2011年08月15日02時32分掲載  無料記事
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中南米

チリで再び大規模な学生デモ 273人が拘束される

  チリで学生のデモが起きたのは今月だけではない。昨年から教育民営化を改め、教育の機会均等を求めるデモがたびたび起きている。インターナショナルヘラルドトリビューンによれば先週9日火曜日の学生デモは数万人規模であり、首都サンチアゴだけでなく地方都市でも行われた。政府の発表では逮捕者は少なくとも273人に及び、警官23人が負傷した。 
 
  ユーロニュースによれば、チリの学生たちは学校の民営化の廃止、入学試験費用の低額化、政府に学生の声を反映させる制度の創設などを求めている。 
 
  教育の民営化と戦っている学生の国際団体Intenational Student Movement(ISM)によれば8月4日にはチリ全土で数万人がデモに参加した。学生らは警官隊とぶつかり、約900人が逮捕された。8月7日には1万人規模の学生と家族のデモがサンチアゴで起きた。また、8月9日にはサンチアゴだけで学生、教師、親たちによる10万人規模のデモが起きた。この日、273人が警察により拘束された。 
 
  ISMによれば6月30日にも大規模なデモが起きている。サンチアゴで12万人、コンセプションでは3万人、バルパライソでは2万人、テムコでは15000人が参加したという。この日はサンチアゴで警官と学生が衝突し、13人の学生が逮捕された。 
 
  6月23日にはサンチアゴで約1万人規模の学生デモが起きた。★ユーロニュース(6月23日のデモを伝える) 
http://www.euronews.net/2011/06/24/arrests-in-chile-as-student-protest-erupts-in-violence/ 
  6月16日には全国で20万人以上とされる規模の学生や教職員、親たちによるデモが起きた。 
 
  デモ参加者の正確な人数は把握できないが、たびたびデモが起きているのは確かだ。こうした公教育の充実を求める一連の動きが中道右派のピニェラ政権を揺さぶっている。昨年8月、炭鉱労働者の救出劇で支持率を上げたピニェラ政権だが、ハフィントンポストによれば支持率は7月に26%に低下した。また、救助された労働者の半数近くが失業していると言われている。 
 
■International Student Movementのサイト 
http://www.emancipating-education-for-all.org/videos_chile 
■デモクラシーナウの報道(8月4日) 
http://www.democracynow.org/2011/8/4/failed_education_reform_in_chile_prompts 
  チリ人でニューヨーク大の政治学者パトリシオ・ナビア(Patricio Navia)氏によればチリの学生たちが教育民営化の終わりを求めている背景にはこれまで学生たちが教育費を借金で工面してきた状況がある。その借金事情も年々厳しさを増しているようだ。 
  ナビア氏によれば、ピノチェット独裁制が終わったのち、チリの平均的な進学率は大幅に向上した。学生が大学か各種学校に進学する率は40%に達している。しかし、彼らの多くは先述の通り借金まみれになっている。そこで何とか改善措置を取ってほしいと要求しているのだが、ピニェラ政権はその要求にこたえることができなかった。だが、問題は大学の学費だけではない。 
  現在、チリで行われている教育システムはピノチェト時代の80年代に導入されたものがそのまま継続している。小中学校の段階では国公立の学校以外に、バウチャースクールが導入されている。チリの小中学の生徒の約半数がバウチャースクールに通っている。「バウチャー(vouchar)」とは英語でクーポン券とか、引換券、保証人などを意味する言葉である。私立学校に政府が国の教育機関となるためのバウチャー(資格)を与えているのである。しかし、バウチャースクールに教育を依存すれば親の資力次第で入れる学校が異なる。貧困な家庭の子弟はクオリティの高い教育を行っているバウチャースクールに入ることができない。それは貧富の再生産にもつながるというのだ。大学だけでなく、こうした教育の民営化を改めよ、と学生や親、教師たちが抗議をしているのである。 


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