2011年08月17日14時10分掲載
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『脱「国際協力」―開発と平和構築を超えて』 藤岡美恵子・越田清和・中野憲志編
本書は、既刊の「国際協力」本のほとんどが、各国政府やNGOがどんな「国際協力」を行い、そこにどんな問題があるかいついて書かれたものであるのに対し、「国際協力」そのものをもう一度きちんと考え直すという本です。あるべき「国際協力論」を論じるというより、「国際協力」の政策と実践が、どのような政治、思考、イデオロギー、言説に支えられ、生み出されているかに焦点をあてています。(越田清和)
第一の特徴は、「国際協力」の基本モデルともいえる開発と平和構築について、それに巻きこまれる人びと、先住民族などのコミュニティ、社会運動やNGOの視点から批判的に分析している点です。
もう一つの特徴は、「国際協力」を日本社会が抱える問題とつなげて考察している点です。日本社会の問題とつなげて考えるという姿勢が、本書を「3・11」後の復旧・復興、NGOやボランティアによる協力のあり方を考える際にも何らかの示唆を与えることができる本にしています。
「国際協力」を根底から考えるという点で、本書はこれまでにないユニークな本です。是非お手にとって見てください。
目次
序章
第一章 政官財ODAから地球市民による民際協力へ(村井吉敬)
Essay1 「国際協力」誕生の背景とその意味(北野 収)
第二章 日本の軍事援助(越田清和)
Essay2 差別を強化する琉球の開発(松島泰勝)
第三章 イスラエル占領下の「開発援助」は公正な平和に貢献するか?――パレスチナ・ヨルダン渓谷における民族浄化と「平和と繁栄の回廊」構想(役重善洋)
第四章 人道支援における「オール・ジャパン」とNGOの独立(藤岡美恵子)
Essay3 アフガニスタンにおける民軍連携とNGO(長谷部貴俊)
第 五章 日本の国際協力NGOは持続可能な社会を夢見るか?――自発性からの考察(高橋清貴)
Essay4 NGOによる平和促進活動とは?――バングラデシュ、チッタゴン丘陵の事例から(下澤 嶽)
Essay5 先住民族と「平和構築・開発」(木村真希子)
第六章 「保護する責任」にNO!という責任(中野憲志)
(新評論、2500円+税)
『脱「国際協力」――開発と平和構築を超えて』
藤岡美恵子・越田清和・中野憲志編70頁、2011年8月22日配本)
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