は、ナイジェリアのナイジャーデルタ地域に壊滅的な打撃を与えてきた。ナイジャーデルタの一角を占めるオゴニランドへの原油汚染の影響に関する国連の報告書を受けて、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「原油による汚染は広範にわたった深刻なものであり、何十年もの間、ナイジェリアの人びとが苦しんでいたことが明らかになった」と述べた。国際連合環境計画の報告は、ナイジェリアにおいて初めて行われたものであり、2年に及ぶ詳細な科学敵調査に基づいている。(「アムネスティ国際ニュース」から)
「今回の報告書は、シェル社がナイジャーデルタに甚大な被害を与えたことを証明しました。しかし、同社が何十年にもわたって被害を無視し続けたことや、国際基準に即して最善を尽くしていると偽って主張してきたことに対する責任の追求はみられません」と、ナイジャーデルタにおける人権への影響について調査した、アムネスティのグローバル・イシュー担当ディレクターであるオードリー・ゴーグランは述べた。
ナイジェリア政府からの要請を受け、シェル社の費用で賄われた本報告書は、アフリカにおいて最も多様な生態系をもつナイジャーデルタに暮らす人びとに原油汚染が及ぼす壊滅的な影響を示す、動かぬ証拠となっている。
本報告書は、現地における生活様式や食料資源を破壊するに至った、原油汚染による農業や漁業の損害を検証している。最も深刻な事実は、コミュニティにおける深刻な健康リスクを露呈した飲料水の汚染の度合いだ。
一つの事例では、地域の水に世界保健機関の基準を900倍上回る発ガン物質が含まれていることが確認された。国連環境計画は、緊急にコミュニティに危険を警告することを推奨した。
本報告書は、何年も前から、石油汚染へのシェル社が組織的な対応を怠ったことを白日のもとにさらした。国連環境計画は、シェル社が浄化したと主張する地域が、国連環境計画の専門家による調査に基づくと汚染が続いているということを明らかにした。
「シェル社は非を認め、自らが起こした汚染への対処をしなければならないという事実を直視しなくてはなりません。汚染の現場において、シェル社が最も影響力のある要因であるにもかかわらず、他社に責任をなすりつけることは、もはや通用しないのです」と、オードリー・ゴーグランは述べた。「シェル社が真実や正義をないがしろにし、企業のイメージを守ることに専念している限り、ナイジャーデルタにおける汚染に解決策はありません」
本報告書はさらに、ナイジェリア政府がシェル社のような企業を規制し、管理することができなかったことを明らかにしている。国連環境計画は、ナイジェリアの規制は脆弱であり、ナイジェリアの石油汚染を調査する機関がしばしば石油会社と密接な関係があることを明らかにした。
ナイジェリア政府、石油企業、そしてイギリス政府やオランダ政府など、シェル社のような石油企業の出身国の政府は、ナイジャーデルタの石油採掘から利益を得てきた。彼らは今、社会的、そして環境的な再生を支援すべきだとアムネスティは述べた。
「本報告書は、機関投資家たちにも注意を促すものとなるでしょう。これまで、企業の利益追求を優先するシェル社との関係を重んじるあまり、投資家たちは真実から目をそらしてきました。しかしこれからは、ナイジャーデルタにおける汚染を除去することを、投資家たちは企業に求めていくことでしょう。このことはすなわち、シェル社が原油を垂れ流すことを防ぐとともに、すでに影響を受けた人たちへの補償をし、彼らの及ぼした影響についてより正確な情報を明らかにするよう、プレッシャーをかけることにつながるのです」と、オードリー・ゴーグランは述べた。
ナイジャーデルタのオゴニランドには、非合法の精製などによる、比較的新しい類の汚染もあるが、汚染の主要な原因は、何十年にもわたるシェル社の怠慢であると国連の報告書は指摘している。
2008年にオゴニランドで起った、2つの大規模な汚染の損害賠償の責任をシェル社が負うことが、2011年8月3日に広く報道された。現地のコミュニティの生活様式に深刻なダメージを与えた、ボーデにおける汚染は、およそ3年経った今でも浄化されていない。
1958年、ナイジェリアのオロイビリにおいて、シェル・ブリティッシュ・ペトローリアム(現ロイヤル・ダッチ・シェル)が原油を発見して以来、石油企業はナイジャーデルタで商業生産を開始した。今日、石油産業はナイジャーデルタに莫大な土地を所有している。シェル社単独でも、3万1000立方キロメートルの敷地を有する。
石油と天然ガスの産業部門は、ナイジェリアの貿易黒字の97パーセント、そして政府の収入の79.5パーセントに相当する。1960年代以降、石油は6000億ドル以上を生み出してきたと推定される。
ナイジャーデルタにおける石油企業は、ナイジェリア政府とシェル社、エニ社、シェブロン社、トタル社、そしてエクソンモービル社などの多国籍企業、またいくつかのナイジェリア企業からなる。
国連開発計画によると、この地域に暮らす60パーセントの人びとが、自然環境に依存しながら生活している。
国連開発計画によると、1976年から2001年の間に6800件以上の原油の流出が報告された。それは、300万バレルの損失に当たる。多くの専門家は、明るみに出ないが、実際はの流出量はもっと多いであろうと推察している。
ナイジェリアの規制は、石油企業は流出した石油を浄化しなくてはならないと定めている。しかしながら、この規制には強制力がない。
▼オンラインアクション
ナイジャー・デルタ:石油企業による汚染の浄化を
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=3907&frmtp=1
▼関連ニュース
ナイジェリア : 原油流出に関し不当な数字を発表したシェル社を非難
http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=909
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